
ヘレン・シャルフベック「少女の頭部」
また随分と、間があいてしまいました。申し訳ない限りです。。気を取り直して……前回に引き続き、ヘレン・シャルフベックです。Head of a Girl(1886)Helene Schjerfbeck1886年、「快復期」の2年前に描かれた「少女の頭部」という作品です。黒の巧みな使い手であったマネを思わせる作品ですが、暗闇を背にしたこの眼差しが、何だか忘れられませんでした。1884年の「扉」という作品も、やはり黒が印象的です。ホイッスラー風の「お...

ヘレン・シャルフベック「快復期」
ヘレン・シャルフベック。聞き慣れない名前ですが、近年世界的に注目されているフィンランドの画家だそうです。19世紀末から20世紀初めに活躍した女性画家の展覧会が、東京藝術大学大学美術館で開かれています。The Convalescent(1888)Helene Schjerfbeck3歳のときに事故で下半身に障害を負い、学校に通うことができず家庭教師から教えを受けたシャルフベックは、やがて絵画の才能を見出されて11歳にしてフィンランド芸術教会で...

鴨居玲「出を待つ(道化師)」
道化の背後に広がる赤は、虚無や悲哀や諦念とは縁遠く鮮やかで凛々しくすらあります。かといって熱情でもなく、ましてや歓喜でもない。自分の人生を振り返っても思い当たらない、引きずり込まれそうな、異質な赤でした。Waiting His Turn(1984)Kamoi Rei鴨居玲「出を待つ(道化師)」。東京ステーションギャラリーの展覧会のポスターに使われている作品で、東京駅の喧噪とは明らかにそぐわない佇まいにかえって心をもっていかれ...

鴨居玲「1982年 私」
真っ白なカンヴァスを前に、口を半開きにし、弛緩した表情をこちらに向ける画家。ここまで陰惨な自画像が他にあるでしょうか。鴨居玲の「1982年 私」という作品です。Myself, 1982(1982)Kamoi Reiまわりに描かれているのは、道化や老婆、裸婦など鴨居が主題としてきた人物たち。「もう描けない」と絶望しきった画家を責めるでもなく、てんでばらばらを向いて地縛霊のようにそこに佇んでいます。彼らが画家にとっての過去である...

速水御舟「洛北修学院村」
海の底の理想郷を沖縄ではニライカナイというそうです。きっとこんな風景ではないでしょうか。深くまた深く、青に満たされて。Shugakuin Village in Rakuhoku(1918)Hayami Gyoshu速水御舟「洛北修学院村」。描かれているのは海の底……ではなく、京都北部の修学院。朝方の田園風景はまだ夜の気配をたたえていて、静けさのなかで少しずつ、人の営みがはじまっていきます。近づいてみれば手前の樹々がうごめいているようで、遠ざかっ...
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