
川瀬巴水「尾州半田新川端」
しんしんと雪が降るなか、犬一匹を道連れに川沿いを歩く男。轍のように雪の積もらぬ道があるのは少し前まで人々が往来していたからでしょう。けれど今は、誰もいない。軒並み灯りはともらず、かろうじて左奥の家に人心地が感じられます。ここが男の帰る場所なのかもしれません。川瀬巴水「尾州半田新川端」。「東海道風景選集」のなかの1枚です。Snow at Shinkawabata, Handa, Bishu(1935)Kawase Hasui今年最後の美術館参りは、...

川瀬巴水「伊豆長岡 霜之朝」
仕事の関係で、伊豆に来ております。明日が取材なので前乗りして温泉でもってことで。当初は修善寺にしようと思ってたんだけどなかなか良さげな宿が見つからず伊豆長岡に。露天風呂で極楽極楽、料理もおいしくて至福なのであります。たぶん今年最後の旅行になるだろうから、もうひたすらのんびりしようと思って。Izu Nagaoka: Frosty Field(1939)Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水「伊豆長岡 霜之朝」。伊豆に着いたのが5時過ぎだっ...

川瀬巴水「築地本願寺の夕」
日比谷線の築地駅を降りてすぐ、異国情緒たっぷりの、古代インド様式の建物がそびえています。およそ80年前に建立されたこの建物、じつは浄土真宗の寺院なんですね。大正・昭和の浮世絵師、川瀬巴水もこのオリエンタルな寺院を版画にしております。作品名は「築地本願寺の夕」。月下、青錆色に染まりゆく伽藍を描いた傑作です。 Evening Moon at Hongan Temple, Tsukiji(1936) Kawase Hasui年始に静岡の親戚(叔父・叔母)が遊...

川瀬巴水「平泉金色堂」(夕暮れ巴水より)
ふみしめてあるけばあなうらがつめたいでも、じっとしたをみてきしきしゆきふみしめてあるくかぎりのあるみちはいつかきっとおわるそう、こころにねんじてきしきしゆきふみしめてあるく(画 川瀬巴水、詩・文 林望「夕暮れ巴水」より) Hall of the Golden Hue, Hiraizumi(1957) Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水「平泉金色堂」。抒情漂う新版画で一世を風靡した大正・昭和の浮世絵師、川瀬巴水の絶筆となる作品です。降り積もる...

川瀬巴水「京都 清水寺」(馬込時代の川瀬巴水より)
昨日は「小林清親展」を見たあと、急ぎ足で西馬込まで移動。大田区立郷土博物館の「馬込時代の川瀬巴水」を見てきました。画家本人が一番面白い時代でもあったと評する、円熟期の作品を100点近くも集めた展覧会です。 Kiyomizu Temple, Kyoto(1933) Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水「京都 清水寺」。藍色の夜空に星が2つ瞬き、日中は人だかりがしていたであろう清水寺はモノクロームに沈んでいきます。巴水ならではの写実的かつ...

川瀬巴水「松島双子島」
東京国立近代美術館の所蔵品展、前回ご紹介した清宮質文の版画とあわせて、ぜひ見ておきたいのが川瀬巴水の版画作品。震災から1年という節目を見据えての企画なのでしょう、東北にちなんだ版画が計10点展示されていました。そのなかより、「松島双子島」を。Moonrise at Futago Island, Matsushima(1933)Kawase Hasui日本三景のひとつ、松島。そのなかでも、巴水が好んだのが波間に浮かぶ双子島だったそうです。雲の間からは満月...

川瀬巴水「荒川の月(赤羽)」 ~震災を経験した版画家のフルムーン~
昨日は19年ぶりに月が地球に最接近する、スーパーフルムーンでした。いつもよりも明るく、皓々と闇夜を照らす満月に祈りを託した方も多いのではないでしょうか。Moon over Arakawa(1929)Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水の「荒川の月(赤羽)」。「東京二十景」というシリーズの1点で、叙情的な荒川の岸辺と、雲間に冴える満月を描いた作品。この明るさと存在感は、昨日のスーパーフルムーンそのものですね。前回もご紹介した巴水で...

川瀬巴水「馬込の月」 ~光と闇、あかり~
夜の深さを闇の恐ろしさを思い知らされた人は多いと思います。いっぽうで、月の美しさに星の明るさに気づかされた人も多いと思います。「馬込の月」(1930)川瀬巴水Moon at Magome(1930)Kawase Hasui照明デザイナーの石井幹子氏は、光から闇に至る中間領域にあるのは、柔らかな「あかり」であると著書「新・陰影礼讃」に記しています。どんなに深い闇の中にあっても必ずどこかに光があるはず。そして闇に飲まれず光を見失わなけ...
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