
小林清親「浅草夜見世」
しみじみと胸に迫り来るのは郷愁でしょうか。ずっと続くと思っていたのに、いつのまにか失われていた少年時代。その面影を、清親の版画を見るたびに思うのです。小林清親「浅草夜見世」。描かれているのは明治時代の情景ですが、子どもの頃に行ったお祭りのことを思い出すんですよねぇ。親からもらった小銭をだいじに握りしめて、何を買おうかと一生懸命あたまを働かせて。昔から人混みがきらいな自分ですが、このときばかりは胸を...

小林清親「東京両国百本杭暁之図」
家を出て椎の若葉に掩われた、黒塀の覆い横網の小路をぬけると、直ぐあの幅の広い川筋の見渡される、百本杭の河岸へ出るのである。幼い時から、中学を卒業するまで自分は殆毎日のやうに、あの川を見た。水と船と橋と砂州と、水の上に生れて水の上に暮らしてゐるあわただしい人々の生活とを観た。(芥川龍之介「大川の水」より)こちらは小林清親の「東京両国百本杭暁之図」。両国大川端の大名屋敷の一角から、川沿いを走る人力車夫...

小林清親「柳原夜雨」
ついに梅雨入りですねぇ。小林清親「柳原夜雨」。雨に打たれた夜の情景を描いた明治期の版画です。人々が手にした灯は濡れた路面に反射し、尾を引くように長々と伸びています。傘生地もまたぼうっと浮かび上がり、夜の闇にいくつもの光が揺れているようです。あわただしく家路を急ぐ人々を見て、早くおうちに帰ろうよと人力車夫に犬が呼びかけている。雨降りの晩は、やはり家でのんびり過ごしたいものです。土日も残念ながら雨のよ...

小林清親「御茶水蛍」
夜の神田川に浮かぶ無数の光。昔はお茶の水にも蛍がいたんですねぇ。屋形船のあかりもまた、詩情を誘います。小林清親「御茶水蛍」。身長2m近くの寡黙な男が描いたのは、杉浦日向子の表現を借りるなら「今にも泣き出しそうな東京の姿」でした。Fireflies at OchanomizuKobayashi Kiyochika気がつけばもう8月。蛍の季節はとうに過ぎてしまいました。まだ蛍を見たことがないと言っていたから、いつかこの果敢ない火群を見せてあげた...

小林清親「浅草蔵前夏夜」(小林清親展より)
江戸から明治に世がかわると東京の街路には石油ランプやガス燈が灯され、モダンな光が人々の生活を変えていきました。そんな新しい光と影を「光線画」と呼ばれる木版画で表現したのが、明治時代の浮世絵師・小林清親。小平市のガスミュージアムで、彼の作品を紹介する「光の浮世絵師 小林清親展」が開かれています。 A Summer Evening at Asakusa Kuramae (1881) Kobayashi Kiyochikaこちらは小林清親「浅草蔵前夏夜」。夏の...
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