
上村松園「清女褰簾之図」
「香炉峰の雪は、いかがかしら?」続けて中宮様が口にされた問いかけに、わたしは胸中に火を熾されたような思いを味わったのです。(このために、たびたびわたしを招き、格子を下げたままにしていたのか——)このときようやく、わたしは、中宮様の御心を理解していました。葛城の神、とわたしを呼んだときからすでに、中宮様はいかにして目の前にいる女房を開花させるか、という算段をしていたのです。わたしは熱に浮かされたような...

上村松園「夕暮」(上村松園と鏑木清方より)
夕暮れ時。障子をあけて外の光をたよりに針に糸を通す。上村松園が描いた市井の美しい女性像「夕暮」は、幼い頃の母の姿をモチーフにして描かれたのだそうです。「徳川期の美女に託して描いた母への追慕の率直な表現であり、私の幼児の情緒への回顧でもあります」と、松園は手記のなかで作品について語っています。 Twilight(1941) Uemura Shoenなんということはない、当時はありふれた光景だったのでしょう。しかし入日の赤い...

上村松園「人生の花」
伏し目がちに、うつむきがちに、期待や不安やさまざまな思いを胸に婚礼の場へ向かう母と娘。上村松園の「人生の花」は、結婚という晴れの舞台ではなくその直前を切り取り、だからこそ見るものの胸を打つ傑作なのだと思います。Springtime of Life(1899)Uemura Shoen実は昨日は友人の結婚式でした。学生時代からの付き合いで、いいところも悪いところも色々知っているだけになんだか我が事のように嬉しく感極まってしまいました。...

上村松園「花がたみ」(上村松園展より)
昨日の「序の舞」が凛とした立ち姿なら、こちらは胡乱な立ち姿。上村松園、1915年の作品「花がたみ」です。Flower Basket(1915)Uemura Shoen世阿弥原作の謡曲「花形見(花筐)」を題材にした作品で、女性の狂い舞う姿を描くために、松園は精神病院での取材を重ねたそうな。しどけなくはだけた衣や、中空をあてもなくさまようかのような右手、そしてどこかあどけない口元と、焦点の定まらない両の目。はらはらと舞い散る紅葉もま...

上村松園「序の舞」(上村松園展より)
東京国立近代美術館の「上村松園展」に行ってきました。会社のすぐ近くなんですが、あまりに近過ぎるせいか今までスルーしてしまい・・・。前期の「焔」を見逃して、ようやく後期になって重い腰を上げた次第です。感想は「素晴らしい」の一言。だからこそ、もっと早めに行っておけばよかったと後悔の念も。Jo-no-Mai(1936)Uemura Shoenこちらは、後期の目玉、「序の舞」です。たおやかに、艶やかに、芸事に勤しむ凛とした立ち姿...
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