
速水御舟「洛北修学院村」
海の底の理想郷を沖縄ではニライカナイというそうです。きっとこんな風景ではないでしょうか。深くまた深く、青に満たされて。Shugakuin Village in Rakuhoku(1918)Hayami Gyoshu速水御舟「洛北修学院村」。描かれているのは海の底……ではなく、京都北部の修学院。朝方の田園風景はまだ夜の気配をたたえていて、静けさのなかで少しずつ、人の営みがはじまっていきます。近づいてみれば手前の樹々がうごめいているようで、遠ざかっ...

速水御舟「昆虫二題」
八方に網を広げる蜘蛛と、光に群がる蛾の群れ。ともに円形を中心に置きながらも、放射と収斂という真逆の動きを象徴的に描いたのが速水御舟の「昆虫二題」という作品です。「葉陰魔手」と「粧蛾舞戯」の対作品になっており、題名からして妖しげな…。「昆虫二題 葉陰魔手」「昆虫二題 粧蛾舞戯」この「昆虫二題」は、山種美術館の「再興院展100年記念 速水御舟」という展覧会に出品されていました。これまで何度か見ている作品で...

速水御舟「名樹散椿」
東京にはいろんな通りがありますが、昨年3月、新たに「美術館通り」と呼ばれるルートが開通したのをご存知でしょうか。山種美術館、根津美術館、国立新美術館などのアートスポットをつなぐ道で、これら3館では今、花にまつわる展覧会が開かれています。ということで、まずは山種美術館の「百花繚乱 -花言葉・花図鑑-」から同館が誇る重要文化財、速水御舟の「名樹散椿」を。 Camellia Petals Scattering(1929) Hayami Gyoshu椿...

速水御舟「紅梅・白梅」
季節外れもいいとこですが、今回はこの作品。速水御舟の「紅梅・白梅」です。ぴいんと張りつめた夜の空気、梅の香りまでも描いたような傑作ですが、今日は花ではなく、月が主役なのです。 Red and White Plum Blossoms(1929) Hayami Gyoshu夕暮れ方に内堀通りを歩いていたんですがお堀の向こう、皇居の森の樹々のはざまに細い細いお月様が浮かんでいました。これから暮色を濃くするであろう薄青の空に、そこだけ色が乗り切ら...

速水御舟「牡丹花(墨牡丹)」
気品漂う墨色の牡丹は、この世にあらざる孤高の一輪。速水御舟、晩年の傑作「牡丹花(墨牡丹)」です。 Black Peonies(1934) Hayami Gyoshu御舟がこの作品を描いたのは1934年。翌年2月に病に倒れ、腸チフスと判明、翌月に息を引き取ります。「牡丹花(墨牡丹)」を描いた時点ではまだ発病していないので、まさか死の影を感じ取っていたはずはないだろうけど……あまりにも凛々しい墨の花弁は、どうしてもこの世ならぬものに見え...
このカテゴリーに該当する記事はありません。