
鏑木清方「朝夕安居」
前回、葛飾応為の美人画の話をしましたがこうした浮世絵師の流れを汲み、明治〜昭和にかけて美人画の名手として活躍したのが鏑木清方です。彼が理想とした「江戸の風情」をテーマとした展覧会が千葉市美術館で開かれています。こちらは晩年の代表作「朝夕安居」(一部)。「そこにとりあげたのは明治二十年頃の世の姿で、 場所は東京の下町、海に近い京橋区築地あたりの朝に始まって 八丁堀界隈の夜までの風物詩なのである」とのこ...

鏑木清方「紫陽花咲く頃」
いよいよ関東も梅雨入りとのこと。梅雨といえば紫陽花、紫陽花といえば鎌倉、鎌倉といえば……鏑木清方です。The Time When Hydrangeas Bloom(1921)Kaburaki Kiyokata鏑木清方「紫陽花咲く頃」。雨にうたれたものか、しっとり濡れたような黒髪と大きくあいた首まわり、わずかにのぞく赤い襦袢がなまめかしくいったいどんなシチュエーションなのかと妄想してしまいます。紫陽花は背景ににじんで消えそうで、今もまだ雨が降り続いて...

鏑木清方「秋宵」(夏目漱石の美術世界展より)
明治時代の女学生は課業として毎日ヴァイオリンを弾いていたそうで、小説「三四郎」のヒロイン美穪子も例に洩れず作中では彼女が紡ぐ音色に対して「妙に西洋の臭いがする。それからカソリックの連想がある」とあります。これにちなんで、東京藝術大学大学美術館の「夏目漱石の美術世界展」では鏑木清方の「秋宵」という作品が展示されていました。Autumn Evening(1903)Kaburaki Kiyokataモデルは清方の奥さんとされています。袴...

鏑木清方「桜もみぢ」
季節外れではございますが、鏑木清方の「桜もみぢ」という作品を。Red Leaves(1932)Kaburaki Kiyokata季節の移ろいや自然のありように対してしみじみと心から湧き出ずる「あはれ」という感情。ことに秋の紅葉はあでやかに美しくも色づいた葉が風に舞うさまはどこか寂しいものです。サントリー美術館の「もののあはれと日本の美」では源氏物語や古今和歌集などにちなんだ古くは平安から昭和にかけての作品が展示されておりなかに...

鏑木清方「一葉女史の墓」
糸のような月がかかる夕暮れ時、うら若き乙女が墓にもたれてこちらに視線を投げ掛けています。彼女の名前は美登利といい、遊女になるべく育てられた14歳の少女。鏑木清方の初期の傑作、「一葉女史の墓」。一葉と美登利といえば……「たけくらべ」ですね。 A Tomb of Lady Writer Ichiyo(1902) Kaburaki Kiyokata清方は樋口一葉の作品を愛読しており、「たけくらべ」や「にごりえ」に材をとった作品を多く残しています。この「一...

鏑木清方「遊女」(上村松園と鏑木清方展より)
このしどけない雰囲気。遠くを見やる切れ長の瞳には、何がうつっているんでしょう。惚れた男との秘め事を思い出しているのか、とらわれの身を嘆いて、娑婆に出る日を夢見ているのか。鏑木清方「遊女」。艶やかだけど、なんだか寂しい気持ちになる一枚です。 A Prostitute(1918) Kaburaki Kiyokata西の松園、東の清方といいますが、男性の自分が清方のほうに惹かれるのは、やっぱりそこにエロティシズムが見え隠れするからなの...

鏑木清方「朝涼」(上村松園と鏑木清方より)
ちょっと遠出して、神奈川県平塚まで。平塚市美術館の「上村松園と鏑木清方」を見てまいりました。西の松園、東の清方と称され、美人画の双璧をなす2人の展覧会は実に10年ぶりなのだとか。東西の名人が描いた美人画をこれでもかというくらい満喫してまいりました♪ Cool Morning(1925) Kaburaki Kiyokataこちらは鏑木清方「朝涼(あさすず)」。朝方、蓮池のほとりを歩く少女が描かれています。この作品はスケッチ2点と合わせて...
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