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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

英一蝶「富士山図」

2015年最初の美術館詣では、恒例の東博にいたしました。長谷川等伯の「松林図屏風」も素晴らしかったけれど、一番印象に残ったのはこちら。英一蝶の「富士山図」という作品です。富士山というだけでも吉祥のめでたい一枚なんですが、なんだかとてものんびりと、ゆるゆるとしていて。寝正月を引きずっていったせいか、その気楽なたたずまいがことさら心にしみたわけです(笑)実際のところは険路を黙々と進む旅人の姿なんでしょうけ...
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岡鹿之助「雪の発電所」

年末ですね。今夜から埼玉の実家に帰るので、今年はこれが最後の更新となります。いろいろ考えて、岡鹿之助の「雪の発電所」という作品にしてみました。Power Plant in the Snow(1956)Oka Shikanosuke描かれているのは、画家が実際に目にした風景だそうです。春の雪のようにしっとりしすぎて情緒的な甘さではなく、むしろ非人情なくらいさらさらとした雪原が広がり、そこに人懐かしさを感じさせてなお典雅な、フランスのシャトー...
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高山辰雄「いだく」

来年夏、姉夫婦に子どもが生まれるそうです。クリスマスイヴに一報もらっていたのですが、今日病院に行って、正式におめでただと分かったとのこと。ようやくうちの両親もおじいちゃんおばあちゃんになれるんだなぁと、しみじみ思ってしまいました。Embracing(1977)Takayama Tatsuoこちらは高山辰雄の「いだく」という作品。赤子を抱く女性と、それを愛おしく見つめる女性が描かれています。無垢なる光のような赤ん坊は、2つの影...
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難波田史男「トロンボーンの行進曲」

心の震えをそのままあらわしたような線描。思いがそのままにじみ出したような水彩。自由とは、かくも脆く果敢ないものかと——。不条理、空想、冒険、創造、孤独、そんな様々を思いながら生きること、創ることについて少し考えてしまいました。世田谷美術館の「難波田史男の世界 イメージの冒険」にて。Music for Trombone(1967)Nambata Fumio前に東京オペラシティで行われた難波田史男の回顧展でファンになったのですが、世田谷...
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堂本尚郎「絵画」

なぜだか気持ちが落ち着く作品。堂本尚郎の「絵画」という水彩画です。Painting(1957)Domoto Hisao水に溶け出したインクのような、不確かな揺らぎ。重ねられた黒と赤の平面も、頼りなくぼやけて見えます。ただそれだけのことなのに。描かれているのはそれだけなのに、足が止まってしまった。連想したのはなぜかイヴ・タンギーの作品群であり、万年筆のペン先の洗浄の場面でした。どちらも自分にとって心地がよく、いとおしいもの...
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アンドレア・デル・サルト「ピエタのキリスト」

ピエタ。けれどそこに、聖母の姿はありません。Christ in Pietà(c.1525)Andrea del Sartoアンドレア・デル・サルト「ピエタのキリスト」。死せるキリストがぽつねんと描かれています。「ピエタ」と題されているにもかかわらず、まわりには聖母も誰もいない。抱きしめてくれる人も、涙を流してくれる人もいない。なんて寂しい絵なんだろう……。この作品は、東京都美術館の「ウフィツィ美術館展」で展示されています。なんだかいろ...
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ボッティチェリ「パラスとケンタウロス」

わけもなく、「ごめんなさい!」と口走りそうになる一枚です。Pallas and the Centaur(1480-85)Sandro Botticelliサンドロ・ボッティチェリ「パラスとケンタウロス」。斧のついた大槍を左手に持ち、蔑むような表情でケンタウロスの髪の毛をわしづかみにしているのは、学問の女神パラス。ギリシア神話のパラス・アテナ、またはローマ神話におけるミネルヴァと言った方が分かりやすいかもしれません。半人半獣のケンタウロスは暴力...
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ホドラー「感情」

またずいぶんと間があいてしまいました……。気を取り直して、前回に引き続きホドラーの作品をば。Emotion(1905)Ferdinand Hodlerフェルディナント・ホドラー「感情」。同題の作品をホドラーはいくつか描いているようで、こちらは第3バージョンになります。真っ赤なポピーの花が咲き群れる野原を、顔をむこうに向けながら進む4人の女性。髪型や衣装は微妙に異なり、踏み出す足先も3番目の女性だけ左が前になっているなど同一の形態...
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ホドラー「昼」

台風が迫るなか、むしろチャンスは今しかないとばかりに国立西洋美術館の「ホドラー展」へ行ってきました。結果は見事にすいておりまして、スイスを代表する画家の作品群を、その画風の変遷を、思う存分満喫したのでありました。The Day, Third Version(c.1900/10)Ferdinand Hodlerこちらはフェルディナント・ホドラー「昼」。同題の作品がいくつか存在するそうで、今回展示されているのは第三バージョン。3人の裸婦が円座し、そ...
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ホドラー「真実、第二バージョン」

10月7日より国立西洋美術館で「ホドラー展」が始まりましたが、その前に。国立新美術館の「チューリヒ美術館展」でも、ホドラーの作品が展示されてるんです。画家の作品だけを集めた部屋が設けられ、そこには6点の作品が。ホドラー展への期待がむくむくと高まる作品群でありました。The Truth, Second Version(1903)Ferdinand Hodlerこちらはフェルディナント・ホドラー「真実、第二バージョン」。両手を広げて中央に立つ女性は...
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葛飾応為「三曲合奏図」

美人画にかけては応為にはかなわない。彼女は妙々と描き、よく画法に適っている。——稀代の浮世絵師・葛飾北斎をしてこのように言わしめた葛飾応為の作品が、ボストンから上野へ里帰りしております。Three Women Playing Musical Instruments(1844-48)Katsushika Oi葛飾応為「三曲合奏図」。琴を弾く女性は後ろ向きで蝶をあしらった豪奢な着物。その左手で胡弓を弾く女性は、正面向きでやや控えめな着物。そして右側の三味線の女...
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小田野直武「不忍池図」

朝に夕に君が便りを思い侘び残んの花の白きに揺れる小田野直武「不忍池図」。手前に描かれているのは、2本の芍薬です。褪せた色彩のなかで、花だけが美しく香っている。そこだけ時間が止まってしまったような、そんな一枚です。昨日はあいにくの天気だったけど中秋の名月で、今日はスーパームーンだそうです。さっき夜空を見上げたら、雲間からのぞいた月が光をこぼしていました。こんな夜には、願いがかなえばと思わずにはいられ...
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マッテオ・コルコス「別れ」

Do you hear me, I'm talking to youAcross the water across the deep blue oceanUnder the open sky, oh my, baby I'm tryingBoy I hear you in my dreamsI feel your whisper across the seaI keep you with me in my heartYou make it easier when life gets hardFarewellVittorio Matteo Corcosヴィットリオ・マッテオ・コルコス「別れ」。損保ジャパン日本興亜美術館の「ノルマンディー展」で展示されていた作品です。たたん...
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ヘッセ「テッスィーンの山村」

暮れ方の斜めに射す金色の光の中にひと群れの家が静かに輝いているみごとな深い色に染まって花と咲く彼らの団欒の夕べは まるで祈りのようだひとつひとつの家が親密に寄り添い兄弟のように丘の斜面に並んでいる素朴でなつかしい まるでひとつの歌のように習わないのに誰でもうたえる歌のように石壁と 漆喰壁と かしいだ屋根と貧しさと誇りと 衰退と幸福とがやさしく おだやかに そして深く夕空にその輝きを照り返す(ヘルマ...
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島成園「化粧」

ホテルニューオータニでは毎年この時期、アートコレクション展という展覧会を開催しています。今年は20回目の記念特別展、「日本の美を極める」というもの。四季、花鳥、風情の3コーナーに分けて近代絵画の名品を惜しみなく展示する素晴らしい内容でした。Make-up(1915)Shima Seien会場で一番ぐっときたのがこちら。島成園の「化粧」という作品です。京都の上村松園、東京の池田蕉園とならび、大阪の島成園もまた美人画を得意と...
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アルフォンス・オスベール「月光の夢」

恋しさは おなじ心に あらずとも 今宵の月を 君見ざらめやめがねをかけずに夜の街をぼんやり歩いていたら下弦の月がずいぶんにじんで見えました。前より眼がわるくなったのか、それとも月が遠ざかってしまったのか。そちらでは、月はどんなふうに見えているんだろう。元気でいてくれたらいいなぁと、ただただ思うばかりです。今日も明日もがんばろう。  ...
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鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」

空からおちてくる美少女というと「天空の城ラピュタ」のシータなんでしょうけど、今から250年も前に描かれたこの作品もすごいのです。見よ、この躍動感!鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」。傘を頼りにえいやっと、約13mの高台から飛び降りた美女の勇姿です。異色中の異色、奇想そのものではございませんか。春信お得意の少女らしさ・あどけなさを残しつつも、恋よ叶えと意を決し、危険と引き換えに大人の階段を上ろうとする健気...
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ゴッドワード「涼しい隠れ家」

台風の影響で土日はあいにくの雨模様でした。そんなときは家でゴロゴロするに限るぞと。のび太君ばりに一生懸命のんびりいたしました。Cool Retreat(1910)John William Godwardジョン・ウィリアム・ゴッドワード「涼しい隠れ家」。「甘美な無為」に良く似た雰囲気の作品で、大理石の肌合い、衣服の質感は本作でも際立っています。見てるだけで涼しい気持ちになってしまいますね。当時のイギリスは産業革命による激変のまっただな...
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ソールベリ「北の花咲く野原」

私たちはよいの明星と初霧を待とう。神さまのしろしめす広い庭で私たちは喜んで咲き、しぼもう。(ヘルマン・ヘッセ「回想」より)Flower Meadow in the North(1905)Harald Sohlbergこちらはハロルド・ソールベリの「北の花咲く野原」という作品です。画面の下半分に広がるのは、真っ白に咲き乱れるヒナギク。地平に浮かぶのは満月……ではなく太陽でしょうか。澄んだ川や赤い家屋をこえて、その光は花々を、あたかも絨毯のように...
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カラヴァッジョ「果物籠」

仕事で果物の原稿を書きながら、なんとなくこの作品を思い浮かべていました。カラヴァッジョ「果物籠」。400年以上も前に描かれた、静物画の頂点。Basket of Fruit(c.1599)Michelangelo Merisi da Caravaggioみずみずしく艶めいた果実だけでなく、朽ちた葉や腐りゆく果実までも描かれています。破滅的な人生をおくったカラヴァッジョは、命の輝きだけでなく死の影をも描かずにはいられなかったのでしょうか。画像を見てたらなん...
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奥村土牛「鳴門」

恵比寿の山種美術館は駅から少し歩かなければいけないのが難ですが、歩いたぶんだけ素敵な作品が見られるのはご承知のとおり。現在は「水の音 —広重から千住博まで—」というこれまた涼しげなタイトルの展覧会をやっております。額に浮いた汗がさーっとひいていく、美しき水の世界。Maelstroms at Naruto(1959)Okumura Togyu会場でまず眼に飛び込んでくるのが、山種コレクションを代表する奥村土牛の「鳴門」という作品です。群...
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クチャルスキー「マリー・アントワネットの肖像」

フランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネット。革命によって断頭台の露と消えた悲劇のヒロインとして知られていますがその印象は享楽的、無知、勝手気ままなどなど否定的なものが多いかもしれません。でも実際には、誇り高くウィットに富んだ愛らしい女性でフランス王妃にふさわしい人格と容姿であったそうです。ただしそれは、彼女が王冠を失いかけたころから。夫とともに革命の渦にのまれ、安寧を失うことで彼女は自分の...
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小林一茶「詠草」

早稲田で素敵な美術館を見つけました。センチュリーミュージアムという名前で、奈良時代から江戸時代の文字文化に焦点を当てた蒐集を行っているとのこと。現在「書と絵画の競演 〜歌仙絵・画賛・絵巻〜」という展示をやってます。こちら、小林一茶の「詠草」。懐紙にばばっとしたためたものだそうで、右に「花鳥」「一茶」と並べて、「鶯やこの声にしてこの山家」と俳句が書かれています。「花鳥」の文字は花と鳥の絵文字のようで...
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デュフィ「ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ」

この展覧会を紹介するのをすっかり忘れていました。Bunkamuraザ・ミュージアムの「デュフィ展」です。日曜で終了してしまいましたが、とても素晴らしかったので。Still life with violin: Hommage to Bach(1952)Raoul Dufyラウル・デュフィは20世紀前半にフランスで活躍した画家。印象派からフォービズムへと画風を変化させながら、装飾芸術や木版でも腕をふるっています。展覧会ではその変遷をたどることができるのですが、作品...
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ミレー「晩鐘」

名画のなかの名画。たとえ美術にうとかったとしても、この絵を知らない人はいないんじゃないでしょうか。L'Angelus(1857-59)Jean-Francois Milletジャン=フランソワ・ミレー「晩鐘」。画家が描いたのは、バルビゾン村の静謐な祈りです。原題は「アンジェラスの鐘」といい、遠景に見えるシャイイ教会では日に三度、アンジェラスの鐘を響かせていました。聖母マリア様、罪あるわたしたちのため、いまも、臨終のときもお守りくださ...
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小村雪岱「日本橋」

しんしんと降り積もる雪のなか、外をうかがう芸者の姿。夜のしじまに何思うのか、その立ち姿はあてどなく、ため息が出るほどの美しさです。この作品は、明治から昭和初期を代表する文人・泉鏡花の「日本橋」の見返しに描かれたもの。手がけた画家の名は小村雪岱。小説家と若き画家はこの作品ではじめて交わり、それまで泉鏡花本の装幀は鏑木清方が多く手がけていたのが、以後その多くを小村雪岱が手がけることになります。日本を代...
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立原道造「二匹の魚」

日曜から一泊二日で軽井沢に行ってまいりました。代休をとって、月曜はお休みにさせていただいて。あっちこっちまわってきたので後でまとめて書きたいと思いますが、今回はアートではなく文学を巡る旅になりました。一番の目的は昭和初期の詩人、立原道造です。軽井沢から少し離れたところにタリアセンという塩沢湖を中心とした観光地があり、その一角の軽井沢高原文庫で立原道造展が開かれています。日本橋橘町に生まれ、堀辰雄や...
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正井和行「虚貝」

浜辺に打ち寄せられた貝がら。中身はない、心もない。ただただうつろに波の音に耳寄せながら月の光にまかせているのでしょう。正井和行「虚貝(うつせがい)」。あはないかもしれないけれど、祈らずにはいられない。夜は涙をたたえたように、ぼんやりとけぶっています。裸の小鳥と月あかり郵便切手とうろこ雲引出しの中にかたつむり影の上にはふうりんさう太陽とその帆前船黒ん坊とその洋燈昔の絵の中に薔薇の花僕は ひとりで夜が...
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板谷波山「葆光彩磁草花文花瓶」(泉屋博古館分館)

出光美術館に続き、泉屋博古館分館でも板谷波山展がはじまっています。東洋の意匠とアール・ヌーヴォーを組み合わせ、新たな近代陶芸の世界を切り開いた明治〜昭和の陶芸家。先週、その格調高い光の世界を見てまいりました。こちらは板谷波山「葆光彩磁草花文花瓶」。薄絹でおおわれたような、しっとりなめらかな肌合い。光を包み込む「葆光彩磁」の代表的作品です。どこか砂糖菓子のような趣もあって、手の届きようのない崇高な輝...
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ヴァロットン「アンティミテ」

ナビ派のメンバーとして活動していたこともあってヴァロットンの作品は色彩感覚もすばらしいんですが、三菱一号館の「ヴァロットン展」では、彼のもうひとつの魅力に触れることができます。それは色彩の対極にある、モノクロームの世界です。Lie, Intimites(1897)Felix VallottonMoney, Intimites(1898)Felix Vallottonヴァロットンの版画シリーズ「アンティミテ」より、「嘘」と「お金」。かたまりのような黒と白で、大胆に描...
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