
藤田嗣治「寝室の裸婦キキ」
マン・レイといえば、モンパルナスのキキ。彼女は10年近くマン・レイと共に暮らし、数々の写真のモデルをつとめました。当時モディリアーニやキスリングも彼女をモデルに起用しましたが、実はキキがモデルとして脚光を浴びたのはある日本人画家の作品がきっかけでした。Nu couché à la toile de Jouy(1922)Léonard-Tsuguharu Foujita画家の名前は藤田嗣治。1922年に発表した作品名は「寝室の裸婦キキ」。闇を統べ...

マン・レイ「セルフ・ポートレイト、ハリウッド」と凸面鏡の絵画
昨日は三菱一号館美術館のあと、国立新美術館の「マン・レイ展」を見に行きました。全410点、マン・レイの生涯を追いかける回顧展のような内容で両脚はくたくたに疲れきっているのに、両目は次の作品へ、次の作品へと前のめりに進んで行くような感じで。単なる写真の展示だったらすぐに飽きてしまったかもしれないけど、「どうやって撮ったんだろう?」と思わせるような不思議な作品ばかりでした。そんなマン・レイの作品群のなか...

岸田劉生「童女像(麗子花持てる)」
今日は三菱一号館美術館の「三菱が夢みた美術館」を見てきました。副題は、「岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」。龍馬伝でもおなじみ、岩崎弥太郎が興した三菱の、珠玉の作品群。日本近代美術、西洋近代美術のほか、東洋文庫所蔵の古文書や日本郵船・麒麟麦酒のポスターなど、展示内容も幅広く見所満載でした。一番印象に残ったのは、やっぱり岸田劉生の「童女像(麗子花持てる)」でした。山本芳翠も黒田清輝もルノワールもモネ...

モディリアーニ「腕を広げて横たわる裸婦」と「自画像」
会社の同僚が新婚旅行でイタリアに行って来たそうで、おみやげにイタリア絵画のミニカレンダーをいただきました。ということで、今回はそのなかから1枚。アメディオ・モディリアーニの「腕を広げて横たわる裸婦」です。Nudo Sdraiato(1917)Amadeo Modiglianiこの作品を描いた1917年、モディリアーニは多くの裸婦像を制作しています。細長い顔、アーモンド型で黒目のない瞳、憂いに満ちた色使いという独自の作風は既に確立されて...

サデレール「フランドルの雪景色」
ブリューゲル?いやいや、違うのです。僕も思わず目を疑ったけれど・・・。こちらは「アントワープ王立美術館コレクション展」で展示されていた、ヴァレリウス・デ・サデレールの「フランドルの雪景色」という作品。確かによく見ると、ブリューゲルとは明らかに異なるのです。Snow in Flanders(1928)Valerius De Saedeleerたとえば絵画の視点。ブリューゲル作品は遥かな高みから大地を見下ろす俯瞰的な構図が多く、一方本作では...

クノップフ「エドモン・クノップフの肖像」
一昨日行った「アントワープ王立美術館コレクション展」、個人的な一番のお目当てはフェルナン・クノップフでした。展示作品は1つだけだったけど、なるほどなるほどと感心しきりの作品でした。Portrait of Edmond Khnopff(1881)Fernand Khnopff1881年ごろの作品、「エドモン・クノップフの肖像」。画家本人の自画像と思われていたものの、現在ではクノップフの父親を描いたものとされているそうです。椅子の背もたれに体を預け...

スピリアールト「自画像」
美術館で出会った、今まで聞いた事もなかった画家の作品。あとで家に帰って調べたら、自分の好きな画家と意外なところでつながっていたりして。そんな偶然の出会いと発見こそ、美術館巡りの醍醐味です。今回「アントワープ王立美術館コレクション展」でも、そんな作品に巡り会うことができました。Self-Portrait(1908)Léon Spilliaertレオン・スピリアールトの「自画像」。ベルギー象徴主義に数えられるものの、実際には独...

マグリット「9月16日」
東京オペラシティアートギャラリーの、「アントワープ王立美術館コレクション展」に行ってきました。アンソールとクノップフがお目当てだったんですが、それ以外にもまったく知らなかった画家の作品など気に入った作品がたくさんあって、とても有意義なひとときでした。ということで、展示作品を何回かにわけて紹介したいと思います。The Sixteenth of September(1956)René Magritte今回ご紹介するのは、ルネ・マグリットの...

ド・フール「悪の声」
貴志祐介の「悪の教典」を読みました。これ、すっごく怖いです。分かりやすくたとえると、「バトルロワイヤル」をもっと知的で凄まじくした感じ。上下巻合わせて800ページ超、一気に読み終えてしまいました。怖くて夢に出そうだわ……The Voice of Evil(1895)Georges de Feureで、本書を読んでて思い浮かんだのがこちらの絵。ジョルジュ・ド・フールの「悪の声」です。思慮深げに頬杖を突く男性の視線の先には、裸で横たわる2人の...

グリムショー「真夏の夜」と「エンデュミオン」
今週も暑かったですね・・・。夜はだいぶ暑さがやわらいできた気がしますが、まだまだ寝苦しい夜が続きそうです。Midsummer Night(1876)John Atkinson Grimshaw今回ご紹介する1枚は、ジョン・アトキン・グリムショーの「真夏の夜」。暑さで目が覚め、ぼんやりとした頭で寝床を抜け出し夜風に当たろうと庭に降り立つと……そこには仄かに光を発し、胸の前で手を組み、羽根を広げる可憐な妖精の姿が。果たしてこれは、現実なのか。...

レンピッカ「スージー・ソリドールの肖像」
春に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでやっていたレンピッカ展。行こう行こうと思いつつ、結局行きそびれて悔しい思いをしたわけですが意外なところで彼女の作品に出会いました。たまたま古本屋で手にした五木寛之の「ワルシャワの燕たち」という小説の表紙に、彼女の作品が使われていたんです。Portrait of Suzy Solidor(1933)Tamara De Lempicka表紙で使われていたのは「スージー・ソリドールの肖像」。モデルのスージーは、...

レイトン「6月の炎」
今日は日中、練馬で38度を超えたとかで。今夜もきっと、寝苦しいんだろうなぁ。寝苦しい寝苦しい、そんな絵画といえば・・・。Flaming June(1895)Frederic Leightonフレデリック・レイトンの「6月の炎」です。悩ましげな姿態の女性は表情もどこか物憂げで、燃え立つようなオレンジ色の衣装が印象的です。皺の寄った衣装はまさに炎のよう。画面上部には波一つない、穏やかな海。やや暗い空と光り輝く海面を考えると、時間帯は明け...

シャガール「窓辺のイダ」
なんの予備知識もなしで、誰の作品か分かったら結構すごいと思います。マルク・シャガール1924年の作品、「窓辺のイダ」。唯一現存する、シャガールの娘イダの肖像画です。Ida at the Window(1924)Marc Chagallただただ柔らかく、ただただ優しく、疑問を差し挟む余地のないほどのシンプルな構図。父性というフィルターを通したからなのか、シャガールの夢想的なイメージは影を潜め、限りない情愛がにじみ出ています。パリに移住し...

有元利夫「一人の夜」
前回に引き続き、東京都庭園美術館の「有元利夫展 天空の音楽」より。有元利夫の作品は何とも素朴で味わい深くて、西洋絵画でいうなら、アンリ・ルソーのような印象。そんなことを思っていたら、この絵に出くわしました。「一人の夜」。おぉ・・・構図といい、色合いといい、木の枝の雰囲気といい、ルソーの「カーニバルの夜」にそっくりじゃないか。実はこの類似についてはカタログでも触れられてるんです。和歌でいうところの本...

有元利夫「厳格なカノン」
東京庭園美術館の「有元利夫展 天空の音楽」に行ってきました。活動期間はわずか10年ほど、38歳という若さで亡くなった早逝の画家。しかしその独自の画風は死後も評価を高めています。かなり独特の作風なんで、見た事があるという人も多いのでは。こちらは1980年発表の「厳格なカノン」。我が敬愛する作家、宮本輝の「愉楽の園」の表紙にも使われており個人的にもいろいろと感銘深い作品です。有元利夫は音楽にも造詣が深く、今作...

モーリス・ドニ「エヴァ・ムリエの肖像」
世田谷美術館の「ザ・コレクション ヴィンタートゥール」ですが、実はモーリス・ドニの作品がお目当てでした。1891年発表の「エヴァ・ムリエの肖像」。う~んやっぱり最高です。Portrait of Eva Meurier(1891)maurice Denisエヴァ・ムリエは、ドニの妻、マルトの姉妹。身内の気安さなのか、モデルの表情は気張らず着飾らず、かといって笑みを浮かべるでもなく真摯な表情。全体的に渋い色合いでまとめられているものの、背景の装...

ルソー「赤ん坊のお祝い!」
前回に引き続き、世田谷美術館の「ザ・コレクション ヴィンタートゥール」より。今回ご紹介するのはアンリ・ルソーの「赤ん坊のお祝い!」です。美術史上、最も凛々しい(?)赤ん坊の肖像画です。To Celebrate the Baby,(1903)Henri Rousseauルソーの他の肖像画同様、遠近法を無視して描かれているせいで赤ん坊の存在感がものすごいことになってます。左手には当時流行していた「ポリシネル」という操り人形。右手では洋服の裾...

ゴッホ「郵便配達人 ジョゼフ・ルーラン」
世田谷美術館の「ザ・コレクション ヴィンタートゥール」を見てきました。用賀駅から直通のバスが出ててアクセスもばっちり、館内は比較的すいてて、のんびりじっくり楽しめました。スイスのヴィンタートゥール美術館所蔵の名品群、しかも90点すべて日本初公開という贅沢さ。大満足です。Le facteur Joseph Roulin(1888)Vincent van Goghということで、今回紹介するのはフィンセント・ファン・ゴッホの「郵便配達人 ジョゼフ・...

クラムスコイ「忘れえぬ女」
映画「ソルト」を見てきました。いやー予想以上に面白かった!ロシアのスパイ容疑をかけられたCIAエージェントの物語なんですが、主演のアンジェリーナ・ジョリーがかっこいいんですわ。イカレセレブだと思ってたけど印象がだいぶ変わりました。ということで、今回は「ソルト」にちなんでロシア美人の肖像画を紹介します。Portrait of an Unknown Woman(1883)Ivan Nikolaevich Kramskojロシアの画家、イワン・クラムスコイの...

ヨルダーンス「豆の王」
今週はちょっと飲み過ぎてしまいました。あんまり飲んでばかりいると、この絵のおっさんのようになってしまいます。The Bean King(about 1640)Jacob Jordaensヤーコブ・ヨルダーンスの風俗画、「豆の王」。飲んで飲んで騒いで飲んで、へべれけへべれけいい気分。画面右下のおじさんを見てると、お酒を控えようかな、という気になります。ちなみに豆の王とは、豆を一粒だけ入れたケーキを切り分けて、豆入りのものを当てた人が王...

ロップス「踊る死神」
寝苦しい夏、昨日に引き続き怖い絵を。ベルギー出身の画家、フェリシアン・ロップスの「踊る死神」は思わず背筋がぞっとする1枚です。Death at the Ball(1870)Félicien Rops民族衣装風のドレスを身にまとい、優雅に踊る女性。・・・女性?生気のない土色の肌、深く窪んだ眼窩、そう、彼女の顔は髑髏であり、彼女は死神なのです。よく見れば首の裏側には赤い大きなリボンがぶら下がっており、視線の先には男性らしき影も見...

ベックリン「ペスト」
世紀末象徴派を代表する画家、ベックリン。スイスに生まれ、生涯の多くをドイツで過ごしたベックリンは死と無常という主題を掲げた作品を数多く発表します。今回はそのひとつ、1898年発表の「ペスト」を紹介します。The Plague(1898)Arnold Böcklinベックリンの「ペスト」は、見る者をひどく不安にさせる作品です。ペストを暗示する死神がまたがるのは、コウモリの翼を持った巨大な怪物。尾をこちらに向け、翼を広げて画面...

シャガール「イカルスの墜落」
東京藝術大学大学美術館の企画展、「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」に行ってきました。この美術館は駅から遠いのが少々難ですが、汗をかきかきたどり着いてみれば、一気に汗が引いていくのはやっぱりロシア芸術の特質なのでしょうか。さて、今回のお目当てはマルク・シャガールの晩年の傑作、「イカルスの墜落」です。La chute d'Icare(1974/77)Marc Chagall後年のシャガールの作品にしては比較的分かりやすい...
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