
ルノワール「桟敷席」
批評家たちからの批判と非難が集まった第1回印象派展において、好評でもって迎えられた数少ない作品のひとつ。ピエール=オーギュスト・ルノワールの「桟敷席」です。La Loge(1874)Pierre-Augustê Renoir※画像をクリックすると、拡大してご覧いただけます。ルノワールというと柔らかな色使いと筆触が印象的ですが、本作では女性の衣装、白と黒とのコントラストが際立っています。桟敷席とは、日本語だと舞台の左右両端にあ...

ターナー「モートレイク・テラス」
黄金色の光。神々しい光。でもどこか物悲しい。あぁ、これが黄昏というやつなのか。Mortlake Terrace(1826)Joseph Mallord William Turner ※画像をクリックすると拡大してご覧いただけます。ウィリアム・ターナー「モートレイク・テラス」。この作品にぴったりの詩を一編。中原中也「夕照」丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。
原に草、
鄙唄うたひ
山に樹...

ターナー「雨、蒸気、速度」
今日は朝から雨。週末には台風が来るらしいですね。さて、雨といえば……Rain, Steam and Speed (1844)Joseph Mallord William Turner 光と大気の画家、ウィリアム・ターナーの「雨、蒸気、速度」。1844年の作品です。雨にけぶる風景、地平の向こうから景色を切り裂くように、こちらに向かってくる鉄道。西洋美術史上はじめて、「スピード」を描いた作品だと言われているそうです。ちなみに鉄道の前には、必死で逃げるウサギが描き...

コロー「ニンフと戯れるアムール」
今日は仕事で、環境関連のセミナーに出席しました。ちょうどCOP10開催中ということもあってか、満員御礼でとても勉強になるセミナーでした。少なく見積もっても、自然状態の100倍ものスピードで生物が絶滅していっているのだとか。恐ろしい話です。Une nymphe jouant avec un amour (1857)Jean-Baptiste-Camille Corotさて、環境と絵画といえば……ぱっと思い浮かぶのはバルビゾン派です。こちらはカミーユ・コローの「ニンフと戯れ...

ピカソ「シュミーズ姿の少女」
青空に手を伸ばしても、手は虚空を泳ぐばかり。青い海をコップに閉じ込めようとしても、少し濁った海水がたゆとうばかり。青は手に入らないから美しい。手に入らないから哀しい。Girl in a Chemise(1905)Pablo Picassoパブロ・ピカソの「シュミーズ姿の少女」。青の時代、1905年の作品です。正直に言ってしまうと、僕はピカソがあまり好きではないのです。ピカソの絵は、見ているだけで何だか疲れてしまう。見ているだけなのにエ...

ファンタン=ラトゥール「読書をする女」
女性が読書をしてる姿って、なんか好きです。読書デートしたいな。喫茶店で向かい合って黙々と本読む、みたいな。特に感想を語り合ったりすることもせず。La Liseuse(1861)Henri Fantin-Latourこちらはアンリ・ファンタン=ラトゥールの「読書をする女」。目を細め、真剣な面持ちで本を読む女性はラトゥールの妹だそうです。ラトゥールってそんなに知名度の高い画家ではないと思うんですが、印象派の形成にあたって大きな役割を...

上村松園「人生の花」
伏し目がちに、うつむきがちに、期待や不安やさまざまな思いを胸に婚礼の場へ向かう母と娘。上村松園の「人生の花」は、結婚という晴れの舞台ではなくその直前を切り取り、だからこそ見るものの胸を打つ傑作なのだと思います。Springtime of Life(1899)Uemura Shoen実は昨日は友人の結婚式でした。学生時代からの付き合いで、いいところも悪いところも色々知っているだけになんだか我が事のように嬉しく感極まってしまいました。...

ゴヤ「ボルドーのミルク売りの少女」
フランシスコ・デ・ゴヤ最晩年の傑作にして、絶筆ともいわれる重要作品「ボルドーのミルク売りの少女」。聴覚を失い、視力も衰えた末にゴヤがたどりついた、輝ける世界。La lechera de Burdeos(1827)Francisco de Goya※画像をクリックすると、拡大してご覧いただけます。スペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤ。1786年に宮廷画家として絵筆をふるうも、不治の病に犯され聴力を失い、スペイン独立戦争などの動乱を経て彼の作品...

フェルメール「絵画芸術(画家のアトリエ)」
歴史上最大の芸術への愚行というと、ナチス・ドイツの美術品略奪が思い浮かびます。その数、なんと2万点あまり(!)。もちろん購入したものもあるんでしょうけど、それにしてもこの数は・・・。ちなみにこちらのホームページで、ナチスが略奪した美術品を検索することができます。左上の検索ボックスで、たとえば「gogh」と入力するとゴッホの作品だけで11作品も出てくるわけで……。なんともはや。The Art of Painting(1666-67)J...

ヴィジェ=ルブラン「娘と一緒の自画像」とベルト・モリゾ「ゆりかご」
フランスの女流画家、ヴィジェ=ルブラン。マリー・アントワネットのお抱え画家というイメージが強い彼女ですが、実は働くお母さんとしての一面もあったようです。Madame Vigée Le Brun, Autoportrait avec sa Fille(1786)Marie Élisabeth-Louise Vigée Le Brunこちらは「娘と一緒の自画像」。母娘が仲良く抱き合う、微笑ましい場面が描かれています。娘は母(ルブラン)の首に手を回し、「お母さん大好き」なん...

ヴィジェ=ル・ブラン「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」
どこか幼げな笑顔が印象的な自画像ですが、実はこの女性、このとき35歳なんですよね。う~む、自画像だから若々しいのか、それとも……autoritratto(1790)Élisabeth-Louise Vigée-Le Brunマリー=ルイーズ=エリザベート・ヴィジェ=ル・ブランの「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」。損保ジャパン東郷青児美術館の「ウフィツィ美術館自画像コレクション」で来日してますね。彼女は王妃マリー・...

ドラクロワ「ジャウールとパシャの闘い」
今にも荒々しい息づかいが聞こえてきそうな、見ているこちらにまで粉塵が舞ってきそうな圧倒的な迫力。絵に入った亀裂さえ、この争いによって生まれたように感じるほど。Le combat du Giaour et Hassan(1835)Fedinand Victor Eugene Delacroixウジェーヌ・ドラクロワの「ジャウールとパシャの戦い」。ロマン主義の巨匠として知られるドラクロワは詩人バイロンの作品に基づく作品を多く発表しており、こちらもそのうちの一つ。ジ...

和田英作「黄衣の少女」
黄色いワンピースに小麦色の肌。赤い壁紙を背にした、凛としたまなざしの少女。おもわずハッとさせられる、東洋風美人図。山種美術館の「日本画と洋画のはざまで」より、和田英作の「黄衣の少女」。1931年の作品です。燃え立つような赤と黄色が印象的ですが、表情は静かで、だからこそ引き込まれてしまうんでしょうか。今回初めて和田英作という画家のことを知ったんですが、調べてみれば素敵な作品ばかり。本展には出品されてませ...

ヘンリク・シェミラツキ「ネロのたいまつ」
快楽と陶酔の極みのような、古代ローマの一幕。中央上部には、輿に乗った皇帝ネロ。視線の先には、今しも火を付けられそうな……たいまつ?Nero's Torches(1876)Henryk Siemiradzki前回もご紹介したヘンリク・シェミラツキ。こちらは彼の出世作となった、「ネロのたいまつ」です。ここで描かれるのは、キリスト教徒迫害という残忍な光景。ローマ帝国第5代皇帝ネロは、この一事によってローマ史上最悪の暴君として歴史に名を残すこ...

ヘンリク・シェミラツキ「泉のほとり」
黄色いターバンに青い衣装、頭の上には美しい文様の水差し。古代ローマののどかな昼下がり。By the Spring(1899)Henryk Siemiradzki先月行った美術展「ポーランドの至宝」より、ヘンリク・シェミラツキの「泉のほとり」。展示の目玉はレンブラントでしたが、個人的に一番気に入ったのはこの作品でした。シェミラツキはポーランドに生まれ、ロシア皇帝に仕えた19世紀の画家。古代ローマ史を題材とした作品を多く発表し、ヨーロッ...

パウル・クレー「蛾の踊り」と中原中也「朝の歌」
子どもの落書きのような、いかにもパウル・クレーな絵。でもじっと見つめていると、なぜだか哀しくなってくるのです。Dance of the Moth(1923)Paul Klee愛知県美術館所蔵、パウル・クレーの「蛾の踊り」。踊りというにはあまりにも不自由で、見えざる力にがんじがらめにされているような印象です。胸には矢が突き刺さり、下方に伸びる幾本もの矢印は彼女の飛翔を妨げるようであり、それにあらがうように彼女は細かく羽根を震わせ...

円山応挙「朝顔狗子図」
私はこれを、「もふもふ画」と呼びたい。円山応挙「朝顔狗子図」(部分)。旧明眼院障壁画の一部です。現在は東京国立博物館所蔵。超細密描写もお手の物なら、こんなデフォルメもお手の物。思わず目尻が下がってしまいます。このへんの幅広さも、応挙の魅力なのでは。応挙というか、当時の絵師のすごさか。ちなみに三井記念美術館の応挙展に出品されているわけではないので、あしからず。ぽちっとお願いします! 円山応挙 (新潮...

円山応挙「雪梅図襖」
三井記念美術館の「円山応挙 ~空間の創造」を見に行ってきました。こないだ当ブログでも紹介した新発見の屏風「松鶴図屏風」をはじめ、ほんとに素晴らしい作品ばかりで……何とも立ち去りがたかった。今年観に行った美術展のなかでも、極めて印象深い展示でした。こちらは1785年の作品、「雪梅図襖」(部分)。もう、なんて表現したらいいのか分からない。すばらしいとしか言えない。なんていうか、西洋画と日本画って、感動の質が...

モーリス・ドニ「家族といる画家の自画像」
昨日行ってきた、損保ジャパン東郷青児美術館の「ウフィツィ美術館 自画像コレクション」。画家たちの顔、顔、顔。レンブラントやカラッチ、藤田嗣治、キリコ、シャガールなどなんとも豪華な面々で、オールスター勢揃いといった印象。本場で見られたら幸せだろうなぁとつくづく思いました。なかでも一番印象に残ったのが、モーリス・ドニの「家族といる画家の自画像」。そもそもこの作品が一番のお目当てだったんですが、期待を裏...

ドガ「トキと若い女」
今日は朝早くから横浜で取材があり、せっかくなのでその後ドガ展に行ってきました。2回目だし仕事の合間だし、好きな作品だけじっくり見て、あとは足を止めずに流し見るというスタイルで。とはいえ、いい作品が多すぎてなんだかんだでしっかり見てしまいました。Young Woman with Ibis(1860-62)Edgar Degasこちらは初期の作品、「トキと若い女」。あぁ、トキって赤いのもあるんだなぁなんてどうでもいいところが気になってしまっ...

モロー「自画像」と遺書
ギュスターヴ・モローの「自画像」。1850年、24歳のときの作品です。現存する作品の中では最初期に属し、当時モローが傾倒していたドラクロワの影響が見てとれます。Self-portrait(1850)Gustave Moreau国立美術学校で学んだモローは前年の1849年、ローマへの国費留学をかけてローマ賞に挑むものの、あえなく失敗。「自画像」を発表した1950年には進路についてドラクロワに相談し、シャセリオーと親交を結び社交界に出入りするよ...

ゴッホ「アルルの寝室」(ゴッホ展より)
国立新美術館の「ゴッホ展」では、ゴッホの代表作「アルルの寝室」も来日してました。ゴッホが実際に、ゴーギャンと共同生活をした「黄色い家」の一室。彼は弟への手紙のなかで、「色彩がすべての要」と「アルルの寝室」について表現しています。The Bedroom(1888)Vincent van Gogh「アルルの寝室」の解説は、ゴッホ自身に任せてしまいましょう。 壁は薄い紫。 床は赤い格子のタイルだ。 ベッドの木と椅子は新鮮なバターの黄...

ゴッホ「アイリス」(ゴッホ展より)
日曜は上村松園のあと、国立新美術館の「ゴッホ展」に行ってきました。感想としては、だいぶ玄人好みの内容だなぁ、と。素描や周辺画家の作品が多かったんですよね。僕は素人なので、ちょっと物足りない気が……。もう2、3点有名作品があればよかったのにという印象でした。とはいえ、これは見ておきたかった!という作品にももちろん出会えました。1890年の作品、「アイリス」です。Irises(1890)Vincent van Gogh鮮やかな黄色の壁...

上村松園「花がたみ」(上村松園展より)
昨日の「序の舞」が凛とした立ち姿なら、こちらは胡乱な立ち姿。上村松園、1915年の作品「花がたみ」です。Flower Basket(1915)Uemura Shoen世阿弥原作の謡曲「花形見(花筐)」を題材にした作品で、女性の狂い舞う姿を描くために、松園は精神病院での取材を重ねたそうな。しどけなくはだけた衣や、中空をあてもなくさまようかのような右手、そしてどこかあどけない口元と、焦点の定まらない両の目。はらはらと舞い散る紅葉もま...

上村松園「序の舞」(上村松園展より)
東京国立近代美術館の「上村松園展」に行ってきました。会社のすぐ近くなんですが、あまりに近過ぎるせいか今までスルーしてしまい・・・。前期の「焔」を見逃して、ようやく後期になって重い腰を上げた次第です。感想は「素晴らしい」の一言。だからこそ、もっと早めに行っておけばよかったと後悔の念も。Jo-no-Mai(1936)Uemura Shoenこちらは、後期の目玉、「序の舞」です。たおやかに、艶やかに、芸事に勤しむ凛とした立ち姿...

円山応挙の新作発見!「松鶴図屏風」
10月9日から開幕する三井記念美術館の「円山応挙 ~空間の創造」展で、新たに見つかった応挙の屏風が展示されるそうです。題名は「松鶴図屏風」。1770年発表、応挙38歳のときの作品だそうです。右隻と左隻が連続していないのがちょっと気になりますね。もともとこの作品は寺院の襖絵だったもので、後に屏風として改装されたのだとか。となると、もしかしたら中央に収まるべき部分がどこかにあるのかも……なんて色々想像してしまいま...

モネ「ラヴァクール」
セーヌ川の解氷をきっかけに、戸外での制作を再開したクロード・モネ。やがて、彼は再び官展(サロン)への挑戦を決意します。1970年の落選以来の挑戦でしたが、印象派のリーダー的存在だったモネの行動は、見方によっては裏切りとも受け取られかねないものでした。モネ自身は「絵を売るため」と言っていたようですが・・・。Lavacourt(1880)Claude Monetモネは1880年の官展に作品を2点出品し、うち1点が入選となります。それが...
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