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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ルオー「孤独者通り」

夜は遅い。母親はあそこに、父親はまだ帰らない。Rue des Solitaires, MiserereGeorges Rouaultジョルジュ・ルオー「孤独者通り(ミセレーレより)」。冒頭の文章は、この作品にルオー自らが添えた詩だそうです。母親は路地の向こうに佇む女性、娼婦のことを指しているのでしょうか。暗く荒んだ風景の向こうには、「郊外のキリスト」でも描かれた煙突がそびえています。パリ中心部の歓楽を支えるために稼働し続ける、労働者階級の...
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ルオー「郊外のキリスト」

夜更けの裏通り。白い満月に照らし出されるように、静かにたたずむ親子の姿。こんな夜中に子どもを連れて、とぼとぼと……。Le Crist en Banlieue(1920-24)Georges Rouaultジョルジュ・ルソー「郊外のキリスト」。石橋財団ブリヂストン美術館所蔵の作品で、現在はパナソニック電工汐留ミュージアムの「ルオーと風景」で展示されています。2人の子どもに寄り添い立つのは、親ではなくキリストなんですね。なんだか力なくうなだれて...
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ルノワール「シャルパンティエ夫人とその子どもたち」

ルノワール「シャルパンティエ夫人とその子どもたち」。左側の女の子は犬の背中に体を預けてるのかな?西洋絵画において、犬はいつだって忠節の象徴として、家族の愛すべき一員として、良き友人として描かれます。Georges Charpentier et ses enfants(1878)Pierre-Augustê Renoirほんとは今回もルオーの作品を紹介する予定だったんですが、わけあって寄り道です。それでは以下、コピーライターの児島令子さんの文章を引用さ...
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ルオー「人物のいる風景」

1日遅れてしまいましたが、5月27日はジョルジュ・ルオーの誕生日でした。ということで前回の続き、ギュスターヴ・モローの愛弟子ルオーの作品です。Paysage animé(1897)Georges Rouaultジョルジュ・ルオー「人物のいる風景」。月明かりに照らし出された、森と湖。湖ではニンフが水浴をしており、霞がかった深い森はなんとも幻想的で、夢の中の情景のようで。レンブラントの再来といわれたのも納得です。郷愁を誘う一枚です...
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モロー「岩の上のサッフォー」

前回ご紹介した古代ギリシャの女性詩人レスビアは、またの名をサッフォーといいます。レスボス島に若い女性だけを集めた学校を開いたことからレズビアンの語源となったそうですが、彼女は悲恋の果てにみずから命を絶ったことでも知られており、そのエピソードをギュスターヴ・モローがたびたび描いています。Sapho sur le rocher(1872)Gustave Moreauギュスターヴ・モロー「岩の上のサッフォー」。象徴主義の雄、モローならでは...
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ポインター「レスビアとスズメ」

スズメと戯れる、美しい女性。ラファエル前派の画家、エドワード・ジョン・ポインターの「レスビアとスズメ」です。Lesbia and her SparrowSir Edward John Poynterこの「レスビアとスズメ」は、古代ローマの詩人ガイウス・ウァレリウス・カトゥルスの恋愛詩によるものと思われます。レスビアは女性詩人サッフォーの異名で、ギュスターヴ・モローがサッフォーを題材にした作品を多く描いてますね。女性同性愛者を意味する「レズビ...
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シーレ「左膝を折って座る女性」

100年近く前の作品なのに、やけに現代的。いや、現代的なんて言ったら……シーレが怒り出すかも。Seated Woman with Bent Knee(1917)Egon Shieleエゴン・シーレ「左膝を折って座る女性」。世紀末象徴主義ならではの赤い髪の毛、強い意志を秘めた目元。シーレいわく、「現代的な芸術など存在しない。あるのはただ一つ、永遠に続く芸術のみである」とのこと。なるほど確かに、シーレの芸術は100年後も輝きを失わずそれこそ永遠に、見...
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レンブラント「3本の十字架」

これまで4回にわたって、国立西洋美術館「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」の注目作品をご紹介してきましたが、実はまだ、一番の見所に触れていませんでした。The Three Crosses(1653)Rembrandt van Rijnレンブラント・ファン・レイン「3本の十字架」。中央の十字架はキリスト、左右はともに磔にされた罪人ですね。画面上部からは闇を切り払うように光が射しており、死したキリストが天へと召されようとしている場面のようで...
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レンブラント「貝殻」

レンブラント、唯一の静物画(版画)。当時コレクターアイテムだった貝殻を描いた、その名も「貝殻」です。The Shell(1650)Rembrandt van Rijnレンブラントは油彩でも版画でも、静物を描くことはなかったのだとか。ただひとつ、この「貝殻」を除いて。そういった意味で、国立西洋美術館「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」の見所のひとつといっていいでしょう。現代人の感覚からすると、何故貝殻? という気もしますが奇妙に美...
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レンブラント「3本の木」

光と影、平穏と不穏、日常と非日常、喜びと哀しみ。そんな対立項と精神性を感じさせる一枚です。The Three Trees(1643)Rembrandt van Rijnレンブラント・ファン・レイン「3本の木」。21.3×27.9cmという、ほぼA4横に近いサイズのなかで目を凝らすと実に多様な要素が描き込まれています。左側では釣りをする人、草を食む牛、風車。3本の木の後ろには馬車も見えます。そしてその先には、右方向に足を投げ出して絵を描く画家の姿。の...
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レンブラント「アトリエの画家」

空虚な部屋。イーゼルの大きさに比して画家の存在は何だかちっぽけで、表情もどこか虚ろな気がします。レンブラント・ファン・レイン「アトリエの画家」。見るだに不思議な一枚です。Artist in His Studio(c.1628)Rembrandt van Rijnイーゼルは左上方からの光を受け止め、その影が画面右下に伸びています。光はイーゼル、つまりは作品のためにあるとでも言わんばかり。イーゼルの反対側と画家の姿を描いた作品というと思い浮かぶ...
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レンブラント「書斎のミネルヴァ」

み、美輪明宏……!?Minerva in Her Study(1635)Rembrandt van Rijnレンブラント・ファン・レイン「書斎のミネルヴァ」。美輪明宏に……似てません? 気のせい?国立西洋美術館で開催されている、「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」で出会った一枚でございます。ミネルヴァといえばローマ神話における知恵と知識の女神。ほかにも詩や医学などいろんなものを司っており、ギリシャ神話のアテナに対応することもあって本作では兜や...
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コロー「モルトフォンテーヌの想い出」とシュティフター「森ゆく人」

渇いて灰色になった畑の中に、森は濃紺の帯となって連なっていた。やがてボヘミアの森のさらに濃紺の緑が灰色の雲と混ざり合い、境界線も判然としないままに雲に溶け込んでいた。これを見ている青年の傍らでは、すでに野草の立ち枯れの茎が幾本か微風に煽られ、かさこそ音をたてていた。この微風は永い静かな時のあとに沸き立ち、事の急変を告げるものだった。(アーダルベルト・シュティフター「森ゆく人」より)Souvenir de Mort...
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セザンヌ「りんごとナプキン」

前回もちらっと紹介しましたが、2012年3月、国立新美術館にて「セザンヌ展」が予定されています。アート系のブログをやっていながらぶっちゃけセザンヌはそんなに好きではない、というかイマイチよく分からないんですが、「セザンヌ展」をきっかけに良さに気づけたらなぁ、と思ってます。Apples and Napkins(1879-80)Paul Cézanneということで、今回は国内のセザンヌ作品。損保ジャパン東郷青児美術館所蔵、「りんごとナプ...
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「ユベール・ロベール展」2012年3月開催!

先日、独立行政法人国立美術館の年度計画が発表されました。今年度も素敵な展覧会が目白押しですが、特に注目なのが国立西洋美術館の「ユベール・ロベール展」と国立新美術館の「セザンヌ展」。どちらも2012年3月からの展示ということもあって、まだ各館のホームページでの情報公開はされていないようです。ということで、今回はユベール・ロベールの作品をご紹介。left: Imaginary View of Rome with the Horse-Tamer of the Mont...
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速水御舟「牡丹花(墨牡丹)」

気品漂う墨色の牡丹は、この世にあらざる孤高の一輪。速水御舟、晩年の傑作「牡丹花(墨牡丹)」です。 Black Peonies(1934) Hayami Gyoshu御舟がこの作品を描いたのは1934年。翌年2月に病に倒れ、腸チフスと判明、翌月に息を引き取ります。「牡丹花(墨牡丹)」を描いた時点ではまだ発病していないので、まさか死の影を感じ取っていたはずはないだろうけど……あまりにも凛々しい墨の花弁は、どうしてもこの世ならぬものに見え...
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尾形光琳「燕子花図屏風」

左隻には、金地に群れるカキツバタ。右隻には、金地に躍るカキツバタ。尾形光琳「燕子花図屏風」。なるほどこれは、すばらしい。 Iris laevigata(1701-04) Ogata Korin先日根津美術館に行ってきたのですが、同館が誇る国宝が、この「燕子花図屏風」。伊勢物語の「八橋」を描いた作品とされています。色彩は金地に緑青と群青のみなんですが、実物をよく見ると左隻の群青(花)の方が色が濃く、右隻の方が色が淡いことに気づきま...
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アール・ブリュット・ジャポネ展と高村智恵子

前回ヘンリー・ダーガー展を紹介しましたが、これと合わせてぜひ見に行ってほしいのが埼玉県立近代美術館の「アール・ブリュット・ジャポネ展」です。アール・ブリュットは「生の芸術」という意味で、英語ではアウトサイダー・アートと表現します。正式な美術教育を受けず、発表することを目的とせず独自に制作を続ける人たちの作品のことで、孤独のなかで「非現実の王国で」を作り上げたヘンリー・ダーガーはこのアウトサイダー・...
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ヘンリー・ダーガー「非現実の王国で」

約40年にわたり、誰に知られることなく孤独な制作活動を続けたヘンリー・ダーガー。彼が遺した1万5千ページにも及ぶ巨編「非現実の王国で」に迫る展示が、ラフォーレミュージアム原宿で開催されています。20世紀アメリカ美術における最大の謎とされるヘンリー・ダーガー。彼には家族も友人もなく、病院の清掃人として働きながら、夜になれば部屋にこもって、奇妙な叙事詩を紡ぎ続けました。死後、ダーガーの下宿先の大家が発見した...
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ゴヤ「異端審問所の裁判」

正義は、時に人を傷つける。正義は、時に人を追いつめる。正義は……正義を押しつける。 The Inquisition Tribunal(1812-19) Francisco de Goyaフランシスコ・デ・ゴヤ「異端審問所の裁判」。台の上に座らされた被告は反省の帽子をかぶらされ、祈りなのかあきらめなのか、手を組んで顔をうつむけています。当時、このような宗教裁判はスペインをはじめヨーロッパ全土で行われており、ゴヤも何度か、裁判にかけられそうになったと...
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仙ガイ義梵「○△□」

いたずら書きのような、何ともいえない味わい。仙ガイ義梵「○△□」は、宇宙をあらわした禅画と解釈されているそうな。京都の建仁寺にも「○△□乃庭」っていうのがあるけど、何か関係あるのかな? The Universe Sengai Gibbonさて、今日はめずらしく頭をフル回転させた一日でした。原因はこちら。単純な算数の問題なんですが、これが何とも。 6÷2(1+2)=?正解は9? それとも1? というところで。僕は絶対1だろう、という意見だ...
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クリムト「黄金の林檎の木」

林檎の木、歌をうたう少女たち、金色の木の実(エウリピデス「ヒッポリュトス」より) Golden Apple Tree(1904) Gustav Klimtほぼ正方形の画面を埋め尽くすように、枝を伸ばす林檎の木。黄金の果実がたわわに実り、装飾的な木の葉は陽光に輝き、むせかえるような緑が満ち満ちています。グスタフ・クリムト「黄金の林檎の木」、これぞ生命の讃歌。クリムトというと、やはり黄金の肖像画のイメージが強いんですが実は彼の全作品...
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ピサロ「エルミタージュの丘、ポントワーズ」

こういう町に、住みたいな。カミーユ・ピサロ「エルミタージュの丘、ポントワーズ」。郷愁を呼び覚ます一枚です。カントリー・ロードが聞こえてきそう。 View Of L'hermitage, Jallais Hills, Pontoise(c.1867) Camille Pissarroひとりぼっち おそれずに生きようと 夢見てたさみしさ 押し込めて強い自分を守っていこうカントリー・ロードこの道 ずっとゆけばあの街に つづいてる気がする カントリー・ロードどんな挫けそ...
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フラゴナール「盗まれた接吻」

男は女の手をつかみ、強引に引き寄せて……ほっぺにチュウ。女の視線は開きかけた扉のほうを向いており、意に添わぬ展開だったのか、それとも隣の部屋の人々を気にしてるのか。ジャン=オノレ・フラゴナール「盗まれた接吻」。「盗まれた」という表現がぴったりの、臨場感あふれる一枚です。 Le Baiser à la dérobée Jean-Honoré Fragonard, Marguerite Gérard女性画家の作品だけを集めたはずの三菱一号...
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ヴィジェ=ルブラン「自画像」

昨日は新美術館のあと、三菱一号館美術館へ。「マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン」を見てきました。副題は「華麗なる宮廷を描いた女性画家たち」。ずらっと並ぶ、18世紀の女性画家たちの作品はなるほど女性ならではの繊細さと優しさを感じさせるものばかり。当時の女子力を堪能させていただきました。 Autoportrait(1800) Elisabeth Louise Vigée Le Brunこちらはヴィジェ・ルブランの自画像。45歳くら...
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イヴ・タンギー「夏の四時に、希望……」

小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。(宮沢賢治「やまなし」より) A quatre heures d'été, l'espoir ...(1929) Yves Tanguyシュルレアリスムの画家イヴ・タンギーが描いたのは、此の世のどこともつかぬ幻想風景。「夏の四時に、希望……」、タイトルも謎めいています。この絵をじっと見ていたら、中央の黄色い物体がなんだか翼を広げた鳥のように思えてきました。この景色が水底だとするならば右側では砂が水...
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