足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

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ルオー「ピエロ」

「秋の心」と書いて、「愁い(うれい)」といいます。「愁しい」と書いて、「かなしい」と読んだ詩人もいました。うつくしい夜空、月のない夜空。こんな夜には、目を閉じて消えてしまいたくなる。Pierrot(1925)Georges Rouaultジョルジュ・ルオー「ピエロ」。ひどく内省的な一枚です。この絵を見て笑う人なんていないでしょう。おどけて躍るピエロだからこそ、その悲しみも人知れず深いのだと思います。ここのところ、また気分が...
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円山応挙「老梅図」と津村節子「紅梅」

老いてなお美しく咲くのは、おのれが散るときを知っているからでしょうか。円山応挙「老梅図」。東本願寺所蔵のこの作品を、装丁に使用した作品が津村節子の「紅梅」です。癌で亡くなった作家・吉村昭との最期の日々を綴った作品で、感情をおさえた文章が、かえって悲しく感じられました。津村節子もまた著名な小説家であり、だからこそ、こういう書き方しかできなかったのでしょうか。「物を書く女は最低の女房だと言われている。...
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サム・フランシス「ブルー・ボールズ」

青の青さにあこがれて、それでも染まりきれぬのが人というものの悲しさなのでしょう。サム・フランシス「ブルー・ボールズ」。青にあこがれた画家が、ここにひとり。Blue Balls(1960)Sam Francisアメリカの画家、サム・フランシスは元アメリカ空軍のパイロットであり、テスト飛行中の事故で脊椎を損傷、治療の一環として水彩画に取り組むようになります。白を基調とした「ホワイト・ペインティング」の連作から大原美術館の「メ...
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岸田劉生「道路と土手と塀」と、斎藤茂吉の一本道

渋谷区代々木の坂道。登りきった先には、どんな景色が見えるのでしょうか。岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」。「ぢかに自然の質量そのものにぶつかつてみたい」という思いで描かれた、道のはしに茂る雑草や赤土の写実的な表現が光る風景画です。Road Cut through a Hill(1915)Kishida Ryusei岸田劉生がこの「道路と土手と塀」を描いたのは、1915年の秋。作品について以下のように語っており、画家自身にとっても重要な...
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クレー「Fire in the Evening」と川端康成「古都」

「じつはな、千重子がクレエの厚い画集を、二冊も三冊もくれたんです。」「クレエ、クレエて……?」「なんでも、抽象の先達みたいな画家やそうでんね。やさしいて、品がようて、夢があると言うんでっしゃろか、日本の老人の心にも通じましてな、尼寺でくりかえし、くりかえしながめてると、こんな図案ができましたんや。日本の古代ぎれとは、まったく離れてますやろ。」「そうでんな。」「どないなもんができるか、いっぺん、大友さ...
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ジョージ・イネス「月明かり、ターポン・スプリングス」

しずむ夕日をはかなむように、月明かりを背にたたずむ女性。ジョージ・イネス「月明かり、ターポン・スプリングス」。いとしめやかに、ひめやかに夜はころもを脱ぎ捨てて、深い情けが満ちていきます。Moonlight, Tarpon Springs(1892)George Innessよく見ると、画面左には焚き火にあたる人影。これもまた、日没によって失われた火を連想させます。落日に心をとらわれて、月明かりに気づかない2人。焚き火はいつしか消えるでしょ...
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ホッパー「日曜日」

誰かを待ってるのかな。タイトルとは裏腹に、なんだかさびしい一枚です。エドワード・ホッパー「日曜日」。国立新美術館「モダン・アート, アメリカン」より。Sunday(1926)Edward Hopperたくさん書いて、消しました。なんだか後ろ向きな内容になってしまったので。今日はダメな感じです。う~む。書いては消して、結局今回はこれだけ(笑)今日も明日もがんばろう。  ...
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ミュシャ「アイリス」

葉にふれし小指の先の紅をのむ恋にあやめのあるはあひなしIris(1898)Alphonse Muchaアルフォンス・ミュシャ「アイリス」。「百合」「バラ」「カーネーション」と合わせて4作品で1組となる装飾パネルのひとつです。府中市美術館の「世紀末、美のかたち」では、この「アイリス」と「百合」が展示されています。花に抱かれて匂い立つような女性の姿が官能的な一枚ですね。ちなみにアイリスは、日本語でアヤメのこと。カキツバタやシ...
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上村松園「待月」

うすきぬのやはらにかかるいまちつきそでぬらさじとつきくさをふみWoman Waiting for the Moon to Rise(1944)Uemura Shoen上村松園「待月」。月の出を待つ、女性の美しい後ろ姿です。今夜は居待月。満月をさかいに月の出はだんだん遅れていき、十六夜(出るのをためらう月)立待月(夕方、立って待っているうちに出る月)居待月(立って待つには時間がかかるので、座って待つ月)寝待月(あまりに出が遅いので、寝ながら待つ月)...
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グリムショー「The Old Hall Under Moonlight」

月を背に夜半のこみちをいざよひぬ欠けたるものを思ひながらにThe Old Hall under Moonlight(1882)John Atkinson Grimshaw今夜は十六夜の月でした。進もうとしてためらうことを「いざよう」と言い、満月よりも1日遅れて、ためらうようにのぼることから「いざよいの月」と呼ぶのだとか。また、望月(満月)を過ぎてのぼることから「既望(きぼう)」という異称もあるそうです。満ちたりた後に何かを失い、進もうにもなかなか進め...
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仙がい「老人六歌仙画賛」

腰はまがって杖をついて、けれどお顔はにこやかで。仙がい「老人六歌仙画賛」。人生の悲哀なんてここにはなく、老後というものがなんだか楽しみに思えてきます。六人のご老人のうえに書かれた狂歌ですが、順に抜き出すと以下のようになります。しわがよる ほくろが出来る 腰が曲がる 頭がはげる ひげ白くなる手は震え 足はよろつく 歯は抜ける 耳は聞こえず 目はうとくなる身に添うは 頭巾 襟巻き 杖 目鏡 たんぽ お...
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モーリス・ドニ「それは敬虔な神秘さだった」(連作「愛」より)

府中市美術館「世紀末、美のかたち」。後半、退廃的でグロテスクな作品が続くなか最後に出会ったのがモーリス・ドニの連作「愛」でした。まさか展示されているとは思わなかったので、それこそ敬虔で神秘的な気持ちになりました。It was a Religious Mystery - Amour 4(1892-99)Maurice Denisモーリス・ドニ「それは敬虔な神秘さだった」。12点の連作「愛(アムール)」の4番目の作品で、窓から差し込む光が2人の女性を美しく照ら...
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川端龍子「草炎」

闇夜にひろがる、金の光。荒川沿いで見上げた10月の打ち上げ花火は、川端龍子の「草炎」のようでした。Flaming Grass(1930)Kawabata Ryushi国立近代美術館所蔵、川端龍子「草炎」(部分)。黒に近い紺地に、色合いの異なる金泥を組み合わせて夏草だけを描いた、実にインパクト大な作品です。夏草の生命力を炎ととらえたのか、夜になってもなお、熱気をはらんだ野草をあらわしたものか。今まさにつるを伸ばし、葉を茂らせ、闇を統...
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ボニントン「ラ・フェルテ」

あの時から較べると、自分もすっかり変わってしまった。そう、あれがすべての始まりだったのだ。もしリディア伯母があの日あのようにして現れて、私が一人でいるのを見つけなかったら、すべてが違っていただろう。別の人生を歩み、もっと幸せな女になっていたかもしれない。彼女は画廊で一枚の小さい絵――きれいで価値の高いボニングトンの風景画――の前に止まり、しばらく見つめていた。(ヘンリー・ジェイムズ「ある婦人の肖像」よ...
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ベラスケス「マルガリータ王女の肖像」

小柄で真面目な乙女が夜会服を着ているところはベラスケスの描くスペイン王女に似ているぐらいで、他に似ているものはないだろう。彼女を昔風のすばらしい人と思っているロウジアには、これで充分だった。彼女の気遣わしそうな眼、魅力的な唇、ほっそりした容姿は、祈っている子どものように人を感動させた。今ロウジアとしては、彼女がどこまで彼を愛してくれているかをぜひ知りたいと思った。(ヘンリー・ジェイムズ「ある婦人の...
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コレッジョ「幼児イエスを礼拝する聖母」

聖母マリアが幼子イエスの前にひざまずき、散乱したわらの上に寝ているわが子をあやしており、赤子は嬉しそうに笑い声をあげている絵である。この情のこまやかな作品にヘンリエッタは感動して、世界一美しい絵だと思っていた。(ヘンリー・ジェイムズ「ある婦人の肖像」より)Adoration of the Child(c.1526)Antonio da Correggio今回から3回にわけて、「ある婦人の肖像」にまつわる絵画を紹介していきたいと思います。ヘンリー...
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磯江毅「深い眠り」

浮かんでいるのか沈んでいるのか、どちらともつかぬ無重力のような空間。右上にはかすかに、月のような円形が見て取れます。重力はおろか、温度や湿度や、匂いや音や時間までも排除した深い静寂と孤高の世界。マドリード・リアリズムの異才、磯江毅の「深い眠り」という作品です。Deep Slumber(1994-95)Isoe Tsuyoshi今日は練馬区立美術館の「磯江毅=グスタボ・イソエ」を見てきました。行かなきゃ行かなきゃ、と思いつつ、気が...
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モネ「窓に立つカミーユ・モネ」

手前には、いろとりどりの花々。その向こうにたたずむのは、モネの妻、カミーユ。クロード・モネ「窓に立つカミーユ・モネ」。この構図は、モデルへの深い愛情がなければ成立しないと思うのです。Camille Monet at the Window(1873)Claude MonetWhen I first held you I was cold.A melting snowman I was told.But there was no-one there to hold beforeI swore that I would be alone forever more.Wow, look at you now, flo...
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「オシアンの夢」、アングルとゲーテと手塚治虫

竪琴にもたれ、疲れて眠る老詩人。頭上の雲のうえに描かれる裸婦や兵士、神々の彫刻は彼が見ている夢をあらわします。ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル「オシアンの夢」。さまざまな彫刻は、老詩人が懐かしむ過去の栄光なのでしょうか。Ossian's Dream(1813-35)Jean-Auguste Dominique Ingres目が覚めればはかなく消える夢ですが、眠りのその瞬間においては確かな輪郭と手応えがあり、ときにはその世界に浸りたいと願う...
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