
レンブラント「老婦人の肖像」
前回に引き続き、国立新美術館の「大エルミタージュ美術館展」より。レンブラント・ファン・レイン「老婦人の肖像」です。 Portrait of an Old Woman(1654) Rembrandt Harmensz. van Rijn伏し目がちの老婦人。静謐とか諦念とか、そんな単語が思い浮かぶ作品です。目線は左下に向いており、鑑賞者と(あるいは画家と)目を合わせるのを拒んでいるかのよう。重ねた手の甲には粗く絵の具が重ねられており、人生の悲哀を感じさせま...

レノルズ「ウェヌスの帯を解くクピド」
連休初日は、六本木方面へ。まずは国立新美術館の「大エルミタージュ展」へ行ってきました。16世紀ルネサンスから20世紀のフォービズム・キュビズムまでロシアが誇る世界有数のコレクションから、各時代の顔ともいえる名作が集結しています。まずはこちら、チラシやポスターでもおなじみの作品、ジョシュア・レノルズ「ウェヌスの帯を解くクピド」です。 Cupid Untying the Zone of Venus(1788) Sir Joshua Reynolds妖艶なポー...

ルオー「キリスト」と遠藤周作「イエスの生涯」
ジョルジュ・ルオー「キリスト」。信仰心の有無にかかわらず、切々と胸に響いてくるものがあります。目を閉じて、顔を傾けて、ただただ祈る。Christ(1937-38)Georges Rouault右下には聖地をあらわす赤い建物があり、それと呼応するかのように、キリストの頭上にも赤い光が浮かんでいます。そして、ルオーの作品を象徴する深い青。慈愛の青なのか、悲しみの青なのか……。この作品は、版画作品「辱められるキリスト」のうえに色を加...

ルオー「ブルターニュの風景」
先日、シダネル展のあとに向かったのがパナソニック汐留ミュージアム。この美術館はなんとジョルジュ・ルオーの作品を230点も所蔵しており、世界で唯一のルオー美術館なのだそうです。 Paysage de Bretagne(1915) Georges Rouaultこちらは「ブルターニュの風景」。1915年、40代のときの作品です。灰色の空のしたに広がる海は、深い青。赤褐色の大地、緑色の丘、立ち並ぶ家々。画面全体に靄がかかったような、どことなくノスタ...

モネ「アンティーブの朝」
目が覚めたら少しさびしい気持ちであいさつをして、まどろみのなかで思い出と遊んで、ベッドから出たら大好きなグラスでオレンジジュースを飲む。単純なもので、それだけで幸せな気持ちに満たされて今日もがんばろうと思えます。そんな朝を繰り返しています。 Antibes in the Morning(1888) Claude Monet雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く朝風は人のやうに私の五体をめざ...

シダネル「離れ屋(ジェルブロワ)」
損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「アンリ・ル・シダネル展」。キャッチコピーは「薔薇と光の画家」でした。ということでこの1枚。「離れ屋(ジェルブロワ)」です。 Pavilion, Gerberoy(1927) Henri Le Sidaner夜。離れ屋には灯りがともり、窓からオレンジ色の光が洩れ出しています。ピンク色の薔薇が庭園に咲き群がり、むせ返るほどの香気が夜の闇に溶け込んでいくようで。額縁のなかから香りが漂ってきそうな、そんな幻...

シダネル「夕暮れの小卓」
今日は曇天のなか、損保ジャパン東郷青児美術館へ。アンリ・ル・シダネル展を見てきました。シダネルは19世紀末から20世紀前半にかけて、新印象派風の点描作品を多く描いたフランスの画家。それでは、まずはこちらを。 Small Table in Evening Dusk(1921) Henri Le Sidanerアンリ・ル・シダネル「夕暮れの小卓」。水路に面したテラス、人のいないテーブル。恋人たちが語らい合っていたのでしょうか。右側の椅子が少しテーブル...

エルンスト「自由の称賛」
暗い森。かごの中の、白い鳥。でもよく見ると、鳥はかごの外にいるんですよね。マックス・エルンスト「自由の称賛」。横浜美術館のエルンスト展より。 In Praise of Freedom(c.1926) Max Ernst自由を与えられているのに、そこに留まり続けるのは悲しいことなんだろうか。そういう形の幸せもあると、ぼくは思うんだけどなぁ。今日も明日もがんばろう。 ...

エルンスト「最後の森」
先日、横浜美術館へ行ってまいりました。お目当てはエルンスト。「マックス・エルンスト フィギュア×スケープ」という展覧会をやっておりまして。The Last Forest(1960)Max Ernstこちらはエルンストの「最後の森」。どこかで見たことあると思ったら、昨年のシュルレアリスム展(国立新美術館)でも展示されてましたね。エルンストがたびたび描いてきた森というテーマ。植物というよりは鉱物のような青黒い森が画面いっぱいに広...

シャガール「ユリの下の恋人たち」
上半分には白いユリと、赤い芍薬の花束。下半分には見つめ合い、抱き合う恋人たち。シャガールにしてはずいぶん直接的な表現ですが、これはこれでとても素敵な一枚です。マルク・シャガール「ユリの下の恋人たち」。大好きな花が、このなかに描かれてます。 Lovers under Lilies(1925) Marc Chagall最近仕事が落ち着いてきたせいかいろんなことに興味がむくむくわいていて、花のことや音楽のことや、詩や和歌や……あぁ、もっと...

「宮沢賢治展」に行ってきました
ヒドリノトキハナミダヲナガシサムサノナツハオロオロアルキミンナニデクノボートヨバレホメラレモセズクニモサレズサウイフモノニワタシハナリタイ(宮沢賢治「雨ニモマケズ」より)昨日は久々に横浜へ。そごう美術館の宮沢賢治展を見てきました。「宮沢賢治・詩と絵の宇宙 雨ニモマケズの心」。賢治が描いた水彩画や自筆のメモ、関連資料のほか、高村光太郎の書や棟方志功の版画、さらに絵本などの挿絵原画約250点と見応えたっ...

カナレット「カナル・グランデのレガッタ」
水の都ヴェネツィア。音楽の街ヴェネツィア。18世紀、この街を描いた風景画家がカナレットです。 A Regatta on the Grand Canal(c.1740) Canalettoこちらはカナレットの「カナル・グランデのレガッタ」。運河で競漕をするゴンドラが描かれており、それを見物する人々はカーニバルの格好をしています。今にも人々の歓声が、熱気が伝わってきそうな一枚。カーニバルの風習は今も残っていて、人々は中世ヴェネツィアの衣装に身を...

セザンヌ「首吊りの家、オーヴェル=シュル=オワーズ」
明るい絵も描いてたんだなって、なぜだかほっとしました。 The House of the Hanged Man, in Auvers-sur-Oise(1873) Paul Cézanne国立新美術館のセザンヌ展より、セザンヌ「首吊りの家、オーヴェル=シュル=オワーズ」。第1回印象派展に出品された風景画です。この時期、セザンヌはピサロとともに戸外制作を行っていたそうです。気難し屋で人付き合いの苦手なセザンヌも、ピサロには心を開いたんですねぇ。ピサロはとか...

セザンヌ 「青い花瓶」
先週行ってきた国立新美術館の「セザンヌ展」、一番好きになった絵が、「青い花瓶」でした。 The Blue Vase(1889-90) Paul Cézanne決して鮮やかではないし、生き生きとしているわけでもないし、どこか物憂げな佇まいなんだけど……花瓶の青がものすごく素敵に感じられて、妙に心惹かれてしまって。実はセザンヌの色使いや構図ってあまり好きではなかったんだけど、この作品は一目で好きになってしまいました。内に秘めた美...

「アイルワースのモナ・リザ」
どこかで見たようなこの女性。元の作品よりも、若くてきれいで魅力的な気もするけれど……。 Isleworth Mona Lisa(16c) Leonard da VinciBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」の見所のひとつが、ずらっと並んだ「モナ・リザ」のレプリカ。なかでも印象的だったのが、この「アイルワースのモナ・リザ」でした。元の作品の怪しげな雰囲気を取り払って、文句なしに美しい女性像です。両脇の...

レオナルド・ダ・ヴィンチ「ほつれ髪の女」
伏し目がちに、うつむきがちに、彼女は何を思っているんだろう。 Head of a woman with tousled hair(1506-08) Leonardo da Vinciレオナルド・ダ・ヴィンチ「ほつれ髪の女」。先日、Bunkamura ザ・ミュージアムの「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」で見てきました。代表作「モナ・リザ」と同時期に制作されたという小品で、写実的に描かれた優しげな表情に対し、髪の毛は驚くほど無造作に、簡略化されています。それがか...

ロバート・ハインデル「Dance of Passion」
昨日は郷さくら美術館 東京のあと、渋谷に移動してBunkamuraへ。「ロバート・ハインデル展」と「ダ・ヴィンチ展」を見てきました。まずは、ロバート・ハインデルから。 Dance of Passion(1982) Robert Heindelこちらは「Dance of Passion」。今回の展覧会は画集「人間賛歌 A Celebration of Humanity」の出版を記念してのもので、その表紙にこの作品が使われています。灰色の空間で踊る男女、男の上半身は背景に溶け込み、その...

郷さくら美術館 東京に行ってきました
昨日おそくまで飲んでたせいで、今日は気がついたら昼すぎに。あわてて中目黒の「郷さくら美術館 東京」に行ってきました。先月末にオープンしたばかりの、できたてほやほやの美術館です。中目黒駅から徒歩5分くらい、目黒川の別所橋をわたってすぐのところ。さすがに今日は駅も川沿いも花見客で大混雑だったんですが、一歩道をはずれれば、不思議なほどの静けさ。美術館内も人はまばらで、のんびり鑑賞できました。桜をあしらった...

ターナー「湖に広がるたそがれ」とSigur Rós
赤く焼けた世界。空と湖が溶け合って、かすかに残る境界線に太陽が落ちて行きます。ターナー「湖に広がるたそがれ」。混沌のなかの静けさ、美しさ。 Sun Setting over a Lake(1840) Joseph Mallord William TurnerSigur Rósの新曲「Ekki múkk」のPVを見たとき、連想したのがターナーの抽象画寄りの作品でした。炎のなかに身を置いたような不思議な光景。水平線の上を船が浮遊するだけといういたってシンプルな映像な...

松岡映丘「春光春衣」
嵐が去って、一転今日は春めいた一日でした。外を歩けばあちこちで桜が咲いていて吹く風もきらきらと、これまさに風光るですね。なんとものどかな春の一日。海外ではどうなんだろう。春を感じられる場所だといいのになぁと思いながら。 Court Ladies in Spring Clothing, in the Spring Sunlight(1917) Matsuoka Eikyuこちらは松岡映丘の「春光春衣」。春爛漫の艶やかな一枚です。「藤原時代の貴女が、泉殿に端居して春花を賞...

モネ「エトルタの荒波」
荒れる海。クロード・モネ「エトルタの荒波」。エトルタというとクールベの「波」を連想するけど、こちらも負けず劣らず激しいですね。 Rough Weather at Étretat (1883) Claude Monet今日はこんな感じの、まさに春の嵐でした。みなさん、ご無事だったでしょうか?うちの会社は早々に帰宅命令が出まして、4時前には無事に帰宅いたしました。今もまだ雨風が激しくて竜巻警報が出てるらしく……桜が散らなければいいのだけれど...

クールベ「パラバスの海岸」(伊豆・下田旅行記)
砂浜の巌のうえに立ち、海に向かって手をふる男。ギュスターヴ・クールベ「パラバスの海岸」。水平線の向こうに、何を見ているんでしょうか。 The Beach at Palavas(1854) Gustave Courbetということで、海を見てきました。伊豆・下田まで、会社の同僚たちと温泉旅行に行ってきまして。着いてみたら暴風雨でいきなり傘が破壊されるというハプニングがあり、海鮮丼をかき込んでそのままタクシーでホテルへ直行。温泉に浸かって...
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