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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

酒井抱一「月に秋草図屏風」

月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身一つの秋にはあらねど(「古今集」秋上・193、大江千里) Autumn Flowers and Moon Sakai Hoitsu本日の一枚は、酒井抱一「月に秋草図屏風」。屏風を分断するように葛の葉が伸び上がり、薄などの秋草が重なります。そして、冴え冴えと浮かぶ蒼白い月。銀泥が変色したものらしく、群青の花々と呼応してえも言われぬ神秘的な雰囲気をたたえています。まだ秋というには暑すぎるくらいだけど、...
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ルーベンス「キリスト昇架」「キリスト降架」とフランダースの犬

「十字架にかけられるキリスト」と「十字架からおろされるキリスト」とこの二つの栄ある作品の観覧料として協会がとりたてる銀貨を儲けることはふたりにとっては大伽藍の尖塔の高さをはかると同様、手の届かぬことであった。銅貨一枚の金さえも余分にはなかったのだから、ストーブにくべるわずかの薪と、肉汁の代金をかせぐのがせいぜいであった。そうはいっても、あのおおいのかかった二枚の絵のすばらしさを見たいという、やむに...
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円山応挙「藤花図屏風」(応挙の藤花図と近世の屏風より)

最終日の閉館1時間前、ギリギリ滑り込みで根津美術館の「応挙の藤花図と近世の屏風」を見てきました。重要文化財にも指定されている円山応挙「藤花図屏風」とは、一昨年の三井記念美術館での応挙展以来のご対面。金地に描かれた2本の藤の美しさに、ひたすら心奪われるひとときでした。 Wisteria(1776) Maruyama Okyo円山応挙「藤花図屏風」(右隻)。輪郭線を描かず、刷毛による「付立て」という技法で一息に描かれた自由で伸...
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内田麟太郎・いせひでこ「はくちょう」

「はくちょう」という絵本を読みました。文:内田麟太郎、絵:いせひでこ。「はくちょう」に恋をしてしまった、「いけ」の物語です。はくちょう (講談社の創作絵本)(2003/07/26)内田 麟太郎、いせ ひでこ 他商品詳細を見るきつねに羽を傷つけられて、仲間と一緒に飛び立てなかった一羽の「はくちょう」。傷を癒すために、湖よりもあたたかい「いけ」で体を休めます。「いけ」はそんな「はくちょう」に恋をしてしまうのですが、声を...
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ロセッティ「最愛の人」

There is none like her, none.Nor will be when our summers have deceased.(テニスン「モード」より) The Beloved(1865-66) Dante Gabriel Rossetti1年前の今日。たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさんの幸せとたくさんの悲しみがやって来ました。これ以上はないというくらいに人を好きになって、その気持ちがずっと続いてほしいと願いました。やっぱり苦しいです。会いたい。声が聞きたい。あなたに触れたい。抱きし...
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川瀬巴水「平河門」

ここ1週間で大量に本を買い込んでしまい、さすがに買いすぎたかなーと反省しつつ……。でも、何を買おうか迷うのも楽しければ、買った本のなかからどれを読もうか迷うのも楽しいわけです。ということで、奮発して買ってしまった川瀬巴水の木版画集から。「平河門」という作品です。 Hirakawa Gate(1930) Kawase Hasui1926年から1930年にかけて制作された「東京二十景」のなかの一点。震災から復興途上の東京各地を写生し、版画と...
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小倉遊亀「首夏」と真島昌利「ジャラマドーラ」

クレヨンで野草を写生する2人の少女。小倉遊亀「首夏」という作品です。口を半開きにして、無心に絵を描く姿を見ていると何だかほっこりしつつ、自分の少年時代を思い出します。小学生は、そろそろ夏休みも終盤かぁ。みんな宿題に追われているころでしょうか(笑) Early Summer(1928) Ogura Yuki話は変わって……。小学生・夏ということで昨日Youtubeで素敵な曲を見つけまして。真島昌利の「ジャラマドーラ」という、ファン垂涎...
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ロバート・ヒューズ「真夏の夜」

灯りを手にした小さな妖精たちは、まるで蛍のように夜の森を照らし出します。ロバート・ヒューズ「真夏の夜」。美しく儚い、まぼろしのひととき。 Midsummer Eve(1908) Edward Robert Hughesそういえば、蛍の季節もとうに過ぎてしまったんだなぁ。最後に蛍を見たのは、小学校の低学年くらいのときだったろうか。昼間とは違った顔をした夕べの川で、ゆるやかに流れるように、蛍の光がまたたいていたのを覚えています。熱を帯び...
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レーピン「浅瀬を渡る船曵き」(レーピン展より)

せっかくBunkamuraのレーピン展に行ってきたのに、この作品を紹介するのをすっかり忘れていました。イリヤ・レーピン「浅瀬を渡る船曵き」。代表作「ヴォルガの船曵き」の制作過程で描かれた重要作品です。 Barge Haulers Crossing a Ford(1872) Ilya Repinレーピンは代表作「ヴォルガの船曵き」を描くにあたり1870年夏の3ヶ月をヴォルガ河畔で過ごし、労働者階級の最底辺の人々と身近に接したといいます。「ロシアの農夫をあ...
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メアリー・カサット「母と子」とテニスン「やさしく しずかに」

愛おしげに顔を寄せ合う母と子。子どもは小さな手を伸ばして母につかまり、母はやさしくその背を抱いています。メアリー・カサット「母と子」。彼女の作品にはこうした母子を描いたものが多く、こういう表現はやっぱり女性画家ならでは……と思ったら、実は生涯独身で子どもを授かることもなかったそうです。 Mother and Child(1880) Mary Cassatt昨日テニスンの詩集を読み終えたんですが、そこに収録されていた子守唄がとても気...
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映画「ミッドナイト・イン・パリ」

実は今日はお休みをいただきまして。東京都美術館と国立西洋美術館が月曜なのに臨時開館ということで、ここを逃したら次はない! とばかりにフェルメールをはしごしてきました。どちらも2度目なので、駆け足でまわりつつ見たい作品だけじっくりと。そのために休んだようなものなので、大満足でございました♪そんでそのあと、有楽町に移動して映画館へ。コッポラ監督の「ヴァージニア」とウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン...
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ホイッスラー「青と金のノクターン、オールド・バタシー橋」

夜のテムズ川。橋の下には一艘の小舟が浮かび、まるで浮世絵のような構図です。夜空は深い青に満たされて、建物の影と灯りでかろうじて水辺との境目が分かるくらい。。右上にはきらきらと光彩が浮かび、流れ星が尾をひいて消えて行きます。ジェームズ=アボット=マクニール・ホイッスラーの「青と金のノクターン、オールド・バタシー橋」。夜想曲(ノクターン)と呼ぶにふさわしい、幻想的な一枚です。 Nocturne in Blue and Gol...
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マージョリー・フィリップス「ナイト・ゲーム」

ピッチャー振りかぶって……投げた!そんな瞬間を描いた作品がこちら、マージョリー・フィリップス「ナイト・ゲーム」。昨年国立新美術館で開催された「モダン・アート、アメリカン 珠玉のフィリップス・コレクション」で展示されていた作品です。それにしても、ベースボールを描いた絵画ってあんまり思い浮かびませんね。大衆的すぎて、絵画のテーマには取り上げにくかったのかな。 Night Baseball(1951) Marjorie Phillipsそ...
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レーピン「ゴーゴリの『自殺』」(レーピン展より)

暖炉の炎に照らし出された顔は醜くゆがみ、かっと見開かれた瞳は中空をさまよっています。左手に抱えた原稿は、小説「死せる魂」の第2部。ロシアの文豪ゴーゴリの狂気を描いたイリヤ・レーピン「ゴーゴリの『自殺』」。Bunkamuraのレーピン展で、一番怖いと感じたのがこの作品でした。個人的には「皇女ソフィヤ」よりこっちの方がよっぽど怖かった。 “Suicide” of Nikolai V. Gogol(1909) Ilya Repinゴーゴリといえばロシアを...
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レーピン「皇女ソフィヤ」(レーピン展より)

訳も分からず土下座して謝罪してしまいそうな、圧倒的な威圧感の女性。左側には影に隠れて息を殺しているような従者がいて、さらに窓の向こうには……吊るされた死体!!どこにもぶつけようのない怒りがこの部屋中に充満しているようです。イリヤ・レーピン「皇女ソフィヤ」。レーピンがはじめてロシア史を描いた記念すべき作品であり、中野京子さんの「怖い絵」シリーズでもおなじみの一枚です。 Princess Sofya(1879) Ilya Rep...
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レーピン「休息 —妻ヴェーラ・レーピナの肖像」(レーピン展より)

今日は渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムへ。「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」を見てきました。ロシアが誇る19世紀絵画の巨匠、イリヤ・レーピンの作品が約80点。日本初の本格的回顧展ということで、期待に胸が高鳴ります。 “A Rest” Portrait of Vera A. Repina, Wife of the Painter(1882) Ilya Repinこちらはイリヤ・レーピン「休息 —妻ヴェーラ・レーピナの肖像」。肘掛け椅子にもたれてまどろむ妻の姿が描かれ...
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デュルメル「青のハーモニー」

今夜の満月、見ましたでしょうか?今月は1ヶ月の間に2回満月がのぼるという珍しい月で、1回目の今日はファーストムーン、2回目(今月末)をブルームーンと言って、ブルームーンを見ると幸せになれるんですって。間違えて今日願い事をしてしまったんですが……月末を楽しみに待ちたいと思います。 Harmony in Blue —Variation of Moonlight Sonata(c.1906) Lucien Lévy Dhurmerこちらはリュシアン・レヴィ=デュルメル「青のハー...
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鏑木清方「遊女」(上村松園と鏑木清方展より)

このしどけない雰囲気。遠くを見やる切れ長の瞳には、何がうつっているんでしょう。惚れた男との秘め事を思い出しているのか、とらわれの身を嘆いて、娑婆に出る日を夢見ているのか。鏑木清方「遊女」。艶やかだけど、なんだか寂しい気持ちになる一枚です。 A Prostitute(1918) Kaburaki Kiyokata西の松園、東の清方といいますが、男性の自分が清方のほうに惹かれるのは、やっぱりそこにエロティシズムが見え隠れするからなの...
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上村松園「夕暮」(上村松園と鏑木清方より)

夕暮れ時。障子をあけて外の光をたよりに針に糸を通す。上村松園が描いた市井の美しい女性像「夕暮」は、幼い頃の母の姿をモチーフにして描かれたのだそうです。「徳川期の美女に託して描いた母への追慕の率直な表現であり、私の幼児の情緒への回顧でもあります」と、松園は手記のなかで作品について語っています。 Twilight(1941) Uemura Shoenなんということはない、当時はありふれた光景だったのでしょう。しかし入日の赤い...
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