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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

2013年注目の展覧会(年末の挨拶にかえて)

2012年も残すところあとわずか。せっかく「美術館」と名乗るブログですので本年最後の更新も展覧会ネタで行きたいと思います。当初は2012年の展覧会ベスト5などやろうかと思ってたんですが、やっぱり気になるのは来年のことなんですよね。すばらしい展覧会が目白押しで、鼻血が出そうな勢いです。たとえば来年は「日本におけるイタリア年」にあたり、イタリア大使館などの協力のもとラファエロ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチとい...
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山下清「東海道五十三次」(山下清展より)

皇居前広場から、京都・三条大橋まで。出発点・終点を含めて計55点のペン画は山下清の「何か大作を残したい」という思いから描かれたものでした。放浪の画家ならではの題材にして、先達の浮世絵師も驚くであろう細密世界。山下清、最後の大作「東海道五十三次」(版画)が日本橋三越の「山下清展」で展示されています。 Seikenji /Temple(Okitsu) Yamashita Kiyoshiこちらは山下清「東海道五十三次」の18番「清見寺(興津)」...
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山下清「ロンドンのタワーブリッジ」(山下清展より)

2012年の展覧会納めは、日本橋三越の「山下清展」にしました。生誕90周年を記念したもので、放浪の天才画家による約180点の作品が一堂に会する回顧展。代表作「長岡の花火」のような貼絵をはじめ鉛筆画、ペン画、水彩、油彩、陶磁器の絵付けなど少年時から晩年までの幅広い作品を俯瞰することができます。 Tower Bridge, London(1965) Yamashita Kiyoshiこちらは「ロンドンのタワーブリッジ」。1961年のヨーロッパ訪問の思い出...
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白隠「南無地獄大菩薩」とジョン・レノン「イマジン」

白隠は「南無」ではじまる書を多く残していますが、なかでも多いのがこちらの「南無地獄大菩薩」なのだそうです。地獄も極楽も心に映ったものに他ならず、これらは表裏一体であると。 I Entrust Myself to the Great Bodhisattva of Hell Hakuin本作はBunkamura ザ・ミュージアムの「白隠」で展示されていたものですが、この作品に影響を受けたイギリス生まれのミュージシャンがいます。彼の名はジョン・レノン。ビートルズのボ...
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白隠「半身達磨」

さてさて、Bunkamura ザ・ミュージアム「白隠」の感想を。白隠は500年に一人の英傑と讃えられた、臨済宗中興の祖。民衆教化の手段として使われたのが見るからにユニークな禅画の数々。数万点にものぼるといわれるこれら墨蹟のなかから、今回の展覧会では約100点が厳選されています。40カ所から集めたというから、かなりの気合いの入りっぷりですね。それでは今回の目玉のひとつ、達磨さんを。 Daruma Hakuinこちらは白隠「半身達...
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白隠「すたすた坊主」

師走ですね。クリスマスも終わって、もういくつ寝るとなんとやら。年の瀬がすたすたやってくるなぁ。 Suta-suta Bozu Hakuinこちら、白隠の禅画「すたすた坊主」。右手に笹、左手に桶を持った半裸の坊主がすたすたしてます。この力の抜けっぷり。ゆるいですねぇ。白隠の禅画は絵と言葉(賛)が一体となっており、賛を読んではじめて理解ができるというものです。「すたすた坊主」にはなんて書いてあるのでしょうか。左:来た来た...
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マティス「情熱の恋心」

メリークリスマス! でした。 Coeur d'amour épris(1949) Henri Matisseめずらしくワイン飲んでます。グラスに赤ワインを注いで斜め上から見ると、ハートに見えるな。なんて思ったりして。皆様にとって、すてきな一夜でありますように。……もう遅いか。今日も明日もがんばろう。  ...
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シャガール「ダフニスとクロエー」

エーゲ海のレスボス島を舞台とした古代ギリシアの恋物語「ダフニスとクロエー」。2世紀末から3世紀はじめごろのロンゴスの作とされており、主人公は山羊飼いの少年ダフニスと羊飼いの少女クロエー。ともに捨て子であり、恋の何たるかも知らぬ2人が心を通わせ、胸の高鳴りにおののき戸惑い、運命の荒波に翻弄されていく……この牧歌的な物語を、マルク・シャガールが版画にしています。 Daphnis and Chloe(1961) Marc Chagallシャ...
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シャガール、イヴェット「サーカス1」(シャガールのタピスリー展より)

渋谷区松濤美術館へ、「シャガールのタピスリー展」を見てきました。タピスリーはタペストリーとも呼ばれる、25色の糸からなる織物のこと。マルク・シャガールとイヴェット・コキール=プランス二つの才能が織りなすシンフォニー。油彩や水彩とはまた違った、織物ならではの暖かさ柔らかさに浸る至福のひとときでした。 Circus 1(1970) Marc Chagall, Yvette Cauquil-Princeこちらはタピスリー「サーカス1」。シャガールの「赤...
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川瀬巴水「平泉金色堂」(夕暮れ巴水より)

ふみしめてあるけばあなうらがつめたいでも、じっとしたをみてきしきしゆきふみしめてあるくかぎりのあるみちはいつかきっとおわるそう、こころにねんじてきしきしゆきふみしめてあるく(画 川瀬巴水、詩・文 林望「夕暮れ巴水」より) Hall of the Golden Hue, Hiraizumi(1957) Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水「平泉金色堂」。抒情漂う新版画で一世を風靡した大正・昭和の浮世絵師、川瀬巴水の絶筆となる作品です。降り積もる...
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セルジオ・ロペス「デラ・リーズ」

美しいものを3つ挙げよと言われたら、そのうち2つは「女性」と「花」と答えるだろうな。ちょっとキザな感じだけど、それ以上の答えはないでしょう。 Della Reese Sergio Lopezセルジオ・ロペス「デラ・リーズ」。北カリフォルニアの画家が描くのは、蝶のように羽毛のように咲きこぼれる青い薔薇とそのかぐわしい香につつまれた女性の裸身。あふれんばかりの退廃的な美しさです。腕を上げて、片足を少し曲げて身をくねらせるポー...
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ビアズリー「舞姫の褒美」とワイルド「サロメ」

あゝ! どうしてお前はあたしを見なかつたのだい、ヨカナーン?一目でいゝ、あたしを見てくれさへしたら、きつといとしう思うてくれたらうに。さうとも、さうに決まつてゐる、恋の測りがたさにくらべれば、死の測りがたさなど、なにほどのことでもあるまいに。恋だけを、人は一途に想うてをればよいものを。(オスカー・ワイルド「サロメ」より) The Dancer's Reward(1893) Aubrey Beardsley以前ギュスターヴ・モローの作品...
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ラミー2000の4色ボールペン(文房具のお話)

今日はちょっと趣向を変えて、文房具のお話を。昔から文房具が好きでして、といってもあれこれ買うのではなくこれはと気に入ったものを何年も使い続ける、という感じです。で、現在仕事で大活躍してくれているのがこちら。ラミー社の名品、「ラミー2000」です。胴軸は緩やかなカーブを描く樽型。よく見ると木炭の肌合いを思わせる細かなラインが走っていて、接合部も一見しただけでは分からないほど精緻なつくり。シルバーとブラッ...
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ウォーターハウス、3つの「オフィーリア」

これはローズマリー。思い出の花。お願い、ねえ、わたしを忘れないで。(シェイクスピア「ハムレット」より) Ophelia(1889) John William Waterhouse今回もウォーターハウスの作品です。彼はラファエル前派の画家たち同様、シェイクスピアに材を取った作品を多数手がけています。中でも重要な作品が「オフィーリア」。「ハムレット」に登場する悲劇のヒロインで、ウォーターハウスは生涯で3点の「オフィーリア」を描いていま...
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ウォーターハウス「ティスベ(リスナー)」

前回に引き続き、ウォーターハウスによる植物と恋の物語を。タイトルは「ティスベ」。「リスナー」とも呼ばれる作品で、画中では壁に耳を当てる女性が描かれています。彼女(ティスベ)が耳傾けるのは、恋人の愛のささやき。許されぬ恋ゆえに、こうして壁の割れ目を通してしか愛を語り合うことができないのです。 Thisbe(1909) John William Waterhouseウォーターハウスの「ティスベ」は、「ピューラモスとティスベ」というギ...
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ウォーターハウス「アポロンとダフネ」

エロス(キューピッド)が放った金の矢はアポロの胸に、鉛の矢はニンフのダフネの胸に。金の矢は恋慕、鉛の矢は嫌悪。以来アポロンはダフネを恋い慕うようになり、ダフネは……アポロから逃げ回るようになります。 Apollo and Daphne(1908) John William Waterhouseこちらはジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「アポロとダフネ」。ぼくが敬愛する、英国ビクトリア朝の画家の作品です。愛するダフネの肩に手をかけ、アポロンが...
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クレー「Connected to the Stars」

両手を広げて天をあおぐ人々。そのうえには星がきらきらと輝いています。強い光をはなつ無数の星々ですが、それらよりももっと明るく描かれているのは人々の胸の中心なんですね。流れ星を見たときに、人の心はこんなふうに歓び輝くのでしょう。 Connected to the Stars(1923) Paul Kleeふたご座流星群、見えましたか?会社からの帰り道、夜空を見上げたらオリオン座の左肩、ペテルギウスの近くを小さな光がかけていきました。...
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ピカソ「抱擁」

さびしさは恋しさゆえの心模様。その痛みさえ、愛おしくある。 Rendez-vous(1900) Pablo Picassoこのあたら夜の月と花とを未だ見ざりき異土に捧げん。今日も明日もがんばろう。  ...
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須田悦弘「芙蓉」(須田悦弘展より)

それは自然物のイミテーションではあるのだけど木彫りゆえの儚さと空間を統べる力強さが同居していて……本物と見まごうばかりのリアリティで佇むように咲いているのでした。須田悦弘「芙蓉」。千葉市美術館の「須田悦弘展」より。 Fuyoh(2012) Suda Yoshihiroということで、須田悦弘展に行ってまいりました。須田さんは草花のリアルな木彫りで知られる作家で、花びらや葉の一枚一枚まで精緻を極めた、丁寧な造型に驚かされます...
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ルオー「トリオ」(アイ・ラブ・サーカス展より)

子どもの頃のあのサーカス貧苦にやつれた小さな顔の場末の町の貧しい子にはサーカスの光こそは太陽であり、心の夢の故郷だそれとももしかしたら、失われた楽園の反映か(ジョルジュ・ルオー) Trio(1935-40) Georges Rouaultフォーヴ(野獣派)の画家、ジョルジュ・ルオー。苦悩や歓びやあらゆる感情を塗り込めたような厚塗りのキリスト像が印象的な画家ですが、実は彼の作品の3分の1はサーカスをテーマにして描かれているそう...
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「フィンランド・デザイン」を見てきました。

森の滴、湖の小波。時に水のように、時に氷のように美しいフォルムで人々を魅了する北欧の国フィンランドのガラスデザインを、東京ミッドタウンで見ることができます。サントリー美術館「森と湖の国 フィンランド・デザイン」。光と影が交差する、色とりどりのガラスの世界です。20世紀前半から台頭したフィンランドのガラスデザインは、すぐれたデザイナーたちの手によって1950年代から国際的な評価を得て、その使いやすさと美し...
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川瀬巴水「京都 清水寺」(馬込時代の川瀬巴水より)

昨日は「小林清親展」を見たあと、急ぎ足で西馬込まで移動。大田区立郷土博物館の「馬込時代の川瀬巴水」を見てきました。画家本人が一番面白い時代でもあったと評する、円熟期の作品を100点近くも集めた展覧会です。 Kiyomizu Temple, Kyoto(1933) Kawase Hasuiこちらは川瀬巴水「京都 清水寺」。藍色の夜空に星が2つ瞬き、日中は人だかりがしていたであろう清水寺はモノクロームに沈んでいきます。巴水ならではの写実的かつ...
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小林清親「浅草蔵前夏夜」(小林清親展より)

江戸から明治に世がかわると東京の街路には石油ランプやガス燈が灯され、モダンな光が人々の生活を変えていきました。そんな新しい光と影を「光線画」と呼ばれる木版画で表現したのが、明治時代の浮世絵師・小林清親。小平市のガスミュージアムで、彼の作品を紹介する「光の浮世絵師 小林清親展」が開かれています。 A Summer Evening at Asakusa Kuramae (1881) Kobayashi Kiyochikaこちらは小林清親「浅草蔵前夏夜」。夏の...
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雪舟「慧可断臂図」

室町時代に活躍した日本絵画の至宝、雪舟。画聖とも称され、現存する作品のうち6点は国宝に指定されています。そのうちのひとつが「慧可断臂図」。難しい字なのに、「えかだんぴず」で変換一発でした。そのくらい有名な作品ということです(笑) Eka Bringing His Arm to Daruma(1496) Sesshu右側で座禅を組んでいるのは禅宗の始祖・達磨。彼に参禅を請うたのが左にたたずむ僧・慧可なわけですが、願いは聞き入れられず、慧可...
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ハント「カイロ、ゲベル・モカッタムの落日」とWake Owl「Gold」

エジプト・カイロに落ちる陽の光に魅了され、ラファエル前派の画家ウィリアム・ホルマン・ハントは黄金色に染まりゆく景観を水彩で描きました。山並みはピンク色に、建物はオレンジ色に、影は青をはらんで昼間とは違った色彩をたたえています。「カイロ、ゲベル・モカッタムの落日」。乾いた大地をつつむ神秘の光。 Cairo, Sunset on the Gebel Mokattum(1854, 1857 and 1860-61) William Holman Huntこの作品もBunkamura ザ・...
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