足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

伊藤若冲「虎図」と映画「ライフ・オブ・パイ」

剽軽な顔つきで、前足をなめる一頭の虎。伊藤若冲の「虎図」っていう作品なんですが時は江戸時代、本物の虎を見られるわけもなく……「仕方なく中国画を模倣した」みたいな愚痴っぽいことが右上に書かれているそうです(笑) Tiger(1755) Ito Jakuchu「虎図」は京都の青物問屋の長男だった若冲が家業を弟に譲り、隠居生活に入った年の記念すべき作品。このとき若冲は40歳、3年後から動植綵絵に着手し、奇想の作品を次々に描いて...
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ゴッホ「花咲くアーモンドの木」

ゴッホ「花咲くアーモンドの木」。弟のテオに子どもが生まれ、その贈りものとして描かれた作品です。このときゴッホは精神病院で療養中でしたが、家族のための作品ということで気負いがなかったのか、とても穏やかな作品のように感じます。枝の表現にはゴッホ独特のうねりが見え隠れして面白いですね。 Almond Blossom(1890) Vincent van Gogh昨日なんとなく撮った写真がこの作品と似ているような気がしたので。通りすがりにさ...
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小泉淳作「雲龍図」(建長寺の天井画)

鎌倉ぶらり旅、最終回は建長寺です。前から行きたいと思っていたお寺でして、ここには昨年亡くなられた日本画家・小泉淳作の大作があるのですよ。 Dragon on the Ceiling at Kencho-ji's Hatto in Kamakura(2000) Koizumi Junsaku小泉淳作による天井画、「雲龍図」。縦約10m、横約12mという巨大な円形のなかに描かれた龍は螺旋状に身をくねらせて見るものを威嚇しているかのようです。五爪の後足には龍玉をつかみ、雲と雷を身...
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鏑木清方「一葉女史の墓」

糸のような月がかかる夕暮れ時、うら若き乙女が墓にもたれてこちらに視線を投げ掛けています。彼女の名前は美登利といい、遊女になるべく育てられた14歳の少女。鏑木清方の初期の傑作、「一葉女史の墓」。一葉と美登利といえば……「たけくらべ」ですね。 A Tomb of Lady Writer Ichiyo(1902) Kaburaki Kiyokata清方は樋口一葉の作品を愛読しており、「たけくらべ」や「にごりえ」に材をとった作品を多く残しています。この「一...
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葛飾北斎「桜に鷲図」

季節外れではありますが、本日は桜にまつわる一枚を。葛飾北斎「桜に鷲図」。なんというか……ふてぶてしい顔をしている(笑) Eagle and Cherry Blossoms Katsushika Hokusai巌をしっかとつかまえて羽を休める一羽の鷲。美しい桜を見て満足げな表情なのかと思ったらどうやらそういうことでもないらしく、北斎は似たような構図で雪と鷲、紅葉と鷲といった作品を残しており特に鷲の表情、ポーズはほぼ同じのようでして。どれだけ季...
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奥田元宋「松島暮色」

雪はもうやんでしまったのでしょう。波ひとつない海のおもてに白化粧の樹々がうつり、果実のような夕陽が沈んでいきます。樹雪は淡いむらさきを帯び、静かな静かな風景が暮色に染まる——。日本三景のひとつ、松島を描いた奥田元宋の「松島暮色」という作品です。 Matsushima Twilight(1976) Okuda Gensou滅多に雪が降らない松島ですが、偶然この地で雪景色と巡り会った奥田元宋は「一期一会のよろこび」と語り、幻想的な奇跡の...
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フランツ・マルク「戦うフォルム」

動物を描き続けたフランツ・マルクでしたが、最初は丸みを帯びた柔らかい輪郭だったものがやがて鋭角的に幾何学的に、抽象を強めていきます。そして目にうつる動物の姿を、自然の本質を描くだけでは満足できずその背後に広がる隠された世界を描きたいと望むようになります。晩年に描かれたのは、「戯れるフォルム」「陽気なフォルム」「戦うフォルム」「壊れたフォルム」と題された4点の連作。今回はそのうちの一点、「戦うフォル...
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フランツ・マルク「青い馬1」

フランツ・マルクが好きです。ドイツ出身の画家にして、青騎士の中心メンバー。わずか10年という画業のなかで動物に心を寄せ、動物を描き続けた優しい人です。 Blue Horse 1 (1911) Franz Marcこちらはフランツ・マルクの代表作「青い馬1」。眼を閉じて瞑想にふけるような、神秘的な仔馬の姿。頭部の傾きは右下の植物と響き合い、命あるもののつながりがさりげなく表現されているようです。本来あるはずのない色彩の取り合わ...
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ピサロ「昼寝、エラニー」

今日はなんとなく、明るくてあたたかくて、やさしい絵を紹介したくて。そう思ったとき、頭に浮かんだのはモネでもルノワールでもなくて、ピサロなのでした。 La Sieste, Éragny(1899) Camille Pissarroカミーユ・ピサロ「昼寝、エラニー」。昨年、宇都宮美術館のピサロ展で見た作品です。刈入れの途中、積み藁のかげで昼寝をする女性。悲しみも苦しみもなく、描かれているのはただひとときの休息。細かい説明なんて必要なくて...
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スーラの誰もいない「グランド・ジャット島」

前々回、「誰もいない風景」的な絵画を取り上げたのでついでといっては何ですが、こちらの作品を。ん、どこかで見たことがあるような……。分かりますでしょうか?? The Island of La Grande Jatte(1884) Georges-Pierre Seuratジョルジュ・スーラ「グランド・ジャット島」。おなじみ点描法で描かれた避暑地の海岸ですが、あたたかな陽光が降り注ぎいかにも過ごしやすそうなのに、人っ子一人見当たらないのです。この作品が最終...
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クノップフ「沈黙」

前回に引き続き、フェルナン・クノップフの作品を。1890年、最愛の妹が嫁いだ年に描かれた「沈黙」です。モデルは妹のマルグリット。口元に指をあて、沈黙をうながすしぐさは何を意味するのでしょう。 Silence(1890) Fernand Khnopff確かにマルグリットは、彼の求める女性の理想像にかなっていた。それはミューズであり、天使であり、霊感を与える者であり、性的なものの対極にある存在であった。——図録の解説にはこんなふうに...
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クノップフ「フォセにて——樅の木の下で」

ベルギー象徴派の画家、フェルナン・クノップフ。幼時を過ごしたブリュージュの町を描いた「見捨てられた町」があまりにも有名ですがこの作品もまた、深い静けさをたたえた傑作です。 At Fosset. Under the Fir Trees(1894) Fernand Khnopff「フォセにて——樅の木の下で」。クノップフは幼少のころ、夏の間だけブリュージュを離れてベルギー南東部アルデンヌのフォセという村で過ごしていました。目にうつるのは緑灰色の幹ばか...
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ワイエス「遥か彼方に」

 Faraway(1952) Andrew Wyeth灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつてゐるとほい村よあの頃 ぎぼうしゆとすげが暮れやすい花を咲き山羊が啼いて 一日一日 過ぎてゐたやさしい朝でいつぱいであつた——お聞き 春の空の山なみにお前の知らない雲が焼けてゐる 明るく そして消えながらとほい村よ僕はちつともかはらずに待つてゐるあの頃も 今日も あの向うにかうして僕とおなじやうに人はきつと待つてゐるとやがてお前の...
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円空「両面宿儺坐像」(円空展より)

1月12日から上野の東京国立博物館ではじまった「飛騨の円空 ——千光寺とその周辺の足跡」。さっそく日曜に見てまいりました。何かご加護がありますように……と下心を抱きながら(笑) Seated Ryomen Sukuna(17th century) Enkuこちらは円空「両面宿儺坐像(りょうめんすくなざぞう)」。円空仏にしては珍しく光背が彫られていますが、仏様ではなく、日本書紀に登場する飛騨の怪物なんだそうです。伝えられる姿は一つの胴体に対...
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葛飾北斎「富嶽三十六景 礫川雪ノ且」

葛飾北斎「富嶽三十六景」。計46点の連作(評判がよかったため10点追加された)のうち、ただひとつ雪景色を描いたのが「礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)」です。見渡す限り真っ白に染まった江戸の町。茶屋には見物客が集まり、指差す先には富士がそびえています。町の佇まいは変わっても、富士はいつもと変わらぬ悠然たる姿。雪ぐらいで騒ぎなさんなと、そんな声が聞こえてきそうです。 Tea house at Koishikawa. The morni...
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鏑木清方「妖魚」

伊東深水、山川秀峰と続いたので今回は2人の師である鏑木清方を。といっても、美人画は過去に何度も紹介しているので清方作品のなかでも異色といわれる一点を。1920年に発表した「妖魚」です。 A Bewitching Mermaid(1920) Kaburaki Kiyokata海上の岩場に身を横たえる女性。濡れてみだれた黒髪を這わせ、あやしい微笑みを正面に投げかけています。下半身は金の鱗に覆われ、長く伸びたその先は2つに割れて……妖魚、つまり彼女は...
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山川秀峰「婦女四題」

前回に引き続き、大正ロマンな一枚を。深水の「対鏡」とよく似た構図ですが、こちらは楚々とした正統派美人。山川秀峰「婦女四題」より、「赤い襟」という作品です。 Women in Four Settings: Red Neckband(1927) Yamakawa Shuho山川秀峰は伊東深水、寺島紫明とともに鏑木清方に学んだ三羽烏のひとり。彼もまた、美人画を得意とした画家でした。「婦女四題」はその名のとおり、4つの季節・シチュエーションで女性を描いた傑作...
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伊東深水「対鏡」

豊かな黒髪、白き柔肌。赤い着物の襟を抜き、覗いたうなじが艶かしい。嗚呼うつくしき大正ロマン!美人画の名手・伊東深水がこの「対鏡」という作品を手がけたのは18歳のときだというから驚きです。 Looking in the Glass(1916) Ito Shinsui黒、白、赤の色彩が響き合い、そこに淡い唇やかんざしの黄が花を添えています。背景にはバレンの刷り跡を残し、物憂い表情と呼応するかのよう。どこか崩れた女性の姿態を通して、それを...
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ウォーターハウスの「人魚」がついに来日します!

ついに今年、あの絵がやってきます。ぼくが大好きなウォーターハウスの傑作「人魚」!自分のなかでは、昨年のフェルメール「真珠の耳飾りの少女」に匹敵するインパクトなのです。5月14日より東京藝術大学大学美術館にて、しかも展覧会名は「夏目漱石の美術世界展」です!あぁ、なんて素晴らしい……。 Mermaid(1905) John William Waterhouse同展覧会は漱石が作品のなかで言及した日本美術やイギリス美術を通して、文豪のイメー...
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歌川国芳「一ツ家」

正月、初詣といえば絵馬ですがこの絵馬はひと味違います。3.7×2.3mの巨大サイズに加え、描かれた絵柄を見てしまったら……思わず手を合わせて、違った意味で拝んでしまいそう。歌川国芳「一ツ家」、鬼気迫る一枚です。 Votive Picture of a Lonely House(1855) Utagawa Kuniyoshi国芳が描いたのは、台東区花川戸に伝わる鬼女伝説。右手に刃物を持ち、鬼の形相で女性の首をつかむのは「浅茅が原の鬼婆」とも呼ばれる老婆。娘と2人...
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川瀬巴水「築地本願寺の夕」

日比谷線の築地駅を降りてすぐ、異国情緒たっぷりの、古代インド様式の建物がそびえています。およそ80年前に建立されたこの建物、じつは浄土真宗の寺院なんですね。大正・昭和の浮世絵師、川瀬巴水もこのオリエンタルな寺院を版画にしております。作品名は「築地本願寺の夕」。月下、青錆色に染まりゆく伽藍を描いた傑作です。 Evening Moon at Hongan Temple, Tsukiji(1936) Kawase Hasui年始に静岡の親戚(叔父・叔母)が遊...
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竹内栖鳳「艶陽」

今年は巳年、ということで蛇にまつわる一枚を。竹内栖鳳「艶陽」。こんなふうに蛇を愛らしく描けるのは、栖鳳くらいじゃないでしょうかね。先月、姉が入籍したと思ったらその直後に10年来の友人がこれまた入籍しまして、正月休みを利用してそれぞれに結婚祝いを渡してきました。姉夫婦には銀のワインタンブラーを、友人夫婦には天目のぐい呑みを。どちらも相当な酒好きなので、実用性重視にて。ちなみに大酒飲みのことを「うわばみ...
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伊藤若冲「日出鳳凰図」

あけましておめでとうございます。2013年も、皆様にとって素敵な1年になりますように。 Phoenix at Sunrise Ito Jakuchuこちらは伊藤若冲「日出鳳凰図」。真っ赤な旭日を背に鳳凰がおどる、吉祥の一枚です。昨晩は4時ごろまで毎年恒例の麻雀大会で(圧勝!)そのまま眠ってしまい初日の出を見そびれてしまったので、せめてその代わりにと。ちなみに初日の出は見れませんでしたが、最高の“初日の入”を見てきました。実家から車で2...
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2013年に行った展覧会

2012年に行った美術展で、既に展示が終了したものの一覧です。「関連記事」から、該当ブログ記事をご覧いただけます。生誕100年 髙山辰雄・奥田元宋  ―文展から日展へ―  [場  所]  山種美術館 (東京・恵比寿) [会  期]  2012年12月1日〜2013年1月27日 [関連記事]  奥田元宋「松島暮色」...
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