
エミール・クラウス「タチアオイ」
6月から7月ごろに咲く花に、タチアオイというものがあります。はじめてこの花を見たとき、「きれい」ではなく「異様」だと感じました。高さ2mもの茎を取り巻くように、たくさんの花をつける姿が妙にいかめしくて。きれいな花なのに圧迫感がものすごくて。その後、葵(アオイ)を「逢ふ日」と掛けて和歌に詠まれることが多かったことを知り、少しずつ印象が変わっていったわけですが……。Althaeas(1895)Emile Claus東京ステーショ...

エミール・クラウス「昼休み」
3年前、Bunkamuraで開催された「フランダースの光」。ベルギー近代美術の魅力を紹介するというもので、この展覧会で一目惚れした画家がエミール・クラウスでした。日本ではあまりなじみのない名前ゆえ、次に見られるのはいつごろか……と思っていたんですがうれしいことに彼の作品がいま、まとめて来日しているのです。東京ステーションギャラリーの「エミール・クラウスとベルギーの印象派」という展覧会。クラウスを中心に据えた展...

ユトリロ「青い花瓶の花束」
日本橋高島屋のユトリロ展、風景画にまじってこんな静物画も展示されていました。「青い花瓶の花束」という作品です。Bouquet de fleurs dans un vase bleu(1936)Maurice Utrilloユトリロは1920年、37歳ごろから花の静物画を描くようになります。後にユトリロの妻となるリュシー・ヴァロール夫人に贈ったのがその最初で、1935年、夫に先立たれたリュシーと結婚してからはたびたび花の絵を描いてはリュシーに捧げたのだとか。「青...

ユトリロ「パリのサン=セヴラン教会」
ああ、ひなびた一画があり、自由気ままな生活の習慣が残っているあのモンマルトル!他とは異なる、自主独立の雰囲気のあるパリのあの地区には、何と記すべき話が多いことだろう!……もし思いが叶うなら、……石灰塗りの家々の並んだ道の絵か、何かを描きたい。(モーリス・ユトリロ)Eglise Saint-Séverin à Paris(1910-12)Maurice Utrillo前回はユトリロの色彩寄りの話をしましたので、今回は「白の時代」のお話を(順番が逆ですが...

ユトリロ「モンマルトルのキャバレー、ラパン・アジル」
Cabaret du Lapin Agile à Montmartre(1916-18)Maurice Utrillo今日は日本橋高島屋の「ユトリロ展」に行ってきました。こちらはチラシのメインビジュアルにも使われている「モンマルトルのキャバレー、ラパン・アジル」という作品です。制作年は1916年から18年のあいだ。いわゆる「白の時代」から「色彩の時代」へと移行する期間にあたり、漆喰で塗固めた白い壁と褐色の世界に赤や緑の鮮やかな色彩が見て取れます。酒におぼれ、...

アンソール「仮面の中の自画像」
仮面がいっぱい。自分は確かにここにいると主張したいんだけど、たくさんのおかしな声に飲み込まれて手を伸ばしてもむなしく空を切るばかりでこのまま滑稽な無数の顔に沈んでいきそうな気がします。ジェームズ・アンソール「仮面の中の自画像」。押しつぶされそうな一枚です。Self-Portrait with Masks(1899)James Ensor月に一度くらい、どうしても朝起きれないことがあります。目が覚めたということは認識しているんだけど、い...

横山大観「日本心神」
横山大観「日本心神」。堂々たる富士の雄姿を描いた縦121cm、横181cmの大作です。五島美術館で前に見たものですが、墨と金彩のみで表現された霊峰はいかんとも形容しがたくその存在感に圧倒されるばかりでした。Mt. Fuji(1940)Yokoyama Taikanさて、今日は父の日ということで両親と姉夫婦といっしょに食事へ。上野の韻松亭というところに行ってきました。かつて横山大観がオーナーをつとめたこともある、上野公園内にひっそりと...

アルマ・タデマ「銀のお気に入り」
なんだかジメジメした日が続いてますので、カラッと爽やかな作品を。アルマ・タデマの「銀のお気に入り」という作品です。Silver Favorites(1903)Alma Tademaイギリス・ヴィクトリア朝時代の画家アルマ・タデマは古代ローマをあらわした写実的な絵画で人気を博しましたが、この時代のアカデミックな画家のご多分に漏れず彼もまた、いつしか忘れられた存在となり近年になって再評価が進んでいます。国内では富士美術館が作品を所...

出光美術館の「古染付と祥瑞」を見てきました
仕事で非常に嫌なことがありまして、もうやってられない! って感じで出光美術館でリフレッシュしてまいりました。打ち合わせで日比谷にいたので、ちょっと立ち寄りな感じで。『古染付と祥瑞』という焼き物の展覧会。中国明時代末期の景徳鎮窯で焼かれた青花磁器が館内に並んでいました。「古染付」は粗悪ともいえる雑器のことだそうで、茶人たちはそこにかえって面白さを見いだしたのでしょうか。形も絵柄も自由自在で、ゆるく素...

中村大三郎「ピアノ」
先日の土曜、日本橋高島屋で「美の競演 京都画壇と神坂雪佳」を見てきました。同じ展覧会を横浜でも見てるんですが、そのときと微妙に展示内容が変わっておりまして。目当ては日本橋でのみ公開のこの作品。中村大三郎の屏風絵「ピアノ」です。Piano(1926)Nakamura Daizaburou屏風の4分の3をグランドピアノが占めており、けれど重たい印象はまったくなくてピアノの旋律が軽やかに響き渡ってきそう。女性は当時流行したという耳隠...

モネ「揺りかごの中のジャン・モネ」
クロード・モネ「揺りかごの中のジャン・モネ」。カミーユとの間に生まれた第一子を描いた、歓びに満ちた一枚です。このときまだモネとカミーユの結婚はモネ家から認めてもらえず経済的困窮を理由にモネは身重のカミーユをパリに残し、ル・アーヴルの実家や父の別荘があるサン=タドレスで制作を続けていました。長男誕生の知らせを受けて、カミーユの元に駆けつけたモネ。その目に飛び込んできたのは愛おしい幼子の顔。新しい命へ...

谷文晁「秋夜名月図」(ファインバーグ・コレクション)
文化14年の仲秋の良夜、隅田川に遊んだ時、清か(さやか)な月の光が昼日中のようであり、目にした景観はまさしくこのようであった。 (谷文晁)Grasses and MoonTani Buncho仲秋の名月と天に伸びる葦を墨一色で描いた、谷文晁「秋夜名月図」。冒頭の文章のような内容が右上に描かれており、よほど改心の作だったのでしょう、どどんと落款が……でかすぎる(笑)だって満月よりも大きくて、ここ...

鈴木其一「群鶴図屏風」(ファインバーグ・コレクション)
尾形光琳にはじまり、琳派の画家たちが代々受け継いできた金地に青い渦巻き水紋、そして群れなす鶴の構図。酒井抱一の弟子・鈴木其一もこの「群鶴図屏風」を手がけており、江戸東京博物館の「ファインバーグ・コレクション展」で作品を見ることができます。 CranesSuzuki Kiitsu端正なたたずまいですがどこか飄々とした群鶴。流水の表情、いわゆる光琳水の不思議な曲線と金地の輝きを見つめていると平面なんだか立体なんだか分から...

「レオナール・フジタの挿絵本」を見てきました
東京富士美術館で「レオナール・フジタの挿絵本」という展覧会を開催しています。シャガールやモディリアーニと同時期にパリで活躍した日本人画家、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の挿絵本コレクションを紹介するというもの。あわせて同時代のエコール・ド・パリの画家たちの作品も展示されており、これが思いのほか見応えがありました。藤田といえば陶磁器を思わせる冷たく白い裸体が思い浮かびますが、挿絵では実に自由といいま...

カナレット「ヴェネツィア、サンマルコ広場」
八王子の村内美術館から15分ほどてくてくと。勢いよく咲くタチアオイを眺めながら歩いていくと、東京富士美術館にたどり着きます。洋の東西を問わず名品をたくさん所蔵しており、実は意外な穴場だったりします。Piazza San Marco, Venice(1732-33)Canalettoこちらはカナレット「ヴェネツィア、サンマルコ広場」。写実的な細部描写で300年近くも昔の情景が描き出されています。人々の表情まではさすがに見えませんが、晴天に誘わ...

ディアズ「キューピッドとヴィーナス」
前回に引き続き、村内美術館所蔵のディアズの作品を。「キューピッドとヴィーナス」というおなじみの2人ですがとても親密な雰囲気でかわいらしく描かれています。Venus et AmourDiaz De La Penaキューピッドはヴィーナスの耳元で、何を囁いているんだろ。「見て、あそこで誰かがのぞいてるよ」「まぁいやだ!」みたいな感じでしょうか(笑)梅雨入りしたと思いきや、なんだかんだで晴れ間が続いていていい気持ちです。東京は明日も...

ディアズ「マルグリット(ひな菊占い)」
真剣な面持ちで、手元の花を見つめる少女。一枚一枚花びらをむしり、その数で恋を占っているのでしょう。ディアズ・ド・ラ・ペニャ「マルグリット(ひな菊占い)」。マルグリットは英語名でマーガレットのことで花占いに使われる定番の花です。描かれた年代的に椿姫のマルグリットと関係あるのかな?と思ったけど表情が少し幼いので、きっと別物でしょうね。Marguerite(1864)Diaz De La Pena日本では花占いというと「好き、嫌い...

レイトン「音楽のけいこ」
なにか楽器を始めたいなぁと昨年末くらいから思ってたんですが生来の無精ゆえのんべんだらりと日を過ごしマンション住まいだから音を出すのもあれかなぁなんて言い訳しつつ結局今にいたります。Music Lesson(1884)Frederic Leightonこちらはフレデリック・レイトン「音楽のけいこ」。寄り添う2人は母娘でしょうか。母親らしき女性は左手で調弦しており、一緒に音程を確かめているのでしょう。メロディを紡ぐその前の、大事な瞬間...
該当の記事は見つかりませんでした。