
ロバート・ヒューズ「ワルキューレの祈り」
ひさしぶりに、のんびりと静かな夜を過ごしております。The Valkyrie's Vigil(before 1915)Edward Robert Hughesこちらはロバート・ヒューズ「ワルキューレの祈り」。「ヴァルキリーの不寝番」とも呼ばれる作品です。月はしめやかに光をささげ、女神は眠ることなく世界を見下ろしている。誰かを待つように、さびしげな表情で。そして夜は青く、ただただ青く静かです。いつまでもこの時が続きそうな気がするし、いっそ朝が来なく...

アルフォンス・オスベール「月光の夢」
恋しさは おなじ心に あらずとも 今宵の月を 君見ざらめやめがねをかけずに夜の街をぼんやり歩いていたら下弦の月がずいぶんにじんで見えました。前より眼がわるくなったのか、それとも月が遠ざかってしまったのか。そちらでは、月はどんなふうに見えているんだろう。元気でいてくれたらいいなぁと、ただただ思うばかりです。今日も明日もがんばろう。 ...

鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」
空からおちてくる美少女というと「天空の城ラピュタ」のシータなんでしょうけど、今から250年も前に描かれたこの作品もすごいのです。見よ、この躍動感!鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」。傘を頼りにえいやっと、約13mの高台から飛び降りた美女の勇姿です。異色中の異色、奇想そのものではございませんか。春信お得意の少女らしさ・あどけなさを残しつつも、恋よ叶えと意を決し、危険と引き換えに大人の階段を上ろうとする健気...

クラムスコイ「森の子どもたち」
夏の日は原っぱを駆け回り草いきれから逃げて逃げて気がつけば森の中。気分は探検隊で、木漏れ日はオアシスで。そんな一頃を思い出す作品です。ロシアの偉大なる画家、イワン・クラムスコイの「森の子どもたち」。こんな時代が確かにあったなぁ。Children in the forest(1887)Ivan Kramskoyネズミモチはスプーンの実。オシロイバナはチョークの実。朝顔の絞り汁は手品のたねで、シロツメクサは首ちょんぱ。枯れたヒマワリはお化...

ゴッドワード「涼しい隠れ家」
台風の影響で土日はあいにくの雨模様でした。そんなときは家でゴロゴロするに限るぞと。のび太君ばりに一生懸命のんびりいたしました。Cool Retreat(1910)John William Godwardジョン・ウィリアム・ゴッドワード「涼しい隠れ家」。「甘美な無為」に良く似た雰囲気の作品で、大理石の肌合い、衣服の質感は本作でも際立っています。見てるだけで涼しい気持ちになってしまいますね。当時のイギリスは産業革命による激変のまっただな...

ソールベリ「北の花咲く野原」
私たちはよいの明星と初霧を待とう。神さまのしろしめす広い庭で私たちは喜んで咲き、しぼもう。(ヘルマン・ヘッセ「回想」より)Flower Meadow in the North(1905)Harald Sohlbergこちらはハロルド・ソールベリの「北の花咲く野原」という作品です。画面の下半分に広がるのは、真っ白に咲き乱れるヒナギク。地平に浮かぶのは満月……ではなく太陽でしょうか。澄んだ川や赤い家屋をこえて、その光は花々を、あたかも絨毯のように...

カラヴァッジョ「果物籠」
仕事で果物の原稿を書きながら、なんとなくこの作品を思い浮かべていました。カラヴァッジョ「果物籠」。400年以上も前に描かれた、静物画の頂点。Basket of Fruit(c.1599)Michelangelo Merisi da Caravaggioみずみずしく艶めいた果実だけでなく、朽ちた葉や腐りゆく果実までも描かれています。破滅的な人生をおくったカラヴァッジョは、命の輝きだけでなく死の影をも描かずにはいられなかったのでしょうか。画像を見てたらなん...

クチャルスキー「マリー・アントワネットの肖像」
フランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネット。革命によって断頭台の露と消えた悲劇のヒロインとして知られていますがその印象は享楽的、無知、勝手気ままなどなど否定的なものが多いかもしれません。でも実際には、誇り高くウィットに富んだ愛らしい女性でフランス王妃にふさわしい人格と容姿であったそうです。ただしそれは、彼女が王冠を失いかけたころから。夫とともに革命の渦にのまれ、安寧を失うことで彼女は自分の...

イヴ・タンギー「恐れ」
悪意は天たかく積みあがり、丸裸の弱きものを容赦なく指差す、と。イヴ・タンギー「恐れ」。意図は分からずとも、考えさせられる一枚です。Fear(1949)Yves Tanguyシュテファン・ツヴァイクの伝記小説「マリー・アントワネット」を読みまして、翻訳が中野京子氏ということもあって非常に読みやすく感銘をうけてその感想はまた別の機会に書きたいと思うんですが、ふと感じたことは民衆の悪意また悪意嘲笑や怨嗟が一人の人間を追い...
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