モディリアーニ「腕を広げて横たわる裸婦」と「自画像」
会社の同僚が新婚旅行でイタリアに行って来たそうで、
おみやげにイタリア絵画のミニカレンダーをいただきました。
ということで、今回はそのなかから1枚。
アメディオ・モディリアーニの「腕を広げて横たわる裸婦」です。
Nudo Sdraiato(1917)
Amadeo Modigliani
この作品を描いた1917年、モディリアーニは多くの裸婦像を制作しています。
細長い顔、アーモンド型で黒目のない瞳、
憂いに満ちた色使いという独自の作風は既に確立されていましたが、
この「腕を広げて横たわる裸婦」はだいぶ違った印象を与えます。
瞳を閉じていることも影響しているんでしょうか。
同時期の裸婦像にくらべると官能性、
しなやかな肉体美が強調されているような。
縁取られた唇も艶かしく、全体的にぬくもりを感じさせます。
↓は同じくモディリアーニの「背中を見せて横たわる裸婦」。
Nu couche de dos(1917)
Amadeo Modigliani
今年6月、パリで競売にかけられた彼の彫刻が
48億円(!)で落札されて話題になりましたが、
元々モディリアーニは彫刻家を目指しており、
それが絵画作品にも強く影響を及ぼしています。
どの肖像画も、「もし彫刻だったら」とイメージしやすいんですし、
黒目がないのも、元彫刻家だから、と言われれば納得です。
しかし彫刻家としての創作作業は体力的にも厳しく、
何より結核を患っていたモディリアーニにとって
粉塵が肺に与える影響は無視できないものだったわけです。
そういう視点で見ると、やっぱり「腕を広げて横たわる裸婦」は異質です。
「彫刻」としての造形美はあまり感じられず、
女性の肉体の柔らかさ、曲線の美しさをありのままに描いた印象。
新たな作風を試そうとしていたのかな?とも感じられます。
しかしモディリアーニはこの3年後、
結核性髄膜炎によって世を去ります。
享年35歳、早過ぎる死でした。
死の数日前に彼が描いた生涯唯一となる「自画像」は……
残りわずかの人生を思ってか、瞳は黒く塗りつぶされ、
けれど全体的に安らぎに満ちた、柔らかな雰囲気。
死を目前にしてこんな絵を描けるというところに、
芸術家のすごみを感じます。
Self-portrait(1919)
Amedeo Modigliani
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