歌川広重「月二捨八景之内 葉ごしの月」
19世紀はじめ、日本に伝わってきた新しい青。
それはベロ藍と呼ばれる透き通るような青でした。
100年も前にドイツ・ベルリンで発見されたことから名付けられ、
またの名はプルシアンブルー。
当時入手困難だったベロ藍をいち早く取り入れたのが葛飾北斎でしたが、
同じころにこの人も、ベロ藍に注目し独自の世界を生み出しました。
絵師の名は、歌川広重。
彼が用いた青に注目した展覧会「広重ブルー 世界を魅了した青」が、
明治神宮前の太田記念美術館で開催されています。
Falling Leaves and Fullmoon(1830-36)
Utagawa Hiroshige
こちらは歌川広重「月二捨八景之内 葉ごしの月」。
北斎の富嶽三十六景とほぼ同じ、1830年代の作品です。
縦長の画面を分断するように勢いよく流れ落ちる瀑布。
上方には滝壺にむかって枝垂れた樹があり、
色づいた葉ははらはらと、水流に寄せられて落ちていきます。
月はまるく、藍色の夜空に浮かんでいる——。
滝の青と夜空の青と、真っ赤な紅葉が響き合う
躍動的なのに叙情的な一枚です。
広重の作品と言えば「深川州崎十万坪」が大好きで
会社のパソコンの壁紙にしてるくらいなんですが、
本作はそれに負けず劣らず素晴らしい作品だと感じました。
なんといっても涼しげで、風流で。
会場にはこんな感じで、広重の青が並びます。
200年近くを経ても、今なおみずみずしいベロ藍の世界。
会期は5月28日まで。おすすめです。
今日も明日もがんばろう。
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