バルテュス「夢見るテレーズ」
東京都美術館で「バルテュス展」を見てきました。
キャッチコピーは「称賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠」。
それは言い過ぎじゃないかと思うものの、
「20世紀最後の巨匠」と称えたのは、かのパブロ・ピカソだそうで。
さてどんなものだろうと、淡い期待を抱いて見に行ったのでした。
Therese Dreaming(1938)
Balthus
こちらはバルテュス「夢見るテレーズ」。
描かれているのは、まだ年若い少女の無防備な姿。
「性の目覚め」と言われればあぁそうなのかと納得してしまいそうだけど、
挑発的とか扇情的とか、そういう表現がためらわれるような
あどけなさを横顔に浮かべており、
見てはいけないものを見てしまったような
なんだかモヤモヤっとした気持ちになります。
展覧会では少年時代から晩年までの作品を網羅的に紹介していましたが
このような少女を描いた作品が多いのが印象的でした。
大人の女性よりも少女のほうが「手つかずで純粋だから」だそうですが……。
う〜ん、あんまり好きじゃないかな、こういうのは。
スキャンダラスな作品は幾分狙って描いていたようで、そのへんも何だか。
どっちかというと、後年に描いたフレスコ風の風景画や
縦長のカンヴァスに窓とその向こうの景色を描いた作品など
バルテュスならではの少女や猫が描かれていない作品に惹かれました。
それから、制作は必ず自然光の下で行っていたそうで。
人工の照明に制作途中の作品がさらされるのを嫌ったようで、
館内の映像でその模様が流れていたのは興味深かったです。
光に対してさえ、手つかずの純粋なものを望んだということなんでしょうかね。
バルテュス「樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)」
東京都美術館の「バルテュス展」は6月22日まで。
その後、7月5日より京都市美術館に巡回します。
日本人の奥さんが音声ガイドを務めてらっしゃるので、
時間のある方は合わせて聞いてみるといいかもしれません。
今日も明日もがんばろう。
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