足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ジャン・フォートリエ「黒の青」

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アンフォルメル(不定形の意)の先駆者として知られるジャン・フォートリエ。
厚塗りのマチエール、破壊的な表現、前衛的なその作風を紹介する展覧会が、
東京駅の東京ステーションギャラリーで開催されています。


フォートリエ「黒の青」



写実から始まり、アフリカ美術などの影響を受けながら抽象へ向い、
やがて重苦しい黒の時代へ。
第2次大戦中にはゲシュタポに捕まり、逃走後に避難先で「人質」の連作を制作。
ここまでの流れを展覧会で追いかけると、
やはり作品からは陰鬱で近寄りがたいものを感じます。
けれど、晩年には——。
上にあげた「黒の青」ような、明るい色彩の抽象が会場に並んでいました。


ミルクのようななめらかな色彩のなかに、ぽっかりとあいた青。
ルドンが色彩に目覚めたように、
ゴヤが「ボルドーのミルク売りの少女」にたどり着いたように、
フォートリエもまた最後は光を手にしたのかな、と思いました。
会場でこうした晩年の作品に出会ったときは、
それこそ長いトンネルを抜けて青空が広がったような心持ち。
作品一つひとつの意味合いはぼくには理解できなかったし
画家のことも詳しくは知らないけど、
最後に何だかほっとした、そんな展覧会でした。




この展覧会を見に行く前に、
ちょうど読み終えたのが吉田修一の「怒り」という小説でした。
殺人現場に「怒」という血文字を残し、
整形をして逃亡を続ける犯人。
その犯人ではないかと思われる3人の男性を軸に、
それぞれと関わり、疑心暗鬼にとらわれていく弱き人々を描いた物語です。
過去をひた隠しにし、どこか謎めいた男たち。
3人のうち誰が犯人なのかというミステリー要素も含みながら、
作者が伝えたかったのは「信じる」ということなのかな、と。
自分を愛せない人、癒せない傷を抱えた人、世の中に引け目を感じる人が
相手を信じ愛するには、どうすればいいのか。
疑った瞬間に関係性は崩れ始めてしまうけれど、
それでも信じることをあきらめなければ……。
傷つき悲しみながらも、最後には救いが用意されていました。
その余韻が消えぬうちに、フォートリエ展を見に行ったのは正解だったと思います。




今日も明日もがんばろう。
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怒り(上)怒り(上)
(2014/01/24)
吉田 修一

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