足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

小林清親「東京両国百本杭暁之図」

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家を出て椎の若葉に掩われた、黒塀の覆い横網の小路をぬけると、
直ぐあの幅の広い川筋の見渡される、百本杭の河岸へ出るのである。
幼い時から、中学を卒業するまで自分は殆毎日のやうに、あの川を見た。
水と船と橋と砂州と、水の上に生れて水の上に暮らしてゐる
あわただしい人々の生活とを観た。
(芥川龍之介「大川の水」より)


小林清親「東京両国百本杭暁之図」



こちらは小林清親の「東京両国百本杭暁之図」。
両国大川端の大名屋敷の一角から、
川沿いを走る人力車夫を描いた作品です。
明け方の空に太陽がのぼりはじめる、その表現もすばらしく
斬新な構図と色使いとが印象的な一枚です。


この作品は、清親の初期を代表する連作「東京名所図」のひとつ。
その後ポンチ絵や歴史画、静物画なども描いた清親ですが、
やはりこの時期の風景画こそ清親の真骨頂といえます。
江戸から明治へ、否応なく移り変わる人の世。
瓦斯灯や蒸気機関車、そして本作に描かれているような人力車など
新しいものへの憧れや歓びと、失われるものへの哀愁とが混在する。
行き先の見えない頼りない世の中だったからなのか、
迷子の子どもが途方に暮れているような、
そんな気配を作品から感じてしまうことがあります。



昨日、昼休憩のときに神保町を歩いていたら
古本屋の棚にこの「東京名所図」の原寸大画集が置いてあるのが目に入り
ボーナスで自分にご褒美ということで思わず購入してしまいました。
あとで重さをはかったら、なんと8kg。
ひいひい言いながら雨に濡れないように持ち帰り、
うっとりしながら眺めています。
当時の最新の風物を描いた作品は、時を経てノスタルジックに響いてくる。
その不思議に思いを巡らせながら、
しばし明治の情景を逍遥したいと思います。

東京名所図
「東京名所図」。天地50cm以上あります。


東京名所図を開いたところ
中はこんな感じ。原寸で一枚一枚ていねいに貼付けられています(当然複製です)。




今日も明日もがんばろう。
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