ヴァロットン「アンティミテ」
ナビ派のメンバーとして活動していたこともあって
ヴァロットンの作品は色彩感覚もすばらしいんですが、
三菱一号館の「ヴァロットン展」では、
彼のもうひとつの魅力に触れることができます。
それは色彩の対極にある、モノクロームの世界です。
Lie, Intimites(1897)
Felix Vallotton
Money, Intimites(1898)
Felix Vallotton
ヴァロットンの版画シリーズ「アンティミテ」より、「嘘」と「お金」。
かたまりのような黒と白で、大胆に描かれた男女の姿。
「お金」に関しては画面の半分以上を黒面が占めており、
その大胆さに驚かされます。
秘めやかな男女の関係性を覗き見たような気持ちになりますが
こうしたヴァロットンの作風を意図してのことなのか、
展覧会場にも「覗き見る」ような仕掛けが施されていました。
作品ではなく、鑑賞者を覗き見るような。
見知らぬ人が真剣に絵画に見入る表情を横から見るのは、
なかなか面白い体験でした。
三菱一号館はヴァロットンの版画を187点も収蔵しているそうで、
展覧会ではこのうち60点あまりが公開されています。
上にあげた「アンティミテ」のほか、
静けさのなかから音楽が生まれてきそうな「楽器」、
パリに暮らす人々を風刺的に描いた「息づく街パリ」、
戦争の惨劇を描いた「これが戦争だ」などなど。
なんとなく懐かしい気持ちがしたのは、
ヴァロットンが浮世絵の影響を受けていること、
そして版画の人物描写がどこか手塚治虫に似ているせいでしょうか。
今後の別の展覧会でもヴァロットンの版画は少しずつ展示されていくと思いますが、
彼の油彩とあわせて展示されている今の機会に、
ぜひ鑑賞しておくことをおすすめします。
今日も明日もがんばろう。
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