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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

立原道造「二匹の魚」

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日曜から一泊二日で軽井沢に行ってまいりました。
代休をとって、月曜はお休みにさせていただいて。
あっちこっちまわってきたので後でまとめて書きたいと思いますが、
今回はアートではなく文学を巡る旅になりました。
一番の目的は昭和初期の詩人、立原道造です。


立原道造「二匹の魚」



軽井沢から少し離れたところにタリアセンという
塩沢湖を中心とした観光地があり、
その一角の軽井沢高原文庫で立原道造展が開かれています。
日本橋橘町に生まれ、堀辰雄や室生犀星と交流し
毎夏を軽井沢で過ごしたことにちなんで、
彼が残した文学作品やパステル画、葉書、書簡、
さらには設計図や建築模型(道造は元々、優秀な建築家だった)などを展示。
上にあげた作品もそのひとつです。
「2匹の魚」という幻想的で優しい一枚。
2匹はきっと、つがいなんでしょうね。
仲良く肩を並べて、きらきらと輝く水底を泳ぐ。
中学時代、神経衰弱の療養中に描いた作品だそうですが、
後の詩人としての資質がこの色使いや雰囲気にあらわれているような気がします。



空と牧場のあひだから ひとつの雲が湧きおこり
小川の水面に かげをおとす
水の底には ひとつの魚が
身をくねらせて 日に光る

それはあの日の夏のこと!
いつの日にか もう返らない夢のひととき
黙つた僕らは 足に藻草をからませて
ふたつの影を ずるさうにながれにまかせ揺らせてゐた

……小川の水のせせらぎは
けふもあの日とかはらずに
風にさやさや ささやいてゐる

あの日のをとめのほほゑみは
なぜだか 僕は知らないけれど
しかし かたくつめたく 横顔ばかり

(立原道造「夏花の歌 その一」)





軽井沢高原文庫の「立原道造と軽井沢展」は7月14日まで。
作品点数はさほど多くありませんが、
葉書や書簡の一文字一文字がなんとも味わい深く、
とても読ませる文章を書く人ですので
気がつけばガラスケースに顔を近づけて見入ってしまい、
予定以上に長居してしまいました。
日帰りでも行けるので、期間中にもう1回行きたいなぁ、なんて…。
軽井沢タリアセンには、このほか堀辰雄の山荘や有島武郎の別荘、
ヴォーリズ設計の山荘「睡鳩荘」、
イングリッシュローズ・ガーデンなど見どころがたっぷり。
堀辰雄作品の挿絵を手がけた深沢紅子の美術館や
A・レーモンドの「夏の家」(ペイネ美術館)などもあり、
とてもとても回りきれませんでした。
次回の楽しみにとっておきたいと思います。


睡鳩荘
ヴォーリズ設計の睡鳩荘。美しき佇まい。



今日も明日もがんばろう。
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