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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ブグロー「ダンテとウェルギリウス」

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ネイマールとスアレスの絵だ!
なんてことで、W杯の衝撃シーンを彷彿させると話題になった一枚。
ウィリアム・ブグロー「ダンテとウェルギリウス」という作品です。


ブグロー「ダンテとウェルギリウス」
Dante And Virgil(1850)
William-Adolphe Bouguereau




国立新美術館の「オルセー美術館展」では、
「印象派の誕生」ということでアカデミズムの作品も取り上げています。
ブグローもまた、アカデミズムの大家なんですが
こんな作品も描いてたのか……! と、そのことのほうが衝撃的で。
よく知られた美しい女性や天使、少女の絵とは似ても似つかないですもんねぇ。


本作は、ブグロー25歳のときの作品(これもまた驚き)。
コンクールに2回続けて落選していた彼は、
審査員の心はつかめなくとも、なんとか公衆の関心をひきつけたいと
残忍で強烈な題材を選んだようです。
彼が描いたのは、ダンテの「神曲」の一場面。
古代ギリシャの詩人ウェルギリウスに導かれて地獄を訪れたダンテが、
「嘘つきと借金作りの潜む第八の谷」で争う男達と遭遇する場面です。
腰にひざをねじ込み、喉元に食らいつく男。
脇腹に食い込む左手もまたおぞましく、
後ろにはすでに命を落としているのか、横たわる別の男も。
背景には無数の男女が絡まり合い、赤く燃える空を悪魔が飛翔する。
見るも無惨な光景に、案内人のウェルギリウスでさえ口元を覆ってしまいます。
ダンテもまた、表情に恐怖を浮かべてウェルギリウスに身を寄せて……。


本作は強烈なインパクトもさることながら、
人体解剖学の研究からなる肉体表現や
ドラマチックな構図とそれを強調する明暗、衣服の襞など巧みな表現によって
3度目の正直でローマ賞に選ばれ、
ここからブグローは大画家への道を歩むことになります。
失意を乗り越えて、地獄の底から這い上がったということですね。


「オルセー美術館展」では、ブグローのほかにも
ジェロームやカバネルなどアカデミズムの大家の作品が多く展示されています。
「ダンテとウェルギリウス」とはあまりに対照的な、
カバネルの「ヴィーナスの誕生」も素晴らしかった!
むしろ彼らの作品がすごすぎて、印象派の作品群が少しかすんでしまったくらいです。
印象派の台頭によって行き場を失ってしまった彼らの作品も、
時代背景というものを枠外においてしまえば
やはりフランス芸術の粋だけあって、鮮烈な輝きを放つわけですね。


ヴィーナスの誕生
カバネル「ヴィーナスの誕生」。これもすばらしかった!




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