奥村土牛「鳴門」
恵比寿の山種美術館は
駅から少し歩かなければいけないのが難ですが、
歩いたぶんだけ素敵な作品が見られるのはご承知のとおり。
現在は「水の音 —広重から千住博まで—」という
これまた涼しげなタイトルの展覧会をやっております。
額に浮いた汗がさーっとひいていく、美しき水の世界。
Maelstroms at Naruto(1959)
Okumura Togyu
会場でまず眼に飛び込んでくるのが、
山種コレクションを代表する
奥村土牛の「鳴門」という作品です。
群青、白緑、胡粉をていねいに塗り重ね、
海の深さと渦の激しさを表現した傑作。
遠景には金色の島が浮かぶだけの、簡潔な構図も見どころです。
タイトルの通り徳島・阿波の鳴門を描いたもので、
渦のそばで激しく揺れる汽船で、夫人に後ろから帯をつかんでもらって
身を乗り出すようにして写生を続けたのだとか。
画家の執念ここにあり、体を張っただけに
その臨場感は物の見事に表現されています。
展覧会場には、こうした水にまつわる作品が
「川」「海」「滝」「水面」「雨」といったテーマに分けて展示されています。
歌川広重や川合玉堂の雨、奥田元宋の悠々たる清流、
橋本関雪の壮大な「生々流転」、千住博の滝などなど……。
個人的に千住博の作品はピンとこないので、
かわりに玉堂や山元春挙の作品を増やしてくれたら良かったなーなんて思いつつ
全体的にはさすが山種のコレクションを堪能したのでありました。
会期は9月15日まで、途中で一部展示替えがあります。
鑑賞後は、恒例のお茶菓子も。
この季節は冷たい抹茶をいただけるので是非。
今日も明日もがんばろう。
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