鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」
空からおちてくる美少女というと
「天空の城ラピュタ」のシータなんでしょうけど、
今から250年も前に描かれたこの作品もすごいのです。
見よ、この躍動感!
鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」。
傘を頼りにえいやっと、
約13mの高台から飛び降りた美女の勇姿です。
異色中の異色、奇想そのものではございませんか。
春信お得意の少女らしさ・あどけなさを残しつつも、
恋よ叶えと意を決し、
危険と引き換えに大人の階段を上ろうとする
健気なまでの勇ましさ。
風をはらんではためく着物や
身を守るべく丸めた背中、すそからのぞく足先、
そして何より、この毅然とした表情!
恋する女は強いのです。
これぞ Fall in Love ではありませんか。
「清水の舞台から飛び降りる」ということわざがありますが、
江戸時代には実際に飛び降りる人が多かったそうです。
無事に生き延びれば願いが叶うと信じられていたのだとか。
そして意外にも生存率は高く、8〜9割は怪我を負いつつも無事だったといいます。
さて、彼女はこのあとどうなることか……。
画面右下で花をみせる桜の木々が、
若い命を救うことを願うばかりです。
ちなみに浮世絵の美人画では鈴木春信の作品が特に好きで、
華奢な手足に可憐な(時に行儀が悪い)しぐさは
「おきゃん」とか「おしゃま」とか
現代ではあまり使わなくなった女性表現がぴったりな気がします。
そして表情もまた可愛らしくて。
本作は、そんな春信画の魅力の一端がみごとなまでに凝縮された作品だと思います。
今日も明日もがんばろう。
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