映画「大いなる沈黙へ」
映画「大いなる沈黙へ」を見てきました。
フランスで最も厳格であるという、
アルプス山脈のグランド・シャルトルーズ修道院の生活に迫ったドキュメンタリー。
そこに描かれていたのは、ただただ美しい光と静けさでした。
監督のフィリップ・グレーニングが修道院に撮影を申し込んだのは1984年。
許可が下りたのはそれから16年後、
しかもBGMやナレーションをつけず、
撮影にあたっては照明を使わず、
監督一人で撮影しなければならないという条件付き。
そのため映像はところどころ粗いのですが、
それがかえって絵画のような表情となり強く印象に残るのです。
自然光のみで映し出された修道士達の営みは
たとえば窓辺から差し込む光はフェルメールのように、
薄暗い回廊の奥にともる灯りはレンブラントのように、
荘厳な静けさと祈りを伴っていました。
まるでフェルメールのミルクメイド。
神につかえ、信仰に生きる人々の暮らしは
きわめて質素で穏やかで、その表情は歓びに満ちたものでした。
季節はめぐり、月日は重なり、けれど修道士たちの営みは変わることなく
あらゆるものから隔絶された真の静謐がそこにあります。
特にストーリーがあるわけでも、解説があるわけでもない。
特別なドラマも、物語の起伏もない。
ただありのままの暮らしを描いたにもかかわらず、
名状しがたい感動と戦きと、深い思索をもたらしてくれる。
2時間49分という長さを感じさせない、心洗われるひとときでした。
少し前まで神保町の岩波ホールで上映していたものの、
連日満員と聞いて機会をうかがっていた作品。
新宿のシネマカリテでようやく見れたんですが、
こちらはいくつか空席が見られました。
日々の喧噪を忘れて癒されたい人や、
仕事や私生活での悩みを抱えている人に
ぜひ見ていただきたい作品です。
今日も明日もがんばろう。
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