鏑木清方「朝夕安居」
前回、葛飾応為の美人画の話をしましたが
こうした浮世絵師の流れを汲み、明治〜昭和にかけて
美人画の名手として活躍したのが鏑木清方です。
彼が理想とした「江戸の風情」をテーマとした展覧会が
千葉市美術館で開かれています。
こちらは晩年の代表作「朝夕安居」(一部)。
「そこにとりあげたのは明治二十年頃の世の姿で、
場所は東京の下町、海に近い京橋区築地あたりの朝に始まって
八丁堀界隈の夜までの風物詩なのである」とのこと。
明治二十年頃といえば、このとき清方は10歳になるころ。
少年の日の記憶に残る、まだ江戸の情緒が息づく明治の暮らしが
丁寧に、時にユーモラスに描かれた傑作です。
清方といえば美人画のイメージが強くて
ぼくもそれを期待して見に行ったのですが
いざ彼の画業を追いかけてみて、
このような作品の素晴らしさにあらためて気付かされる思いでした。
齢70にして振り返る少年時代のみずみずしさに、驚かされるばかりです。
手に取って眺めることのできる作品として、
清方は「朝夕安居」のような作品を「卓上芸術」と称していたそうです。
肩の力を抜いて、親しく眺めることのできる作品。
そこにこそ、画家にとっての安らぎがあったのかもしれません。
千葉市美術館の「鏑木清方と江戸の風情」は10月19日まで。
美人画も卓上芸術も、すばらしい作品が揃い踏みです。
近代日本画の大家が夢見た江戸の情緒に、ぜひ浸ってみてください。
今日も明日もがんばろう。
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