堂本尚郎「絵画」
なぜだか気持ちが落ち着く作品。
堂本尚郎の「絵画」という水彩画です。
Painting(1957)
Domoto Hisao
水に溶け出したインクのような、不確かな揺らぎ。
重ねられた黒と赤の平面も、頼りなくぼやけて見えます。
ただそれだけのことなのに。
描かれているのはそれだけなのに、足が止まってしまった。
連想したのはなぜかイヴ・タンギーの作品群であり、
万年筆のペン先の洗浄の場面でした。
どちらも自分にとって心地がよく、いとおしいものたちです。
場所はブリヂストン美術館。
ウィレム・デ・クーニングの展覧会をやっていたんですが、
あまり好きではない方向性の抽象画に少し疲れていたところ、
所蔵作品のコーナーでこの「絵画」が展示されていたのです。
堂本尚郎とザオ・ウーキー、
2013年に画業の幕をおろした
2人の画家の作品を集めた部屋で。
海の静けさをたたえたザオ・ウーキーの「07.06.85」と
堂本尚郎の「絵画」はとても相性がよく感じられて、
水底にひとりたたずんでいるような気分でした。
07.06.85(1985)
Zao Wou-Ki
こういう素晴らしい出会いこそ、
美術鑑賞の歓びであると思います。
今日も明日もがんばろう。
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