ベックリン「聖なる森」
先日、ベックリン展のカタログを古本屋で手に入れました。
1987年に国立西洋美術館で開催されたもので、
タイトルは「バーゼル美術館所蔵作品によるアルノルト・ベックリーン展」。
「死の島」「ケンタウロスの闘い」「キリストの死を嘆くマグダラのマリア」
「憩う牧神パーンのいる森の風景」「戯れる人魚たち」など、
思わずよだれのたれそうなベックリン作品がずらり。
その中でも、特に印象的だったのが「聖なる森」という作品でした。
Der heilige Hain(1882)
Arnold Böcklin
火の燃える祭壇と、その前で膝をつき、祈りを捧げる3人の祭司。
道の向こうからも祭司たちが列をなしてこちらに向かってきます。
右手の森の隙間からは黄金色に輝く円柱が姿をのぞかせており、
祭司たちは神殿からやって来たことが伺えます。
季節は秋でしょうか、黄色い落ち葉が樹の根元を覆い、
どことなく寂しく、そして敬虔な気持ちにさせられます。
さて、この絵で注目したいのが、祭司の姿。
頭部までを覆う白装束によって個性は排除され、
それゆえに彼らの祈りという行為そのものが意味を増します。
白装束、祈り、そして作品の持つ神秘的な雰囲気……。
どことなく、「死の島」に相通じるものを感じませんか?
Die Toteninsel(1880)
Arnold Böcklin
「死の島」が最初に描かれたのは1880年(バーゼル美術館所蔵)。
そしてこの「聖なる森」は、その2年後の1882年に描かれています。
以下、カタログから抜粋。
普遍的な「静けさ」といったものが、
まさに「死の島」と「聖なる森」という
2つの作品に凝縮されているのである。
一方は残照を受けつつ夜の領域へ入ってゆく「静けさ」、
他方は、暗い森から歩み出て祈りを捧げる清澄な「静けさ」。
青黒い空と穏やかに霞む青空。
手前から画面中央の閉じ込められた空間への動きと、
中央の閉じた空間から手前の開けた部分への動きなど、
この2点の作品は、さまざまな点において対照的な要素を示しつつ、
厳かな静けさを軸として、対を成しているのである。
この2つの作品が同時に来日していただなんて……。
なんとも贅沢な話です。
またベックリン展やってくれないかなぁ。
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