東山魁夷「郷愁」
「郷愁」という言葉は、
どこか寂しさや哀しさを帯びています。
「愁う」は「憂う」ですもんね。
遠い故郷を思って涙したり、
変わりゆく自然や町並を見て心をいためたり。
大切な場所だからこそ、
いつかは失われることが分かっているからこそ、
なおさらそう思うのでしょう。
Nostalgia(1948)
Higashiyama Kaii
東山魁夷「郷愁」。
魁夷が好んだ青を基調とした、日本の原風景です。
小川が流れ、寄り添うように土手道が続き、その先には山々がそびえている。
ただそれだけの風景なのに、いろんな思いが去来します。
この絵はきっと鏡であって、見る人ごとにいろんな思いを抱くのだと思います。
この「郷愁」という作品は、
日本橋三越の「東山魁夷 わが愛しのコレクション」で展示されていました。
画家が描いた美しい風景の数々と、その審美眼で集められた美術品、
創作の源となる下絵やスケッチ、画材などで構成されており、
前にご紹介した「川端康成と東山魁夷」の、
東山魁夷のほうをクローズアップしたような内容。
よって山種美術館の魁夷展との住み分けもしっかりなされており、
ぜひセットで見ておきたい展覧会といえます。
会期は1月19日(月)まで。
それでは最後に、東山魁夷の言葉を。
私は人間的な感動が基底に無くて、
風景を美しいと見ることは有り得ないと信じている。
風景はいわば人間の祈りである。
心の鐘である。
今日も明日もがんばろう。