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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

月岡芳年「月百姿」その1

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また間があいてしまいましたが、
先週行った町田市立国際版画美術館の月岡芳年展のことを。
晩年の傑作であり代表作の「月百姿」と、
遺作である「新形三十六怪撰」を前期・後期に分けてまとめて展示、
しかも無料! という非常に太っ腹な展覧会なのです。
「月百姿」はまとめて見る機会がこれまでなかったので、
まずは前期で50点、思う存分堪能してまいりました。


月岡芳年「月百姿 — 稲葉山の月」
月百姿 No.007「稲葉山の月」


「月百姿」は、月にまつわる和漢の物語や伝承、和歌、謡曲などを
題材とした百枚揃いの浮世絵。
日本の歴史と文化がここに凝縮されているわけで、
観る人が歳と知識を重ねれば重ねるほど、
その真髄に触れることができるのだと思います。
たとえば↑の「稲葉山の月」は、
豊臣秀吉の出世戦ともいえる稲葉山城の戦いの一場面。
崖から敵城に潜入するところで、満月を下に置くことで
崖の険しさ高さが強調されて緊張感がいや増します。
逆にいえば、後に遥かな高みにのぼることになる秀吉を連想させるわけですね。



月岡芳年「月百姿 — 名月や畳の上に松の影」
月百姿 No.005「名月や畳の上に松の影」

また、百枚すべてに月がしっかり描かれているわけではなくて、
照らし出された影を描くことで月の存在を思わせるなんて作品も。
「名月や畳の上に松の影」という、
松尾芭蕉の弟子の宝井其角の俳句にちなんだ作品です。
後ろには琳派風の紅葉と流水が描かれていますね。



月岡芳年「月百姿 — 神事の残月」
月百姿 No.032「神事の残月」

さらに、月だからといって夜とも限りません。
「神事の残月」では、日枝神社の山王祭の神輿をテーマに、
青空にうかぶ銀色の月が描かれています。
下から見上げたこのアングルもすばらしい。



月岡芳年「月百姿 — 嫦娥奔月」
月百姿 No.003「嫦娥奔月」

こちらは画面いっぱいを月が占める「嫦娥奔月」。
こんな感じで一枚一枚、テーマだけでなく構図にも非常なこだわりがあって
何度も何度もうならされてしまうのです。むむむ、お主やりおるな、と。
前期展示は今日が最終日で、2月3日からは後期展示が始まります。
孫悟空など「月百姿といえばこれ!」という作品は後期のほうが多いかもです。
また町田まで足を運ばなければ……!!





今日も明日もがんばろう。
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芳年月百姿芳年月百姿
(2010/10)
岩切 友里子、大蘇 芳年 他

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