オディロン・ルドン「目を閉じて」(オルセー美術館展その5)
オディロン・ルドン。
彼ほど劇的な変貌を遂げた画家もいないんじゃないでしょうか。
オルセー美術館展で展示された彼の代表作「目を閉じて」は、
1890年発表、ルドンが50歳のときの作品。
水平線の向こうに女性の胸部が描かれる、なんとも幻想的な一枚です。
Les yeux clos(1890)
Odilon Redon
本作を発表するまで、ルドンは「モノクロームのパステル」と称して
木炭とリトグラフによる、奇怪な作品を多数発表していました。
色彩のない世界は、言い換えれば光なき世界。
得体の知れない怪物が蠢く、闇の世界。
「目を閉じて」と同じく「目」をテーマにした「眼=気球」を見てみれば、
かつてルドンが浸っていた異常な世界を肌で感じられるはず。
さて、もう一度「目を閉じて」へ戻りましょう。
本作は、ルドンにとって2人目の男の子が生まれた翌年に制作されたもの。
その3年前には長男が亡くなっており、
新たな生命の誕生が、ルドンの作風に変化を与えたことは想像にかたくありません。
彼が得た幸福感は「目を閉じて」の恍惚とした表情にあらわれています。
齢50歳にして、モノクロの奇怪な世界から色彩あふれる柔らかな作風へ。
あらためて、芸術家という存在のすごさに気づかされます。
オルセー美術館展のサイトはこちら。
ルドンの作品は「目を閉じて」のほか、
「キャリバンの眠り」の計2点が展示されています。
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