ユトリロとヴァラドン 母と子の物語
スュザンヌ・ヴァラドンとモーリス・ユトリロ。
フランス美術史に名を残す母子の展覧会が、
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開かれています。
20世紀初めのモンマルトルの街並を描いたユトリロに関しては、
美術ファンならよく知った名前だと思います。
ですがヴァラドンとなるとどうでしょう。
どちらかといえばルノワールやロートレックの
モデルを務めた女性としてのほうが有名かもしれません。
そしてパリに多くの浮き名を流し、ユトリロの親友と恋に落ち――
ユトリロを苦しめた母親として。
ユトリロの作品といえばやはり初期の「白の時代」で、
寒々しく色褪せたパリの街並が印象的です。
触れたら壊れてしまいそうな白壁の質感、暗い空、
そしてこちらを向いているのか、背を向けているのか分からない小さな人影。
求めているのか、拒んでいるのか――。
やがて鮮やかな色彩が画面を覆うようになってからも、
その孤独感や寂寥感は作品に通底しています。
モーリス・ユトリロ「コルト通り、モンマルトル」(1916-18)
一方、ヴァラドンの作品を見てみると
色彩も線描も力強くたくましく、
そして恋の多さを物語るように、その作風も変化に富んでいます。
ユトリロが内省的な詩情なら、ヴァラドンは奔放と歓喜といったような。
2人のエピソードを知る人なら、
作品を見比べてユトリロに感情移入する人のほうが多いかもしれません。
でも、展覧会場には幼いころのユトリロを描いたデッサンや
どこか寂しげな人物画もあるんですよね。
ヴァラドンも母としてユトリロを思い、
苦しむ部分があったのかな、などと感じずにはいられませんでした。
スュザンヌ・ヴァラドン「窓辺のジュルメーヌ・ユッテル」(1926)
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館の
「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」は6月28日まで。
ヴァラドンの作品をまとめて見られる機会はなかなかないので、
ユトリロファンならぜひ足を運ぶべき展覧会だと思います。
今日も明日もがんばろう。
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