レオン・ド・スメット「室内あるいは恋人たち」
もう1枚、レオン・ド・スメットの作品を。
どれにしようか迷ったけど、やっぱりこれ。
「室内あるいは恋人たち」です。
美術展「フランダースの光」より。
Interior or The Lovers(1911)
Leon De Smet
点描技法を用いながら、絵の舞台となるのは
ブルジョワジーな室内風景。
天井が高く、広い室内の片隅、
乳白色の室内で右下だけが暗く影を帯びていて、
そのなかに隠れるかのように、ソファに座り抱擁する男女の姿……。
2人とも真っ黒な衣装を身にまとい、
罪なる果実を分かち合っているかのような。
壁面に描かれた、2つの絵画に注目してみましょう。
どちらもレオン・ド・スメット自身の作品で、
抱き合う男女の頭上に飾られた絵は「鏡の前の女性」。
こちらは対照的に真っ白な衣装を着た女性が、
物憂げな表情で鏡を見つめています。
テーブルの上の花も、形がよく似ていますね。
Woman at The Mirror
Leon De Smet
そして画面左に描かれた「華美な衣装」という作品。
こちらでは今まさに衣服を脱ぎ捨て、
生まれたままの姿で窓辺にたたずむ女性の後ろ姿が。
これもまた、意味深な作品です。
女性の頭部のちょうど左に架けられた絵画、
そしてマントルピースとその上の置物。
「室内あるいは恋人たち」の室内風景と共通していますね。
De opschik(1910)
Leon De Smet
2つの画中画で描かれた女性と、ソファで男性に抱かれる女性。
その姿は三者三様ですが、
個人的には女性の心理の変遷を表しているように感じました。
右側の画中画「鏡の前の女性」では、
男性の来訪を不安な面持ちで待ちわびる女性の姿。
白い衣装は、まだ逢瀬の前ゆえ汚れなき体だからなのか。
そして現在形の、男性と抱き合う女性。
想い人と逢えた喜びは、一方で女性の衣服を黒く変えています。
道ならぬ恋に恐れおののくように。
最後に、画面左の「華美な衣装」では、
ソファのあった場所に一人たたずむ女性。
男性が去ったあとの孤独感が、あらわな背中に漂っています。
女性は一人寂しく、この広い館で暮らしているのかもしれません。
そして男性はこの女性のもとに通う愛人なのでしょうか。
ちなみに画面中央のマントルピースの右上に置かれた彫像は、
ジョルジュ・ミンヌの「聖遺物箱を担ぐ少年」。
聖人の遺骨や遺物を収めた箱を肩に担ぎ、
その重みに絶えかねて膝をつく少年の姿。
抱き合う男女に背を向けるように配置されており、
これもまた、許されぬ恋を連想させます。
……考え過ぎでしょうか?
「フランダースの光 ~ベルギーの美しき村を描いて~」の
公式サイトはこちら。
開期は10月24日(日)までです。
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