速水御舟「洛北修学院村」
海の底の理想郷を
沖縄ではニライカナイというそうです。
きっとこんな風景ではないでしょうか。
深くまた深く、青に満たされて。
Shugakuin Village in Rakuhoku(1918)
Hayami Gyoshu
速水御舟「洛北修学院村」。
描かれているのは海の底……ではなく、京都北部の修学院。
朝方の田園風景はまだ夜の気配をたたえていて、
静けさのなかで少しずつ、人の営みがはじまっていきます。
近づいてみれば手前の樹々がうごめいているようで、
遠ざかってみればしいんと黙しているようで、
幻想的な青の世界に潜る心地でした。
速水御舟は40年という短い人生のなかで
日本画の新たな表現に挑み
そのつど画風を変えていきましたが、
この「洛北修学院村」が描かれた大正7年ごろは
本人いわく「群青中毒にかかった」とのこと。
御舟自身、この青の世界に溺れてしまったのでしょう。
速水御舟の「洛北修学院村」は
世田谷美術館で開催中の
「速水御舟とその周辺 —大正期日本画の俊英たち」という展覧会で見ることができます。
タイトルの通り、御舟の作品を軸に
師にあたる松本楓湖や、兄弟子の今村紫紅、
そして良きライバルであった小茂田青樹など
周辺の画家の作品を集めた展覧会。
今回はじめて知った画家のなかでは、
黒田古郷の作品がつよく印象に残りました。
会期は7月5日までですが、「洛北修学院村」は5月末までの展示となります。
さて、話は変わって
今日覚えた和歌のことなど。
何事のおはしますをば知らねどもかたじけなさに涙こぼるる
西行法師が伊勢神宮を詣でたときに詠んだものだそうです。
ここにどんな神様がいらっしゃるのかは分かりませんが、
ただただ恐れ多くありがたく、涙があふれてしまう――。
寺社仏閣にかぎらず、絵画を見たり本を読んだり、音楽を聴いたり、
新しいものに触れたときにはこんな気持でいられたらと思います。
今日も明日もがんばろう。
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