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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

鴨居玲「1982年 私」

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真っ白なカンヴァスを前に、
口を半開きにし、弛緩した表情をこちらに向ける画家。
ここまで陰惨な自画像が他にあるでしょうか。
鴨居玲の「1982年 私」という作品です。


鴨居玲「1982年 私」
Myself, 1982(1982)
Kamoi Rei




まわりに描かれているのは、
道化や老婆、裸婦など鴨居が主題としてきた人物たち。
「もう描けない」と絶望しきった画家を責めるでもなく、
てんでばらばらを向いて地縛霊のようにそこに佇んでいます。
彼らが画家にとっての過去であるなら、
真っ白なキャンバスは未来であり希望につながるのか、
それともぽっかりとあいてしまった虚ろなのか……。


クールベの「画家のアトリエ」を模したともいわれる本作ですが、
個人的にはゴヤに近しいように感じました。
そこに美しさは感じられず、むしろおぞましいくらいなのに
なぜだか目をそらすことができない。
真っ白なカンヴァスが自分自身のような気さえしてきて、
「お前はどうなんだ」と問われているように感じられて。


どのくらい自分自身を見つめ続ければ、
このような境地に達することができるのか。
そこまで行きたいとは思わないけれど。
きっと帰ってこられなくなるだろうから。


鴨居玲の代表作「1982年 私」は、
東京ステーションギャラリーで7月20日まで開催の
「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」で展示されていました。
次回も彼の作品を紹介したいと思います。





今日も明日もがんばろう。
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