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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

鴨居玲「出を待つ(道化師)」

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道化の背後に広がる赤は、
虚無や悲哀や諦念とは縁遠く
鮮やかで凛々しくすらあります。
かといって熱情でもなく、ましてや歓喜でもない。
自分の人生を振り返っても思い当たらない、
引きずり込まれそうな、異質な赤でした。


鴨居玲「出を待つ(道化師)」
Waiting His Turn(1984)
Kamoi Rei




鴨居玲「出を待つ(道化師)」。
東京ステーションギャラリーの展覧会のポスターに使われている作品で、
東京駅の喧噪とは明らかにそぐわない佇まいに
かえって心をもっていかれてしまった人も多いのではないかと思います。
ふてぶてしく腹を突き出して、嘲笑するように口をあけて、
はて一体なにを考えているのだろう。
道化は鴨居が多く描いた題材だそうで、
自画像のような描かれ方をしているそうです。
道化を多く描いた画家というとルオーやピカソあたりを連想しますが
どうも鴨居の道化は、それらとは異質に感じられます。
憐れみや哀しみをこめて描くのではなく、
やはり自己と同質しているからでしょうか。


他に彼が描いたものといえば、老婆や酔っぱらい、傷痍軍人などなど……。
窓のない教会という画題もありました。
そして数限りない自画像。
画業を振り返るというよりは、
画家の内面を流れ歩くような展覧会だったように思います。
心の内壁は、窓がないから冷たく薄暗く湿気を帯びていて、
ひどくざらついていて……。
そして画家は、みずから出口をふさいでしまいます。
1985年、排ガスによる自殺。
睡眠薬とウイスキー、そして度重なる自殺未遂の果ての死だったそうです。


鴨居玲「教会」
鴨居が多く描いた「教会」。窓も扉もなく、やがて空へと浮かび上がっていく。


展覧会場には、鴨居が使っていたパレットがいくつか展示されていました。
絵の具が幾重にも塗り重ねられた、群体のような異様さ。
それは見るだに重々しくて、絵を描くことが苦行だったのではと思えるほどでした。
これまでにも色んな画家のパレットを見る機会がありましたが、
こんなふうに心がざわついたのは初めての経験でした。
そんなこんなで、鴨居玲の作品は好きにはなれそうもないけど
ことあるごとに思い返して、そのたび考えさせられることになりそうです。




今日も明日もがんばろう。
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