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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

サデレール「ある暗い日の黄昏時」

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以前紹介した、ヴァレリウス・ド・サデレール。
東京オペラシティアートギャラリーの
「アントワープ王立美術館コレクション展」で
はじめて彼の作品を見て、その後ずっと気になってたんですが……。
渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムの「フランダースの光」で、
なんと8点も出展されてました。
今回はそのうちの一つ、「ある暗い日の黄昏時」をご紹介します。


ある暗い日の黄昏時
End of a Gloomy Day(1907)
Valerius De Saedeleer




階層状にたなびく雲、
どことなくしおれて見える樹木、
そして誰一人いない世界。
やっぱり彼の作品には、人間も動物も描かれていません。
世界を染める夕焼けを、誰一人見ることはないのです。


人間のいない世界を描いた作品というと、
僕はフェルナン・クノップフの「見捨てられた町」を思い浮かべます。
タイトルがあらわす通り、時の流れから置いてけぼりにあったような
ブリュージュの町の光景。
独裁者スイッチを押したあとはこうなるんじゃないか、みたいな
根源的な恐怖心を駆り立てられる作品です。

見捨てられた街
Ville Abandonnée(1904)
Fernand Khnopff




一方、サデレールの作品は人がいない点こそ共通していますが、
どこか雰囲気が違うんですよね。
人が存在しないことが、むしろ素晴らしいことに感じられてしまう。
人間の営みがなければ、風景はこんなに美しいのか、と。
以前ダニー・ボイルの「28日後…」という映画を見たとき、
誰もいないロンドンの景色のなかで
風車が音もなく回っているシーンがあって、
その静寂と美しさに息を呑んだ記憶がありますが、
まさにそんなイメージです。
人がいないからこそ、美しい世界もあるわけです。


ちなみにサデレールは1902年に、
ブリュージュで開かれた15世紀のフランダース絵画展を見て
強く影響を受けたそうです。
以来、こうした深い精神性を感じさせる作品を描くようになったとか。
そしてそのわずか2年後、
クノップフはブリュージュを「見捨てられた町」として描きます。
2人の画家がブリュージュをきっかけに生み出した、永遠の静寂。
偶然なのか、それともブリュージュがそういう町だったのか、
なんとも気になるところです。



「フランダースの光 ~ベルギーの美しき村を描いて~」の
公式サイトはこちら
開期は10月24日(日)までです。



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