シャセリオー「エステルの化粧」とボードレール、アングル
少年時代、アングルに「絵のナポレオンになるだろう」と言わしめ、
アングルの新古典主義とドラクロワのロマン主義を融合させた
19世紀フランスの画家、テオドール・シャセリオー。
ギュスターヴ・モローを指導したことでも知られており、
モロー好きの自分としてはいつか紹介しなくちゃ、と思っていたわけです。
The Toilet of Esther(1841)
Théodore Chassériau
こちらは1841年発表の「エステルの化粧」。
この美しさを形容するのはかなり骨が折れる、というか自信がないので
先人の文章を借りることにしましょう。
澁澤龍彦はボードレールの「宝石」という詩を紹介するにあたって、
この「エステルの化粧」が最も詩の内容にふさわしいとしています。
ボードレール「宝石」
愛しき女は素肌にて、わが好みを知れるゆえ、
響き合う宝石のみぞ身につけぬ。
その華麗なる飾りのうつくしく、祭の日の
モオルの奴隷女のごとき驕れる風情を見せたり。
少年の半身に美女アンチオプの腰を結びつけし
新しき素描を見る思いのして、
彼女の胴は骨盤を際立たせたり。
褐色の頬に匂う紅白粉の麗しさよ!
う~むなるほど、おっしゃる通りです。
強いまなざし、唇をとがらせたような勝ち気な表情。
驕れる風情も、ただただ美しい。
ちなみに「エステルの化粧」の前年にあたる1840年、
シャセリオーが支持したドミニク・アングルは、こんな作品を発表しています。
Odaliske und Sklavin(1842)
Jean-Auguste-Dominique Ingres
室内と室外という違いはあるものの、
作品中に登場する人物の関係性や
透き通るような白い肌、なまめかしい姿態、
そして東方趣味など、多くの共通項を見出すことができます。
シャセリオーはこの作品を参考にしたのかもしれませんね。
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