山口晃「親鸞 全挿画集」
五木寛之の大河小説「親鸞」。
浄土真宗の祖である親鸞を主人公としたこの大作は
おかたい宗教ものと思いきや、波乱万丈のアクション活劇であり
全国40もの地方紙で連載されたことから、
毎朝楽しみにされていた方も多かったんじゃないかと思います。
そのストーリーに、毎回花を添えていたのが日本画家・山口晃でして
「悪ふざけもたいがいにしろ」とお叱りの声も聞こえてきそうな、
ユーモアたっぷりの挿画が話題になっておりました。
たとえば以下のような・・・笑。
個人的にはこういうの大好きなんですが、
超大御所の五木先生がよく許したもんだと思ったら・・・
実際にはやはりいろいろあったみたいです。
そのへんの裏事情もふくめて、
挿画1,052点(!)、そのすべてに画家自らのコメントがついた
圧巻の挿画集が出版されてます。
厚さ5㎝超、置く場所に困るやつです笑。
以下、引用。
お昼に確かカレーだったかを召し上がりながら、
先生は新作の構想などをお話下さった様に思うのですが、
どうにも思い出せません。
ただ一つ私が挿画を描くにあたっては
「思う存分やって下さい」と仰って下さったのをよく覚えています。
そうして其れぞれの場所に戻って連載が始まりましたが、
先生のお言葉通り拙い筆ながら力をふり絞って思う存分やっておりましたら、
割と早い段階で先生の指導を頂きました。
「ものには限度がある」「言葉を全て真に受けてはいけない」
其う云う当たり前の事に改めて気付かされる三十九歳の秋でした。
反省(?)しつつも悪戯心や茶目っ気が消えるわけもなく、
引き続き斬新奇天烈な山口ワールドが繰り広げられるわけです。
もちろん、へんてこなのばかり描いてるわけではないのでご安心を。
そりゃあ、平等院に襖絵を奉納するくらいの日本画の第一人者ですから。
先行き不透明な昨今、
自粛生活もなかなかストレスのたまるものです。
美術館に行けない日々が続くなかで
画集を拾い読みしたり美術関連の小説を読んだり、
ときにはこういったユーモアあふれる一冊で
くすっと笑うのもいいんじゃないかなと思います。
気軽に美術館に行ける日が、早く戻ってくることを願いながら。
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