ゴヤ「ボルドーのミルク売りの少女」
フランシスコ・デ・ゴヤ最晩年の傑作にして、
絶筆ともいわれる重要作品「ボルドーのミルク売りの少女」。
聴覚を失い、視力も衰えた末にゴヤがたどりついた、輝ける世界。
La lechera de Burdeos(1827)
Francisco de Goya
※画像をクリックすると、拡大してご覧いただけます。
スペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤ。
1786年に宮廷画家として絵筆をふるうも、
不治の病に犯され聴力を失い、
スペイン独立戦争などの動乱を経て
彼の作品は次第に濃い影を帯びていきます。
版画集「戦争の惨禍」、「マドリード、1808年5月3日」、
そしてマドリード郊外の聾者の家で描かれた
「我が子を喰らうサトゥルヌス」など14枚の壁画、通称「黒い絵」。
これら陰惨とも暗鬱とも取れる作品群を通過し、
1824年、スペインの自由主義者弾圧を避けるため、
ゴヤは78歳の高齢でフランスへ亡命します。
新天地となったフランス・ボルドーでゴヤが描いたのが、
「ボルドーのミルク売り娘」です。
ここでは、ゴヤの作品に常に漂っていた影や風刺は見られず、
ただただ静謐な、安息の表情を浮かべた女性が描かれています。
小首をかしげ物思う美しい少女。
青から黄色へと変化する朝の光が彼女を包み込み、
敬虔ともいえる厳かな雰囲気が漂っています。
五感のうち聴覚を既に失い、視覚をも失いつつある老人が
この絵を描いたとは……。
奇跡のような一枚だと思います。
ゴヤは同時期に「修道士」「修道女」という作品を描いており、
「ボルドーのミルク売りの少女」を含めた3枚が
事実上、彼の絶筆と言われています。
ただし「修道士」「修道女」は個人蔵のため、お目にかかる機会がないんですね。
「ボルドーのミルク売りの少女」はプラド美術館所蔵。
一連のゴヤ作品を見た後でこの絵の前に立ったら……感無量でしょうね。
さて、来年秋に国立西洋美術館で「ゴヤ展」を開催することが決まったそうです。
プラド美術館からゴヤの傑作72点が出展されるそうで、目玉は「着衣のマハ」。
プラド美術館といったら初期の代表作から「黒い絵」シリーズまで、
ゴヤの重要作品を網羅してますし
もちろん「ボルドーのミルク売りの少女」も。
「着衣のマハ」以外にどんな作品が来日するのか、
なんとも気になるところです。
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