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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ココシュカ「風の花嫁」

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前回に引き続き、オスカー・ココシュカの「風の花嫁」について。
この絵は現在バーゼル美術館に所蔵されてるんですが、
これまで一度も外に出たことがない、門外不出の作品なのだとか。
なぜでしょうか……?


風の花嫁
Bride of the Wind(1913)
Oskar Kokoschka




モデルを務めたアルマ・マーラーとココシュカは恋愛関係にあり、
その頂点で描かれた本作はもっと明るい色彩でした。
しかし2人の関係は悪化していき、
その不安からかココシュカは何度も絵の具を塗り重ねていきます。
このへんのエピソードは前回ご紹介した通りですが、結果どうなったか。


あまりの厚塗りゆえに、動かすと絵の具が剥落してしまうんですね。
ココシュカの苦悩と未練を封じ込めた絵は、
そこから一歩も動けなくなってしまった。
まるで自縛霊のようです。
不謹慎?
いいや、そんなことはないと思います。
アルマと別れたあとのココシュカの生き方を考えると、
こういうキーワードが思い浮かんでも仕方ないかと。


「風の花嫁」を完成させたあと、ココシュカは第一次大戦に従軍します。
失恋によって自暴自棄になったのか、
破壊的な衝動に身を任せたかったのか。
翌年、負傷してウィーンへ戻ったココシュカですが、
このときアルマは既に結婚していました。
そこでココシュカが取った行動は……。
彼はアルマにそっくりな人形をつくり、
仲睦まじい恋人同士のように、人形と行動を共にするようになるのです。
何かに取り憑かれたかのような、倒錯した世界。
彼の病んだ魂は、「風の花嫁」に乗り移って
思い出の地を離れることを拒んでいるのかもしれません。


ちなみに、ココシュカとの破局の後に
アルマが結婚した相手の名はワルター・グロピウス。
彼はル・コルビジェらと並んで近代建築の四大巨匠に数えられ、
バウハウスを設立した建築家です。
そしてもう一人、アルマが愛人に選んだのが作家のフランツ・ウェルフェル。
マーラー(音楽)、ココシュカ(絵画)、
グロピウス(建築)、ウェルフェル(文学)という
4人の男性と交際したことから、
アルマは「4大芸術の未亡人」とも呼ばれています。
この中でココシュカだけがアルマとの結婚には至っていないんですが、
アルマはこんなセリフを残しています。
「マーラーの音楽は好きになれず、グロピウスの建築は理解できず、
ウェルフェルの小説には興味もなかったけれど、ココシュカ……。
ああ、彼の絵にはいつも感動させられたわ」 

(参考:高橋容子氏「アルマ・マーラー」)



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Oskar Kokoschka: Early Portraits from Vienna and Berlin, 1909-1914Oskar Kokoschka: Early Portraits from Vienna and Berlin, 1909-1914
(2002/04/10)
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