マティス「イカロス」
青、黄色、黒、赤。
こんなにシンプルなのに、
イメージは果てしなく膨らんでいきます。
アンリ・マティス「イカロス」。
晩年の切り紙絵の作品をもとに発行した挿絵本「ジャズ」より。
Icarus(1947)
Henri Matisse
詩人ボードレールは、太陽を目指して飛ぼうとしたイカロスの動機を
「美に、あこがるる心ゆえ」とうたっています。
身を焼かれてもなお、高みを目指す。
それが芸術家というものなのかもしれません。
十二指腸癌によって体力的に油絵を描くことができなくなり、
70歳を過ぎて「切り紙絵」という新たな境地に達したマティスもまた、
美にあこがれたイカロスの一人だったのでしょう。
ボードレール「或るイカルスの嘆き」
かの娼婦らが、いやしき情夫も、
満ち足りて、朗らかなるに。
このわれや、雲追うわざに、
つかれたり。
天空の奥深く、かがやけるもの、
譬えんにものもなき、かの星々にやけただれ、
わが眼、見ずなりぬ、
太陽の思い出以外。
空しくもわれ試みき、
天空の心と果しを、さぐらんと。
火の如き、眼の光に、
今わが翼、くだけ散る。
美に、あこがるる心ゆえ、身の焼かるるよ、
やがて、わが墓たるべき、この淵に、
わが名あとうる、せめてもの
名誉さえ、与えられずて。
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