イヴ・タンギー「岩の窓のある宮殿」
国立新美術館の「シュルレアリスム展」に行ってきました。
今回の目的はイヴ・タンギー。
近代美術館の「聾者の耳」を見て以来惚れ込んでしまい、
今回の「シュルレアリスム展」で
新たな作品に出会えるのを楽しみにしていたわけです。
Le Palais aux rochers de fenêtres(1942)
Yves Tanguy
こちらはイヴ・タンギー「岩の窓のある宮殿」。
どれが岩? どれが窓? どれが宮殿?
そんなことは、考えてはいけません。感じるのです。
何かの部品とも破片とも取れる不定形な物体と、
その向こうに広がる不思議な空間。
たった2つの要素で作り上げられる異世界こそ、
タンギーの作品の魅力なんです。
ダリにせよマグリットにせよ、あるいはマッソンにせよ、
シュルレアリスムの画家の作品って
時にグロテスクで時にエロティックで、
時にムムムと考えさせられたり
時にけむに巻かれているような気持ちになったりで
見ていて何かしらの手応えや発見があるんですよね。
ところがそんな作品が並ぶなかで、
タンギーだけは違うんです。
何せアンドレ・ブルトンに
「最も純粋なシュルレアリスト」と言わしめた画家です。
その純粋さゆえに答えもヒントも見つからない精神世界、
だからこそ無心で見ていられるんです。
超然としていて、ほかの画家とは
一線を画していると思うんですよね。
そしてどこか内省的で、
静かな説得力があるんです。
今回、タンギーの作品は「岩の窓のある宮殿」と
「夏の四時に、希望…」が来日していました。
制作年代が大きく異なる2つの作品を比べてみるのも面白いかもしれません。
世界観は同じでも、タッチが大きく変わっていることに気づかされるはずです。
そしてせっかくだからもう1点見て行こうと、
近代美術館に移動して「聾者の耳」も見てきました。
こちらも小品ながら素晴らしい作品です。
「シュルレアリスム展」は、
さすが国立新美術館といった感じで
展示方法もシュルレアリスムの世界観をあらわしていて楽しめますし、
その全貌を知るという意味では、作品も充実していたと思います。
これまでほとんど貸し出されることがなかったという
ポンピドゥセンターの作品群が一挙来日するというだけでも、
足を運ぶ価値はあると思います。
ただ、有名どころのダリやマグリットを目的にすると
ちょっとガッカリさせられてしまうかも。
個人的にはタンギーの2作品と、
アンドレ・マッソンの変貌ぶり、
ジャコメッティの彫刻が見所だと感じました。
「シュルレアリスム展」は5月9日まで。
ホームページはこちらをご覧ください。
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