足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

川瀬巴水「荒川の月(赤羽)」 ~震災を経験した版画家のフルムーン~

0   0


昨日は19年ぶりに月が地球に最接近する、
スーパーフルムーンでした。
いつもよりも明るく、皓々と闇夜を照らす満月に
祈りを託した方も多いのではないでしょうか。


荒川の月
Moon over Arakawa(1929)
Kawase Hasui




こちらは川瀬巴水の「荒川の月(赤羽)」。
「東京二十景」というシリーズの1点で、
叙情的な荒川の岸辺と、雲間に冴える満月を描いた作品。
この明るさと存在感は、昨日のスーパーフルムーンそのものですね。


前回もご紹介した巴水ですが、
彼は月の表現に秀でた風景版画家でした。
海外での評価が高く、北斎や広重と並ぶ人気を博しているそうです。


岡田三郎助に洋画を学び、
鏑木清方に美人画を学ぶも、
行き詰まりを感じた彼が版画家に転向したのは35歳のとき。
当時衰退の一途にあった浮世絵版画の世界に新たな命を吹き込むべく、
版元の渡邊庄太郎とともに「新版画」の制作に取り組みます。
庄太郎は巴水にとってのよき理解者であり、
職人たちに対する彼の技術的要求があってこそ、
従来の浮世絵版画とは一線を画す、
リアルで精緻な新版画が生まれたといっても過言ではありません。
彼らは二人三脚で、次々に素晴らしい作品を生み出していったんですね。


そして――
1923年、関東大震災。
関東を襲った未曾有の大災害によって、
渡邊庄太郎の版画店も壊滅的な被害を受け、
川瀬巴水もまた、それまで描きためてきたスケッチの多くを失います。
失意に暮れながらも、それぞれ生活を立て直すためには
芸術的・技術的な作品ではなく、
「売れる」作品を量産する必要がありました。
そういった震災後の庄太郎の姿勢に背を向ける画家も多かったなか、
巴水はそれまでと変わらず、
友情と信頼のもとに制作を続けていきます。


「荒川の月(赤羽)」は、
関東大震災から6年後、1929年の作品です。
変わることなく夜空を照らす満月と、
浪立つことなく静かに流れる川面。
苦難を乗り越えた2人の関係性が、
象徴的に描かれているような気がします。


風評や差別感情に踊らされることなく、
お互いを信じ抜くことができるか。
僕たちもいま、試練の時を迎えています。
毅然とした心を持ち続けたいものです。



ぽちっとお願いします♪
人気ブログランキングへ  Twitterボタン


川瀬巴水木版画集川瀬巴水木版画集
(2009/05)
川瀬 巴水

商品詳細を見る


関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://suesue201.blog64.fc2.com/tb.php/262-164a55a3
該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。