足立区綾瀬美術館 annex

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モロー「出現」

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美術史上、もっとも有名な生首といえば。

諸説あるとは思いますが、やっぱり思い浮かぶのはサロメです。
サロメとは、新約聖書に登場する踊り子。
ヘロデ王の前で優雅な舞踏を披露した褒美として、
彼女が求めたのが「洗礼者ヨハネの首」でした。


このエピソードを連作として発表したのが、
昨日も紹介したギュスターヴ・モローです。
まずはこちらをご覧あれ。


出現
L'Apparition(1874-1876)
Gustave Moreau




発表は1874年頃、当時賛否両論を巻き起こした傑作「出現」です。
サロメは古来より、ティツィアーノやカラヴァッジョなど
多くの画家に描かれてきた主題ですが、
基本的にはサロメがヨハネの首を載せた盆を掲げるという構図。
でも「出現」では、見事に宙に浮いちゃってます。
そしてそれを指差すサロメ。
むむむ。
なんとも罰当たりとうか、傲岸不遜というか、
それでいて官能的で、妖艶なサロメがここに描かれています。
ヨハネの首が神秘的だからこそ、
サロメのすさまじさが引き立つというか。


オリエンタルな室内装飾や精緻な衣装もサロメの存在感を強調していますが、
そんななかで一人、何とも情けない表情なのが左奥に座るヘロデ王。
今にも死んじゃいそうなくらい、沈痛な表情です。
これまた一体何があったのか。


実はヘロデ王、ヨハネ残首に乗り気ではなかったんですね。
もともとヨハネが牢につながれていたのは、
ヘロデ王が弟の妻、ヘロディアをめとったことを非難したから。
でもヘロデ王は、そんなヨハネのことを聖人として認めていたので
実質は彼を保護し、喜んで言うことを聞いていたといいます。
優柔不断なんですね。


さて、このストーリーにはもうひとつ重要な人物がいます。
それがヘロデ王の妻であり、サロメの実母のヘロディアです。
彼女はヘロデ王と自分の関係を非難したヨハネのことを、
殺してやりたいくらい恨んでいたのです。
でも優柔不断なヘロデ王は、ヨハネを保護してしまう。
そこで彼女は・・・
運命の日。
サロメの舞踏をいたく気に入ったヘロデ王は、
「欲しい物は何でもわしに願い出よ。そうすればお前にやろう。お前がわしに願い出ることは、たとえそれがわしの王国の半分であっても、お前にやろうぞ」


こんなことを言ってしまうわけです。
ここで前述の、サロメの希望が伝えられるわけですが
実際にはこれ、サロメの希望ではないんです。
王の言葉に対し、彼女は母・ヘロディアの指示を仰ぐのです。
「私は何を願い出たらいいの?」
そしてヘロディアはここぞとばかりに言うのです。
「洗礼する者ヨハネの首を」。


なんとも恐ろしい話ですが、
こうして考えるとモローが造形したサロメにもなるほど納得です。
自分の意志というものがなく、
母が口にしたとんでもない希望をそのまま王に伝えてしまうその性格は
残酷とかいうよりも、むしろあどけなさに近いものを感じます。
自分の犯した過ちを理解できず、だからこそ妙に堂々としたサロメ。
そして見事にヘロディアの計略にはめられ、
沈痛な面持ちのヘロデ王。


モローはほかにも形を変えて、さまざまな角度からサロメを描いています。
古式にのっとって盆に載せたヨハネの首を捧げ持つ姿や、
王の前で踊っている姿、
あるいは今まさに、首を切られようとするヨハネとそこにたたずむサロメなど。
以下、ばばばっと紹介していきます。



サロメ
まずは裸婦像「サロメ」。どこか幼く、無垢な印象です。



ヘロデ王の前で踊るサロメ
続いて「ヘロデ王の前で踊るサロメ」。
官能ほとばしる、サロメの舞。ヘロデ王がいちころになってしまうのも分かる気が。



刺青のサロメ
「刺青のサロメ」。
刺青? 何とも不思議な作品です。



サロメの舞踏
「サロメの舞踏」。
舞踏シリーズではこの作品が一番好きです。
退廃的というか、今にも崩れ落ちそうな危うい美しさ。



牢獄のサロメ
「牢獄のサロメ」
サロメの足元にあるのは、ヨハネの首を載せる盆。
そして左遠景では、首を斬られる直前のヨハネの姿。
サロメの表情が・・・何とも恐ろしい。



大皿にのせたバプテスマのヨハネの頭を運ぶサロメ
「大皿にのせたバプテスマのヨハネの頭を運ぶサロメ」
こちらは「出現」に比べると素直というか、
サロメらしい構図。



庭園のサロメ
「庭園のサロメ」
同じく盆に載せた首を運ぶサロメ。
足元にはヨハネの死体。生首よりこっちの方が怖い。
左奥には、逃げ出す男の姿。ぎゃー。



ざっとこんな感じで、ほかにも紹介しきれないくらいたくさんあるんです。
そもそも、なんでモローはここまでサロメに魅かれたのか。
個人的には、どMなんじゃないかと踏んでますが
はてさていかに。
女性と生首といったら「ユーディト」も有名だけど、
こちらはうら若き女性が男性の首をゴリゴリ切り落とすという
背筋がぞっとしそうなストーリー。
これじゃあMの範疇を通し越しちゃってますもんねぇ。


次回は別の画家による「サロメ」を見てみましょう。
モローの「サロメ」も怖いけど、
個人的には史上ぶっちぎりで恐ろしいと思われる作品です。
お楽しみに。



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