イヴ・タンギー「夏の四時に、希望……」
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。
(宮沢賢治「やまなし」より)
A quatre heures d'été, l'espoir ...(1929)
Yves Tanguy
シュルレアリスムの画家イヴ・タンギーが描いたのは、
此の世のどこともつかぬ幻想風景。
「夏の四時に、希望……」、タイトルも謎めいています。
この絵をじっと見ていたら、
中央の黄色い物体が
なんだか翼を広げた鳥のように思えてきました。
この景色が水底だとするならば
右側では砂が水流に乗ってゆらゆらと立ち上り、
一方左側ではじわじわと、泥が浸食していくような。
中央から右上に向かう流れがあるということなのか、
黄色い鳥の翼(のようなもの)も、
右側が大きく開き、引っ張られているように見えてきます。
すると堆積した砂泥にも動きがあらわれてきて、
……で、結局何なんだ???
さて、水の底、主題がよく分からない物語といえば……
宮沢賢治の「やまなし」を思い出したわけです。
それでは以下、引用。
『クラムボンはわらったよ。』
『わらった。』
にわかにパッと明るくなり、
日光の黄金(きん)は夢のように水の中に降って来ました。
波から来る光の網が、底の白い磐(いわ)の上で
美しくゆらゆらのびたりちぢんだりしました。
泡や小さなごみからはまっすぐな影の棒が、
斜めに水の中に並んで立ちました。
魚がこんどはそこら中の黄金(きん)の光を
まるっきりくちゃくちゃにして
おまけに自分は鉄いろに変に底びかりして、
又上流(かみ)の方へのぼりました。
どうでしょう?
不思議なほど、世界観が似ている気がするのです。
そういえば、「やまなし」の前半は5月の物語なんですよね。
気が付けば、桜の季節も終わって5月かぁ。。。
ちなみに今日は、国立新美術館の「シュルレアリスム展」に行ってきました。
行くのは2回目、タダ券をいただいたのでここぞとばかりに。
会期が5月15日まで延長とのこと、
思ったよりも混んでなかったので、まだの方はぜひぜひ♪
ぽちっとお願いします♪
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