速水御舟「牡丹花(墨牡丹)」
気品漂う墨色の牡丹は、
この世にあらざる孤高の一輪。
速水御舟、晩年の傑作「牡丹花(墨牡丹)」です。
Black Peonies(1934)
Hayami Gyoshu
御舟がこの作品を描いたのは1934年。
翌年2月に病に倒れ、腸チフスと判明、翌月に息を引き取ります。
「牡丹花(墨牡丹)」を描いた時点ではまだ発病していないので、
まさか死の影を感じ取っていたはずはないだろうけど……
あまりにも凛々しい墨の花弁は、
どうしてもこの世ならぬものに見えてしまうんですよね。
墨の滲みが深まって行く闇のようで。。
ちなみに御舟は同じ年に「桔梗」という作品を制作しており、
こちらも同じように黒の花弁と緑の葉という取り合わせ。
一方、白い花弁に墨の葉、
花の中央に紅をのせた「芙蓉風花」もこの年の作品です。
これらもどこかに儚さが漂っています。
画集で御舟の作品を年代順に見て行くと、
表現の幅広さ、変貌の連続に驚かされます。
鏑木清方は御舟の人生を「研究の一生」と評していますが、
ひとつところに留まることをよしとせず
変化を求め続けた御舟だからこそ、この境地に到達し得たんでしょうね。
一枚一枚、花びらを重ねては引きちぎり、
気づけば大輪の花が咲いていた……
そこに寄り添う花はなく、かろうじてつぼみが顔をのぞかせるばかり。
墨色の花弁には、そんな孤高の気高さが表れているように思います。
現在、「牡丹花(墨牡丹)」は山種美術館「百花繚乱」で見ることができます。
四季折々の花々を描いた作品を約50点、
近代日本画を中心に展示する豪華な内容。
「春の花」「取り合わせの妙」「西洋原産の花」
「初夏から夏の花」「秋の草花、冬の彩り」「四季繚乱」といった分類で
目もくらむような花鳥図、草花図が並ぶわけですが、
山種美術館といえばグッズ売り場を挟んだ先にある小展示室。
今回は花の王・牡丹にちなんだ作品がここに展示されており、
ここで一際異彩を放つのが速水御舟の「牡丹花(墨牡丹)」なわけです。
会期は6月5日(日)まで、サイトはこちらをご覧ください。
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